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石山合戦期に紀伊国雑賀(〈さいが〉ともいう。現,和歌山市)を中心に蜂起した一向一揆。紀ノ川下流のデルタ地帯である雑賀地方には15世紀中葉から真宗本願寺派の教線が伸張し,鷺ノ森御坊を中心とする強大な門徒団が形成されていた。また雑賀五組の雑賀荘,十ヶ郷,宮郷(社家郷),中郷,南郷(三上郷)の小領主層は信仰の差異をこえた地縁による〈紀州雑賀之一揆〉を結成していた。この一揆の初出は1530年代で,有力国人湯河氏・熊野衆,根来・粉河・高野山の三ヵ寺勢力と結んで守護畠山氏を推戴して活動した〈惣国一揆〉の一翼であった。石山合戦期には1572年(元亀3)まで〈惣国一揆〉は織田信長方であったが,74年(天正2)7月ごろに反信長に転じた。77年信長の紀州進攻によって〈惣国〉は解体し,雑賀一揆は反信長派の2組(雑賀荘,十ヶ郷)と信長派3組に分裂した。2組は一度は信長に降服するがすぐに再挙し,紀州門徒の中心として,多量の鉄砲を駆使して石山籠城軍の中核となり,播磨や淡路で毛利軍と共同し,また水軍として本願寺への補給路を維持した。78年信長の鋼鉄戦艦のため水軍が敗退したが本願寺支援を続け,80年の石山開城後は法主顕如を鷺ノ森に迎え3年間守護した。本能寺の変後は一時土佐の長宗我部氏と結び,84年の豊臣秀吉と徳川家康の対決の際には徳川にくみし,豊臣方の後方攪乱をはかった。このため翌年秀吉の進攻をうけ,最後の拠点太田城が陥落して一揆は解体した。
→石山本願寺一揆
執筆者:新行 紀一
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戦国期の地域的な結合体。雑賀荘(しょう)・十ヶ郷(じっかごう)・中郷(なかごう)・宮郷(みやごう)・南郷(なんごう)の5郷(郷は組・緘(からみ)・クサリともいわれた)から構成され、その範囲は和歌山市・海南市の大部分を占める。構成員には神官・浄土宗徒もおり、従来いわれてきたような本願寺(ほんがんじ)の門徒組織とは考えられない。1542年(天文11)に河内(かわち)に進発する守護畠山稙長(はたけやまたねなが)の軍勢中にあるのが初見で、以後も畠山氏の軍勢として活動している。1562年(永禄5)に、代々室町幕府奉公衆で御坊(ごぼう)市に本拠を置く湯河(ゆかわ)氏と取り交わした起請文(きしょうもん)などから、1534年(天文3)以降同氏と一揆を結び、「惣国(そうこく)」と称し、守護畠山氏を推戴(すいたい)していたことがわかる。当地には本願寺門徒も多く、守護代遊佐(ゆさ)氏に畠山昭高(あきたか)が殺された1573年(天正1)以後、織田信長方(中郷・宮郷・南郷)と反信長方の本願寺に結ぶ勢力(雑賀荘・十ヶ郷)とに分裂し、77年(天正5)信長軍による攻撃を受け、いったんは降伏するが、80年の石山退城まで本願寺を支える主力部隊として活動した。とくに鈴木(雑賀)孫一(まごいち)と鉄砲衆は著名で、宣教師ルイス・フロイスは「軍事に於(おい)ては海陸共に少しも根来(ねごろ)に劣らぬ事で、其(そ)の戦場に於(お)ける武勇によって日本に大名(たいめい)を得た」と記している。同年以後は長宗我部元親(ちょうそがべもとちか)と結び、1584年(天正12)の小牧(こまき)・長久手(ながくて)の戦いの際には、羽柴秀吉(はしばひでよし)の背後を攻撃したため、翌年紀州攻めにあい、太田(おおた)城(和歌山市)に立てこもるが水責めにされ、降伏し、一揆は解体された。
[石田晴男]
『谷下一夢著『増補 真宗史の諸研究』(1977・同朋舎出版)』▽『峰岸純夫編『日本史の舞台6 戦雲流れる西ひがし』(1982・集英社)』
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出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…7月毛利水軍は信長水軍を破って石山に糧食を搬入した。信長は77年4月に本願寺の後方基地紀伊国雑賀(さいか)を攻めて降伏させ(雑賀一揆),ついで鋼鉄装の大戦艦6隻をもって毛利水軍を撃破して瀬戸内海東部の制海権を奪取した。陸上では羽柴秀吉が中国路に進出して毛利方諸将を下した。…
…雑賀衆の多くは一向宗に帰依し,いち早く鉄砲で武装した強力な軍事集団として石山本願寺一揆には本願寺の後方基地の役割をはたした。この時期の雑賀一揆は,雑賀五組とも呼ばれており,雑賀を中心に,周辺の十ヶ郷,社家郷(宮郷),中郷,南郷(三上郷)が連合した広域的な集団であった。織田信長ついで豊臣秀吉の進攻によって雑賀一揆は壊滅し,征服後の秀吉はただちに雑賀の岡山の地に和歌山城を築いた。…
※「雑賀一揆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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