大化改新期の国博士。漢人(あやひと)を称する百済帰化人の子孫。〈たかむこ〉ともよみ,姓(かばね)は史,黒麻呂とも書く。608年(推古16)遣隋使小野妹子に従って,学生として渡海。640年(舒明12),新羅を経て南淵請安らと帰国するまでの長期間にわたって滞在し,隋唐王朝の興亡を目のあたりに見聞した。645年(大化1)蘇我本宗家が滅亡し,新政権が成立すると,僧旻(みん)(新漢人(いまきのあやひと)旻)とともに国博士に登用され,改新政策の立案にあたった。646年新羅に使し,旧任那地方からの調をやめ,翌年新羅の上臣金春秋(のちの武烈王)に送られて帰還した。649年旻とはかって八省百官の設置につくした。654年遣唐押使として派遣され,唐都長安で高宗に謁した。そのさい,《新唐書》の〈日本伝〉によると,百済・高句麗と交戦中の新羅を救援するため出兵の指示があったと伝える。同年かの地で没した。時に冠位は大錦上(別伝では大花下)であった。
執筆者:八木 充
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(鈴木靖民)
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飛鳥(あすか)時代の遣隋(けんずい)留学生。帰国後、大化改新政権の政治顧問。正しくは「げんり」と読む。「黒麻呂(くろまろ)」とも記す。高向氏は6世紀に渡来した氏族。608年(推古天皇16)遣隋使小野妹子(おののいもこ)に従って隋に留学。その期間は33年にも及び、その間、隋の滅亡と唐の成立を目の当たりにした。政治・制度に関する豊富な学識と海外情勢にも明るいことから、帰国後、大化改新政権において、僧旻(みん)とともに国政最高顧問である国博士(くにのはかせ)に任ぜられ、改新政治のブレーンとして活躍した。また646年(大化2)には新羅(しらぎ)に、654年(白雉5)には唐に派遣され、外交面においても重要な役割を果たしたが、同年唐の都長安で客死した。
[菊地照夫]
『井上光貞著『日本の歴史3 飛鳥の朝廷』(1974・小学館)』
?~654
「くろまろ」とも。黒麻呂とも。7世紀前半の官人・学者。608年(推古16)遣隋使小野妹子に従って入隋,留学。640年(舒明12)南淵請安(みなぶちのしょうあん)らとともに帰国。645年(大化元)僧旻(みん)とともに国博士に任じられ,大化の改新政治に参画。646年新羅に派遣され,人質を貢上させ,任那の調をやめた。時に位は小徳。翌年,新羅の上臣金春秋(きんしゅんじゅう)をともなって帰国。654年(白雉5)遣唐押使として新羅経由で入唐。ときに姓は史(ふひと),冠位は大錦上(一説に大花下)。皇帝高宗に拝謁したが,同年唐で客死。
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…この進言は,630年(舒明2)の第1次遣唐使として実現し,これ以後9世紀半ばまでに十数回の遣唐使が派遣されることになる。また第1次遣唐使帰国の際には,二十数年間中国に滞在していた僧旻(みん)(新漢人旻(いまきのあやひとみん))ら留学生もいっしょに帰り,さらに10年後には,留学生の南淵請安(みなぶちのしようあん),高向玄理(たかむくのくろまろ)らも唐から帰国した。彼らは,隋が滅び唐の国家が形成される経過を目のあたりに見てきたと推測されるが,彼らの知識と体験は,大化改新の際に重要な役割を果たした。…
…これ以後,古代の留学生はすべて男性と推定される。 7世紀初めに久しく中絶していた中国王朝との外交が再開されると,608年(推古16)遣隋使小野妹子に従って,高向玄理(たかむくのくろまろ),僧旻(新漢人旻(いまきのあやひとみん)),南淵請安(みなぶちのしようあん)ら8人の学生・学問僧が隋に渡った。彼らは,二十数年から三十数年の長期間にわたって中国に滞在し,隋が滅び,唐が興ってくる中国の社会を実見して帰国し,大化改新に始まる律令国家の建設に大きな役割を果たした。…
※「高向玄理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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