胃痙攣(読み)イケイレン(英語表記)gastrospasm

デジタル大辞泉 「胃痙攣」の意味・読み・例文・類語

い‐けいれん〔ヰ‐〕【胃××攣】

上腹部が発作的に激しく痛む症状。実際に胃が痙攣するとは限らず、胆石症腎結石子宮外妊娠胃穿孔いせんこう虫垂炎・急性胃腸炎などでみられる。

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精選版 日本国語大辞典 「胃痙攣」の意味・読み・例文・類語

い‐けいれんヰ‥【胃痙攣】

  1. 〘 名詞 〙 上腹部におこる突発性のはげしい痛みのこと。単一の病名ではなく、急性胃炎胃潰瘍、幽門痙攣、回虫症、胆石症、膵臓炎、虫垂炎、腎結石などが原因でおこる。
    1. [初出の実例]「びくびくはねかへる様な胃痙攣に苦しみ乍ら」(出典:折口信夫日記‐大正四年(1915)月未詳一二日)

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改訂新版 世界大百科事典 「胃痙攣」の意味・わかりやすい解説

胃痙攣 (いけいれん)
gastrospasm

心窩部(しんかぶ)(みぞおち)に起こる疝痛(しぼるような強い痛み)は古くから胃痙攣と呼ばれてきた。胃痙攣は,このような症状に対する呼名であって,疾患名ではない。古くいわれた〈癪(しやく)〉もこれに当たる。原因として,急性胃炎,消化性潰瘍,胆石症,膵炎等々多くの疾患が挙げられる。したがって,胃痙攣の大部分は,実際には胃の痙攣を伴う痛みではない。消化性潰瘍による痛みは,通常食後2時間以上を経た空腹時に発生し,食事をとると痛みが軽減するのが特徴である。また季節的に症状が悪化,軽快する傾向がある。胆石症による痛みは,やや右寄りの上腹部に起こり,過食,油物摂取等で誘発される。しばしば発熱し,黄疸を伴うことも少なくない。急性膵炎による痛みは,ときに最も激しいもので,胆石,長年のアルコールの過飲などが誘因となることがある。一方,胃痙攣の中には実際に胃の強い痙攣性収縮によって痛みが起こるものがあり,鉛中毒(鉛疝痛)やニコチン中毒等の腹痛がそれに当たる。原因のいかんを問わず鎮痛には抗コリン剤が用いられるが,より強い痛みにはモルヒネなどの麻薬も必要となる。
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家庭医学館 「胃痙攣」の解説

いけいれん【胃けいれん Gastric Cramp】

[どんな病気か]
 胃壁筋層(いへききんそう)(平滑筋(へいかつきん))のけいれん、すなわち異常な緊張によって、発作性の激しい上腹部痛をおこす状態です。管腔臓器(かんくうぞうき)の1つである胃の内臓痛ですが、一般には胃がけいれんしているかのような激しい上腹部痛を総称していいます。
 胃炎(いえん)、胃潰瘍(いかいよう)、胃がんなどの胃疾患や、十二指腸潰瘍(「消化性潰瘍(胃潰瘍/十二指腸潰瘍)」)、胆石(たんせき)症(「胆石症」)、急性・慢性膵炎すいえん)(「急性膵炎」)などにともなって発症し、過度の精神的緊張や神経症によってもおこります。
 治療としては、まず、上腹部痛を抑えるため鎮痙薬(ちんけいやく)を使用します。自他覚症状や血液検査、X線検査、内視鏡検査などによって、原因疾患が診断、あるいは推察されるならば、それらに対する治療を加えます。また、精神安定剤を用いることもあります。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「胃痙攣」の意味・わかりやすい解説

胃けいれん
いけいれん

いわゆる胃けいれんとよばれるものは、心窩(しんか)部(上腹部、みぞおち)を中心とした激しい腹痛を総称したもので、しばしば悪心、嘔吐(おうと)を伴う。したがって、胃けいれんという疾患名はない。その痛みは、おもに胃、十二指腸、胆道、膵(すい)などの疾患によって生じたものが多く、痛みの部位とその性状からよばれたものである。このような痛みを呈する疾患としては、急性胃炎、胃潰瘍(かいよう)、十二指腸潰瘍、潰瘍の穿孔(せんこう)、胆石症、急性胆嚢(たんのう)炎、急性膵炎、急性虫垂炎(とくに初期)などがある。このうち、胆道疾患に基づくものがもっとも多いようである。いわゆる胃けいれんでは腹痛に対する対症療法を行うとともに、早急に前述のような疾患を鑑別する必要がある。

 なお、厳密には器質的疾患がなく、純機能的な胃の局所性れん縮をさし、噴門けいれん、幽門けいれんなどがあるが、この場合は、かならずしも痛みを伴わない。

[竹内 正・白鳥敬子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胃痙攣」の意味・わかりやすい解説

胃けいれん
いけいれん
gastrospasm

一般には,発作性の激しい上腹部痛をいうが,医学上は単に症状を表すだけのもので,特定の疾患を意味する用語ではない。臨床的には原因疾患をみつけることが重要である。多くは胃を包む筋肉の炎症 (胃周囲炎) が原因で,胆嚢炎や胆石症の症状の場合もあり,まれには十二指腸潰瘍の穿孔のこともある。胃は本来はじょうぶな臓器であるが,外部の影響などにきわめて鋭敏に反応するから,ストレス症状を起すことが多い。大部分は自然に痛みが消失するが,単純な鎮痛剤のほか,局所を暖めると,痛みをやわらげることができる。しつこい吐き気が続くときは,虫垂炎や十二指腸潰瘍に留意する必要がある。

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百科事典マイペディア 「胃痙攣」の意味・わかりやすい解説

胃痙攣【いけいれん】

胃のあたりの発作的な激痛の総称。胃そのものの痙攣は実際にはほとんど存在せず,普通は胆石症,急性胃炎,胃・十二指腸潰瘍(かいよう),急性腸炎,ヒステリー,薬物中毒,膵炎等による上腹部の発作的疼痛(とうつう)を意味する。過食後やアルコール過飲後に起こることが多い。治療は発作時には鎮痙(ちんけい)剤で痛みを止めるとともに,真の疾患を診断し,それに対して行う。

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栄養・生化学辞典 「胃痙攣」の解説

胃痙攣

 胃壁の筋肉層の緊張が異常に亢進した状態.

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