頼政(読み)ヨリマサ

デジタル大辞泉 「頼政」の意味・読み・例文・類語

よりまさ【頼政】

謡曲二番目物世阿弥作。平家物語などに取材旅僧の前に源頼政の霊が現れ、宇治川の合戦に敗れて、自害したありさまなどを語る。

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精選版 日本国語大辞典 「頼政」の意味・読み・例文・類語

よりまさ【頼政】

  1. [ 1 ] 謡曲。二番目物。各流。世阿彌作。古名「源三位(げんざんみ)」「宇治頼政」。「平家物語」による。旅僧が宇治へ立ち寄ると老人が現われて平等院へ誘い、源頼政の自刃の跡である扇の芝について語り、今日が頼政の命日で自分はその亡霊だといって消える。その夜、僧の夢の中に頼政の霊が現われ、平家討伐を企てたが宇治川の要害を破られてここで辞世の一首を残し自害したと語り、回向を頼んで消える。三修羅の一つ。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( 源頼政が宇治の平等院の扇の芝で自刃したところから ) 扇の異称
    1. [初出の実例]「頼政を留守居に頼む切落し」(出典:雑俳・柳多留‐五一(1811))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「頼政」の意味・わかりやすい解説

頼政
よりまさ

能の曲目。二番目、修羅(しゅら)物。五流現行曲。世阿弥(ぜあみ)作。典拠は『平家物語』巻四の「橋合戦」「宮御最期(みやのごさいご)」。諸国一見の僧(ワキ)が宇治の里に立ち寄る。一人の老人(前シテ)が現れ、名所旧跡を教え、平等院に導く。そこが源頼政自決の地と知って僧が弔うと、今日が命日であり、自分が頼政の幽霊と名のって消えうせる(中入)。ありし日の装いで現れた頼政の亡霊(後シテ)は、高倉宮(たかくらのみや)を奉じての挙兵、宇治川の合戦と平家の敵前渡河の模様、扇の芝で自害を遂げた無念を語り、弔いを願って姿を消す。目に金の入った(能面では異次元の存在、執心の表現である)頼政専用面を用い、また法体(ほったい)を表現する独特の武装の扮装(ふんそう)である。同じく世阿弥の『鵺(ぬえ)』は、退治された鵺の側から頼政の栄光を描く。この二つの能は、浄瑠璃(じょうるり)『源三位(げんざんみ)頼政』『頼政追善芝』などに影響を与えた。なお『頼政』の能のパロディー狂言の『通円(つうえん)』がある。

増田正造

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改訂新版 世界大百科事典 「頼政」の意味・わかりやすい解説

頼政 (よりまさ)

能の曲名二番目物修羅物。世阿弥作。シテは源頼政の霊。旅の僧(ワキ)が宇治の里に赴くと,1人の老人(前ジテ)が現れて所の名所を教え,平等院に案内する。扇の形に残された芝を見て僧が質問すると,これは源頼政が扇を敷いて自害した跡だと説明し,自分こそその頼政であると名のって消える。夜になると,頼政の霊(後ジテ)が昔の戦場での姿で現れ,読経を頼み,敗戦のようすを物語る。平家に敗れた頼政軍は,奈良に赴く途中,高倉の宮の疲労がひどいので平等院に布陣し,宇治橋の橋板を外して敵を待ち受けた(〈クセ〉)。やがて川を挟んだ戦いとなったが,平家方の田原又太郎忠綱が馬を川に乗り入れ,兵をみごとに指揮して対岸に乗り上げた(〈語リ・中ノリ地〉)。この働きで味方は敗退し,老武者の頼政は自害したのだった。クセ・語り・中ノリ地など,後場の戦(いくさ)物語が中心だが,前場の〈名所教エ〉も味わいが深い。老武者物だがかなり強い動きを見せる。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「頼政」の解説

頼政
(通称)
よりまさ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
女鵺艶頼政 など
初演
元禄12.11(江戸・山村座)

頼政
よりまさ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
万治3.10(江戸・日向太夫座)

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世界大百科事典(旧版)内の頼政の言及

【能面】より

…瘦男(やせおとこ)や蛙(かわず)は死相を表し,三日月や阿波男,怪士(あやかし)などは神性の表現に特徴がある。平太(へいた)と中将は特に武将の霊に用い,頼政や景清,俊寛など特定の人物への専用面も現れた。喝食(かつしき),童子など美貌若年の面のなかにも,蟬丸や弱法師(よろぼし),猩々(しようじよう)といった特定面ができてくる。…

※「頼政」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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