心窩部(しんかぶ)(みぞおち)に起こる疝痛(しぼるような強い痛み)は古くから胃痙攣と呼ばれてきた。胃痙攣は,このような症状に対する呼名であって,疾患名ではない。古くいわれた〈癪(しやく)〉もこれに当たる。原因として,急性胃炎,消化性潰瘍,胆石症,膵炎等々多くの疾患が挙げられる。したがって,胃痙攣の大部分は,実際には胃の痙攣を伴う痛みではない。消化性潰瘍による痛みは,通常食後2時間以上を経た空腹時に発生し,食事をとると痛みが軽減するのが特徴である。また季節的に症状が悪化,軽快する傾向がある。胆石症による痛みは,やや右寄りの上腹部に起こり,過食,油物摂取等で誘発される。しばしば発熱し,黄疸を伴うことも少なくない。急性膵炎による痛みは,ときに最も激しいもので,胆石,長年のアルコールの過飲などが誘因となることがある。一方,胃痙攣の中には実際に胃の強い痙攣性収縮によって痛みが起こるものがあり,鉛中毒(鉛疝痛)やニコチン中毒等の腹痛がそれに当たる。原因のいかんを問わず鎮痛には抗コリン剤が用いられるが,より強い痛みにはモルヒネなどの麻薬も必要となる。
執筆者:金子 栄蔵
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
いわゆる胃けいれんとよばれるものは、心窩(しんか)部(上腹部、みぞおち)を中心とした激しい腹痛を総称したもので、しばしば悪心、嘔吐(おうと)を伴う。したがって、胃けいれんという疾患名はない。その痛みは、おもに胃、十二指腸、胆道、膵(すい)などの疾患によって生じたものが多く、痛みの部位とその性状からよばれたものである。このような痛みを呈する疾患としては、急性胃炎、胃潰瘍(かいよう)、十二指腸潰瘍、潰瘍の穿孔(せんこう)、胆石症、急性胆嚢(たんのう)炎、急性膵炎、急性虫垂炎(とくに初期)などがある。このうち、胆道疾患に基づくものがもっとも多いようである。いわゆる胃けいれんでは腹痛に対する対症療法を行うとともに、早急に前述のような疾患を鑑別する必要がある。
なお、厳密には器質的疾患がなく、純機能的な胃の局所性れん縮をさし、噴門けいれん、幽門けいれんなどがあるが、この場合は、かならずしも痛みを伴わない。
[竹内 正・白鳥敬子]
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