琵琶湖から流下して
「日本書紀」垂仁天皇三年の条に「天日槍
宇治川は「平家物語」の宇治川先陣のくだりにも「白浪おびたゝしうみなぎりおち、瀬まくらおほきに滝なつて、さかまく水もはやかりけり」とあるように急流で、水害もしばしばであった。近世では宝暦六年(一七五六)の大洪水、近くは昭和二八年(一九五三)の破堤などが著名である。明治元年(一八六八)のお釜切れや同四年の六助切れの相次ぐ破堤により、オランダ人工師デレーケらの指導で修築工事が進められた。明治一八年(吹前切れ)、二二年、二九年(庚申塚切れ)、三六年などにも水害が発生し、同三七年の
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京都府宇治市から京都盆地へ流れ出す河川。琵琶湖を水源として流出する唯一の川で,京都・大阪の府境付近で桂川,木津川と合流して淀川と名を変えるまでの流路の長さは約30km。上流は瀬田川といい,宇治市に入って宇治川と名を改める。滋賀県全域の流水はすべてこの川に流れこむために流量は大きく,巨椋池(おぐらいけ)干拓地周辺が水害を受けることが多く,1953年9月の台風13号による水害を契機に宇治川の治水事業が進展した。天ヶ瀬ダムの建設(1964),南郷洗堰(あらいぜき)の移設,瀬田川浚渫(しゆんせつ)などがそれで,天ヶ瀬ダムと南郷洗堰によって流量調節が行われる。宇治発電所(最大出力3万2500kW),天ヶ瀬発電所(9万2000kW),揚水式の喜撰山発電所(46万6000kW,いずれも1997)があって,合計59万kWを発電する。中流部は宇治川ラインと呼ばれる峡谷をなすが,天ヶ瀬ダム完成後はかつてのような急流はみられない。峡谷を出て淀川に合流するまでは河床こう配がほとんどなく,左岸には巨椋池干拓地が広がる。かつて宇治川は巨椋池へ直接流入し,その西方の淀付近で桂川,木津川と合していたが,豊臣秀吉の伏見城建設時(1594)に巨椋池から分離させて伏見城下を迂回するよう河道付け替えが行われ,さらに明治以降数回にわたる河道改修工事が実施され,巨椋池も1933-41年に干拓されて現在の流路となった。宇治の地は古くから水陸交通の要地であり,646年(大化2)に宇治橋架設が伝えられ(宇治橋碑),また幾多の著名な合戦の場となった。《源氏物語》の舞台ともなり,藤原摂関家によって別荘や平等院が造営されたのは,宇治川の清流がおりなす山河の美が王朝人を魅了したからである。
→宇治[市]
執筆者:服部 昌之
平曲の曲名。平物(ひらもの)。拾イ物。都に攻め上る義経方と迎え撃つ木曾義仲方が宇治川の両岸に対陣した。比良・志賀の山の雪が解けて川水が増し,逆巻く白波の上に霧が立ちこめた暁である(〈三重(さんじゆう)〉)。評定も終わって畠山勢が渡河を始めたとき,平等院の対岸から並んで川に乗り入れた2騎があった。頼朝下賜の生食(いけずき)に乗った佐々木高綱と,同じく摺墨(するすみ)に乗った梶原源太(景季)である。先行の梶原が,〈馬の腹帯が伸びている〉という佐々木の注意で締め直しているすきに,佐々木が駆け抜けた(〈拾イ〉)。佐々木の先陣の名のりに続いて畠山重忠らも上陸して攻め立てたので,義仲方は伏見へ敗走した(〈拾イ〉)。三重・拾イが聞き所。人形浄瑠璃《ひらかな盛衰記》などの原拠。
執筆者:横道 万里雄
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淀(よど)川水系中流の河川。琵琶湖(びわこ)から流下する瀬田川は、滋賀県大津市南郷の洗堰(あらいぜき)から下流を宇治川という。宇治川は京都府と滋賀県の境にあたる醍醐(だいご)山地を、くの字形の流路をとって流れるが、峡谷美に富むため、宇治川ラインとよばれる。宇治市から京都盆地を西流して、大阪府との境の大山崎町で桂(かつら)川、木津(きづ)川と合流して淀川となる。1964年(昭和39)に宇治市の天ヶ瀬(あまがせ)に天ヶ瀬ダムが建設された。堤高73メートル、長さ254メートル、水力発電、洪水調節などの多目的ダムである。1970年には上流右岸の喜撰山(きせんやま)山腹に、宇治川からの揚水による喜撰山ダムと地下発電所が完工した。また宇治川ラインの天ヶ瀬から大津市外畑までの12.2キロメートルの間は、天ヶ瀬ダムによって水位が上昇して長大な人工湖となり、いっそう風光美を加え、ことに初夏の新緑、秋の紅葉が美しい。沿岸には自動車道が開通した。
なお、宇治市の平等院(びょうどういん)前の中州の塔の島付近では夏に鵜飼(うかい)が行われる。またこのあたりは宇治川の渡河地点として、治承(じしょう)、寿永(じゅえい)、承久(じょうきゅう)、建武(けんむ)などの宇治川の戦いの古戦場となった所で、佐々木高綱(たかつな)と梶原景季(かじわらかげすえ)の先陣争い(1184)の物語は有名である。
[織田武雄]
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…志摩半島のほぼ中央やや南よりの剣峠(343m)に源を発し,神路(かみじ)山東麓を経て伊勢神宮(内宮)域を通り,河口近くで分流しその一つは汐合(しあい)川といわれる感潮河川となって伊勢湾に流入する。御裳濯(みもすそ)川,宇治川などとも称される。全長24km,流域面積85km2。…
…現在の京都府南部の地。東は近江,伊賀,南は大和,西は河内,摂津,丹波に接し,四方ともに山で,周辺山地からの木津川,宇治川,鴨川(賀茂川),桂川,淀川などが平野部に流れる。人文のうえでは,中央にある巨椋池(おぐらいけ)(干拓事業で消滅)の北の京都盆地および周辺山地と,南山城地域とに区分できる。…
…琵琶湖を水源として流出する唯一の川で,京都・大阪の府境付近で桂川,木津川と合流して淀川と名を変えるまでの流路の長さは約30km。上流は瀬田川といい,宇治市に入って宇治川と名を改める。滋賀県全域の流水はすべてこの川に流れこむために流量は大きく,巨椋池(おぐらいけ)干拓地周辺が水害を受けることが多く,1953年9月の台風13号による水害を契機に宇治川の治水事業が進展した。…
※「宇治川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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