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自然債務 しぜんさいむNatural obligation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

自然債務
しぜんさいむ
Natural obligation

債務者が任意に弁済すれば有効である (不当利得にならない) が,債権者が裁判所に訴えることのできない債務をいう。たとえば,裁判上行使しないことが契約された債務などがこれにあたる。近代法では,原則としてすべての債務について訴権があるから,自然債務ははたして本当の債務といえるかどうかが争われているが,一般にはこれも債務といってさしつかえないとされている。なお,訴求可能ではあるが強制執行を求めることができない債務 (例:強制執行をしない特約) は,責任なき債務といわれ,これと自然債務とを合せて不完全債務とされるが,自然債務はこの不完全債務と同じ意味で用いられる場合もある。

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デジタル大辞泉の解説

しぜん‐さいむ【自然債務】

債務者が自ら進んで債務弁済すれば有効な弁済となるが、債権者からは履行を訴求できない債務。債権について消滅時効が完成し、かつ債務者が裁判上時効の援用をした場合など。

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世界大百科事典 第2版の解説

しぜんさいむ【自然債務】

債務者が自発的に履行すれば,有効な弁済となるが,債務者が履行しなくても債権者から訴えられたり強制執行をうけたりすることのない債務をいう。裁判所に訴えないという約束で金銭を借りうけた者の債務が,一つの典型例である。この観念は古くから存在し,ローマ社会ではobligatio naturalisの名で呼ばれた。ローマ社会では,当初,奴隷は権利主体ではなく物とされていたが,時代の経過とともに経済力をたくわえるに至り,主人が奴隷から融資を受ける事態を招いた。

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大辞林 第三版の解説

しぜんさいむ【自然債務】

〘法〙 債務者が任意に債務を弁済すれば有効な弁済となるが、弁済がない場合に債権者側が履行を強制できない債務。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

自然債務
しぜんさいむ

債務者が任意に債務の履行を行えば、債務の履行として有効であるが、任意に履行しない場合に訴えによってその履行を求めることはできない、という債務(契約による自然債務、時効成立・援用後の債務など)。このような自然債務を現代法において認めることができるかどうかについては学説上争いがあるが、日本の民法上は肯定説がしだいに有力になりつつある。しかし、その範囲については一致していない。判例は、カフェーのなじみ客が女給に独立資金を与えることを約束したという事件で、前記の客の債務を、諾約者が自ら進んで履行すれば債務の弁済となるが、相手方からその履行を強要することはできない特殊の債務関係だとして、実質的に自然債務を認めた。[淡路剛久]

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