逃走罪(読み)トウソウザイ

デジタル大辞泉 「逃走罪」の意味・読み・例文・類語

とうそう‐ざい〔タウソウ‐〕【逃走罪】

懲役禁錮拘留勾留されている者や、死刑判決を受けて拘置されている者などが逃走する罪。刑法97条が禁じ、1年以下の懲役に処せられる。単純逃走罪。→加重逃走罪
[補説]勾留状により勾留された者の逃走は本罪にあたるが、逮捕されただけの者の逃走では本罪は成立しない。海外では本罪の行為を罪に問わない国もある。また、逃走を助けた者には、被拘禁者奪取罪逃走援助罪看守者等による逃走援助罪などが適用される。

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共同通信ニュース用語解説 「逃走罪」の解説

逃走罪

刑法97条は、裁判所判決などで拘束された者が逃走したときは、1年以下の懲役と定めている。刑務所作業場から逃走した疑いで逮捕された平尾龍磨ひらお・たつま容疑者(27)は、脱走後に車を盗んだ窃盗容疑でも指名手配されており、10年以下の懲役または50万円以下の罰金を定めた窃盗罪との併合罪が成立すれば、懲役の上限は11年に。さらに、別の窃盗罪との併合が認められた場合、上限は15年となる。

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精選版 日本国語大辞典 「逃走罪」の意味・読み・例文・類語

とうそう‐ざいタウソウ‥【逃走罪】

  1. 〘 名詞 〙 既決未決囚人などが逃走することによって成立する罪の総称

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改訂新版 世界大百科事典 「逃走罪」の意味・わかりやすい解説

逃走罪 (とうそうざい)

いわゆる脱獄の罪のことである。刑法典はその97条以下において種々の形態の逃走罪を規定している。その保護法益国家拘禁作用であると解されている。

 まず,既決,未決の囚人が逃走したときは1年以下の懲役に処せられる(97条)。〈既決の囚人〉とは刑の言渡しの裁判が確定し,それによって拘禁されている者で,懲役,禁錮,拘留に服役中の者のほか,死刑執行までの拘置を受けている者をも含む。〈未決の囚人〉とは,刑事裁判の確定前に勾留されている被疑者被告人である。刑法98条や99条の場合とは異なり,勾引状勾引)の執行を受けただけの者や逮捕状によって逮捕されただけの者は含まない。

 既決・未決の囚人または勾引状の執行を受けた者が,拘禁場・械具を損壊し,もしくは暴行・脅迫をし,または2人以上通謀して逃走したときは,3ヵ月以上5年以下の懲役に処せられる(98条)。また,法令により拘禁された者を奪取した者は,3ヵ月以上5年以下の懲役に処せられる(99条)。法令により拘禁された者を逃走させる目的で器具を給与し,そのほか逃走を容易にする行為をした者は3年以下の懲役に処せられ,この目的で暴行または脅迫をした者は3ヵ月以上5年以下の懲役に処せられる(100条)。さらに,法令により拘禁された者を看守または護送する者が被拘禁者を逃走させたときは1年以上10年以下の懲役に処せられる(101条)。

 なお,以上の罪についてはすべて未遂犯も処罰される(102条)。このように,日本の刑法典は広く種々の形態の逃走を処罰しているが,比較法的に見ると,囚人自身が逃走するのは無理もないことだから,単純な逃走はこれを処罰せず,それを助けたりした第三者のみを処罰するという立法例もある(ドイツ刑法,フランス刑法等)。なお,逃走罪で処罰された人員数は,戦後数年間は数百名と多数を示したが,その後2けたに減り,さらに70年代以後は1けたの数でほぼ安定している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「逃走罪」の意味・わかりやすい解説

逃走罪
とうそうざい

国家による正当な拘禁を害する罪。被拘禁者自身が逃走する場合と、他人がその逃走に関与する場合があるが、具体的には五つの態様に分けられる。(1)単純逃走罪 既決・未決の囚人が逃走した場合で、1年以下の懲役(刑法97条)。(2)加重逃走罪 既決・未決の囚人または勾引(こういん)状の執行を受けた者が、逃走に際して、その手段として拘禁場もしくは拘束のための器具を損壊し、暴行もしくは脅迫をし、または2人以上で通謀した場合には刑が重くなり、3月以上5年以下の懲役(同法98条)。(3)被拘禁者奪取罪 法令により拘禁された者を奪取した場合で、3月以上5年以下の懲役(同法99条)。(4)逃走援助罪 法令により拘禁された者を逃走させる目的で器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした場合には3年以下の懲役。同じ目的で暴行または脅迫をした場合には3月以上5年以下の懲役(同法100条)。(5)看守者による逃走援助罪 法令により拘禁された者を看守・護送する者が被拘禁者を逃走させた場合で、1年以上10年以下の懲役(同法101条)。なお、逃走罪のすべてについて未遂も罰せられる(同法102条)。

[大出良知]

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百科事典マイペディア 「逃走罪」の意味・わかりやすい解説

逃走罪【とうそうざい】

国家の拘禁作用から離脱し,または離脱させる罪(刑法97条以下)。前者は,既決・未決の囚人が自ら逃走したとき(1年以下の懲役),既決・未決の者または勾引(こういん)状(勾引)の執行を受けた者が拘禁場・械具を損壊し,もしくは暴行・脅迫をし,または2人以上通謀して逃走したとき(3月以上5年以下の懲役)。後者は,法令により拘禁された者を奪取した者(3月以上5年以下の懲役),これを逃走させる目的で器具を与えその他逃走を容易にするような行為をした者(3年以下の懲役),同じ目的で暴行・脅迫をした者(3月以上5年以下の懲役),これを看守または護送する者が逃走させたとき(1年以上10年以下の懲役)。いずれも未遂を罰する。なお天災事変のため釈放された在監者が24時間以内に出頭しないときは自ら逃走したものとして処断される。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「逃走罪」の意味・わかりやすい解説

逃走罪
とうそうざい

法令によって拘禁機関に強制的に拘禁された者が,不法に拘禁状態から離脱するときに成立する犯罪。本罪は国家の拘禁作用を保護法益とする。刑法は単純逃走 (97条) ,加重逃走 (98条) ,被拘禁者奪取 (99条) ,逃走加担 (100,101条) の各行為を処罰するが,諸外国の立法例のなかには,被拘禁者の単純逃走は処罰しないものも多い。被拘禁者が自由を求めて逃走を企てることは自然の欲求であると考えられているからである。

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