至る(読み)イタル

デジタル大辞泉 「至る」の意味・読み・例文・類語

いた・る【至る/到る】

[動ラ五(四)]
ある目的地・場所に行き着く。到達する。「峠を経て山頂に―・る」
ある時間・時点になる。「今に―・るも連絡がない」「交渉深夜に―・る」
ある段階・状態になる。結果が…となる。「大事に―・る」「倒産するに―・る」「事ここに―・ってはやむをえない」

㋐広い範囲に及ぶ。行きわたる。「関東全域に―・る」「恩沢―・らざる所なし」
㋑細かいところまで行き届く。「注意が―・らない」「―・らない看護
自分の方へやって来る。到来する。「好機―・る」「悲喜こもごも―・る」

㋐(「…から…にいたるまで」の形で)ある範囲の両端事柄を例示して、その範囲のものすべて、の意を表す。「頭の先から足の先に―・るまで」
㋑(「…にいたっては」の形で)中でもそれが極端であることを表す。「腕力に訴えるに―・っては許しがたい」
極限に達する。きわまる。
「徳の―・れりけるにや」〈徒然・六〇〉
[可能]いたれる
[類語]届く着く立ち至る辿り着く

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「至る」の意味・読み・例文・類語

いた・る【至・到】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 ( 他動詞「いたす(致)」に対する自動詞形という )
  2. 物事がある点から出発して、他の点まで達する。
    1. (イ) ある場所に行き着く。到着する。
      1. [初出の実例]「百(もも)伝ふ 角鹿(つぬが)の蟹(かに) 横去らふ 何処(いづく)に伊多流(イタル)」(出典古事記(712)中・歌謡)
      2. 「ま遠くの雲居に見ゆる妹が家(へ)にいつか伊多良(イタラ)む歩めあが駒」(出典:万葉集(8C後)一四・三四四一)
    2. (ロ) ある時点に達する。ある時期、時節になる。
      1. [初出の実例]「露霜の 秋に伊多礼(イタレ)ば」(出典:万葉集(8C後)一七・四〇一一)
    3. (ハ) ある地位に達する。
      1. [初出の実例]「わづかに従三位までこそいたりしか」(出典:平治物語(1220頃か)上)
    4. (ニ) ついに、ある状態になる。ある段階、時機などに達する。
      1. [初出の実例]「ハンジャウノ トキ itatta(イタッタ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. 「他をして之(これ)を羨ましむるに至る可(べ)し」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉三)
  3. 物事の限界、極点に達する。
    1. (イ) ( 多く「にいたるまで」の形で ) 物事の両極、または一方の極をあげて、その範囲、限界などを示す。
      1. [初出の実例]「天雲の そくへのきはみ 天地(あめつち)の 至流(いたれル)までに」(出典:万葉集(8C後)三・四二〇)
      2. 「梅(むめ)をかざすよりはじめて〈略〉雪を見るにいたるまで」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
    2. (ロ) ( 多く「いたれる」「いたりたる」の形で ) 極点に達する。このうえない状態になる。きわめる。→至りて至って
      1. [初出の実例]「至(イタ)りたる理」(出典:大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃))
      2. 「これは徳いたりたる翁共にて候」(出典:大鏡(12C前)六)
      3. 「ゼン、または、ガクモンニ itatta(イタッタ)ヒト」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  4. 広くゆきわたる。特に、注意などがすみずみまで届く。
    1. [初出の実例]「嘉(よ)き名普く曁(イタ)り、衆に欽仰(せ)られむ」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)三)
    2. 「いたらぬところなしと聞きふるしたる手も」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
  5. 事物や人、また、新しい事態、時期などが自分の方へやってくる。
    1. [初出の実例]「此時ぬす人いたらんやは。男にこそおはすらめ」(出典:落窪物語(10C後)一)
    2. 「時にいたって行なはざれば」(出典:平家物語(13C前)五)
  6. ある事の結果、そうなる。
    1. [初出の実例]「それは臆病のいたるところぞ」(出典:義経記(室町中か)六)
  7. ( 「にいたりては」「にいたっては」の形で ) 事柄をいくつかあげ、最後に、強調したいものとして、ある事柄を特にとりあげる表現。…ということになる。…に話が及ぶ。
    1. [初出の実例]「聖主光廻らしたまふが若(ごと)きに至ては、三蔵に之を備へたり」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)一〇)
    2. 「水、火、風はつねに害をなせど、大地にいたりてはことなる変をなさず」(出典:方丈記(1212))
  8. 粋になる。上品になる。
    1. [初出の実例]「らしやの羽織に四方かみといたりにいたる」(出典:評判記・役者評判蚰蜒(1674)藤田小平次)
  9. 惜しまないで費用をかけるようになる。はでになる。
    1. [初出の実例]「昨日迄正月買と至(イタ)りし大尽(だいじん)」(出典:浮世草子・渡世身持談義(1735)一)

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