平安中期の関東の武将。生没年不詳。父は下野大掾村雄,母は下野掾鹿島氏の娘という。下野の土豪として勢力を振るい,916年(延喜16)に一族17人とともに配流,その後も濫行(らんぎよう)があって糺勘(きゆうかん)された。平将門の乱が起こると,940年(天慶3)2月に下野掾,押領使として下総に出陣,将門を討った功により従四位下下野守などに任じられ,源経基,平貞盛らとともに軍事貴族として中央に進出する道をひらいた。子千晴が安和(あんな)の変に座して中央からは後退するが,子孫は小山,足利,亘理の諸氏として北関東から東北地方に広まった。
執筆者:福田 豊彦
秀郷は超人将門を倒した勇士として英雄視され,さまざまな伝説がつくり出された。たとえば《吾妻鏡》には,将門が反乱を企てたとき,そのようすを探るため,秀郷が偽って門客になりたいと申し入れたところ,喜んだ将門がくしけずっていた髪を束ねず出て対面したので,軽率さを見抜いたというエピソードを伝えているが,室町時代になると,秀郷は御伽草子の主人公として《俵藤太物語》(別名《俵藤太草子》)などに登場し,めざましい活躍を見せる。秀郷は弓矢の名手としてその名を知られていたが,ある日瀬田橋の上に横たわる大蛇をおくせずにまたいで通ったことから,その大蛇に化身した竜神に武勇を見込まれ,三上山に巣くう大百足(おおむかで)を退治することを懇望される。そして百足退治の謝礼として黄金の太刀と鎧とを与えられ,これによって朝敵を追討すれば将軍になると告げられる。その予言どおり,秀郷は竜神の助けによって将門の秘密を見破ることができ,首尾よくこれを討ちとるというのが,そのあらすじだが,この物語は《俵藤太絵巻》などの絵巻にもつくられ,大いに世に流布した。
執筆者:梶原 正昭
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生没年不詳。平安中期の関東の豪族。父は魚名(うおな)流藤原氏の系譜を引く下野大掾村雄(しもつけだいじょうむらお)、母は下野掾鹿嶋(かしま)の女(むすめ)と伝える。下野(栃木県)の土豪として勢いを振るい、916年(延喜16)に一族17人とともに配流、その後も乱行があって糺勘(きゅうかん)されている。軍略に優れ、平将門(まさかど)の乱が起こると、940年(天慶3)2月、下野掾・押領使(おうりょうし)として平貞盛(さだもり)らと下総(しもうさ)北部(茨城県)に出陣。将門を討った功により従(じゅ)四位下、下野守(かみ)・武蔵守などに任じられ、源経基(つねもと)、平貞盛らとともに軍事貴族として中央進出の道を開いた。子千晴(ちはる)が安和(あんな)の変(969)に坐(ざ)して中央政界からは後退するが、子孫は北関東・奥羽の各地に広まり、小山(おやま)、結城(ゆうき)、下河辺(しもこうべ)、足利(あしかが)、亘理(わたり)などの各氏として発展する。琵琶(びわ)湖の竜女の願いにより三上(みかみ)山のむかでを退治した説話は『俵藤太(たわらとうだ)物語』などで有名であり、のち文学・演劇の主人公として広く親しまれる。
[福田豊彦]
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(朧谷寿)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
生没年不詳。平安中期の武将。魚名流藤原氏という。小山氏・藤原姓足利氏などの祖。村雄の子。母は下野掾鹿島氏の女。俵(田原)藤太と称する。数代前から下野国に土着し,秀郷は下野国を本拠に勢力を広げた。916年(延喜16)一族とともに下野国司に訴えられ流罪。929年(延長7)にも同国から乱行を訴えられた。940年(天慶3)には平貞盛とともに平将門(まさかど)の乱を鎮圧し滅ぼした。その功により従四位下・下野守に任じられ,北関東に大勢力を築いた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…ともあれ東西の兵乱という危機に直面した政府は,純友を従五位下に叙してその懐柔をはかるとともに,地方の領主たちに恩賞を約束して追討への参加を訴える官符を発した(《本朝文粋》所収)。また貞盛や良兼の子の公雅,公連など将門と対立していた平氏一族をはじめ,従来しばしば追討の対象としてきた藤原秀郷らの群党的領主たちを押領使(追捕凶賊使)などとして登用し,940年2月初旬には,藤原忠文を征東大将軍に,藤原忠舒,源経基らを副将軍に任命して出征させた。しかし将門は,征東軍の関東到着以前の2月14日に,下野の藤原秀郷と貞盛,為憲らの軍に攻められ,下総猿島郡で討たれた。…
※「藤原秀郷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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