骨格の構成要素が互いに結合されている部位で,ふつうはそこで互いに独立に動くようになっているものをいう。
無脊椎動物の関節はほとんどが固い外骨格の構成要素である殻片の間に形成されるもので,節足動物をはじめ軟体動物,触手動物などに見られる。関節する殻片は,一般にちょうつがい構造や尖軸(せんじく)構造で互いに組み合わされている。節足動物の体節間や肢節間の関節では,硬化していないクチクラ層をもつ節関膜が隣節の硬殻の間をつないでいて,外骨格系で完全に体を包みながら関節を可動性にしている。硬殻の組合い構造が強固でなく,主として節関膜と筋肉とで結合されている関節では,多少回転させることも可能となっている。発達した筋肉が隣節硬殻の内面あるいは内突起に付着して,拮抗的に収縮して関節を屈伸させる。二枚貝類の殻片はちょうつがい部で靱帯(じんたい)あるいは弾体で接着され,それが閉殻節と拮抗的に働いて殻を開閉させる。腕足類では,背殻片のちょうつがい部の両側に閉殻節と開殻節が別々に付着して,殻片を結合,開閉させる。
執筆者:原田 英司
脊椎動物では,軟骨と軟骨,骨と骨,軟骨と骨などの連結は,その可動性からみて大きく二つの様式に分けられる。第1は,相接する2個の骨または軟骨の間に可動性がほとんどあるいはまったくない場合で,これを不動結合と呼ぶ。少量の結合組織繊維で結びつけられた頭蓋の各骨の間(縫合)や哺乳類の歯の歯根と歯槽骨の間,軟骨で結びつけられた哺乳類の骨盤の左右の恥骨の間(恥骨結合)や頭蓋底の蝶(ちよう)形骨と後頭骨の間などがその例である。これらの場合,動物の種類によっては骨化して一体となっていることもあり,同じ動物でも加齢とともに骨化して2個の骨が癒合することもある(骨結合)。第2は両方の骨の間に介在する結合組織が多くて可動性の大きい場合で,これを可動結合という。四足動物の四肢骨や上下の顎骨の連結がそれである(人体では,椎間円板という軟骨による椎骨間の連結は不動結合とされるが,脊椎動物界には自由に曲げられるヘビの脊柱に見られるように,可動結合である椎骨間連結の例が少なくない)。ふつう関節と呼ばれるものはこのような可動結合のことで,それには二つの様式がある。一つは両方の骨(または軟骨)が靱帯だけで結びつけられている場合(靱帯結合)で,魚類における脊柱以外の骨の連結,ある種のカメの背甲や腹甲に見られるちょうつがい状の関節,鳥類の肋骨の背側部と腹側部の連結などがそれにあたるが,人体ではきわめてまれである(脛骨と腓骨の遠位端どうしなど)。もう一つは滑膜性結合と呼ばれるもので,両方の骨端が軟骨(関節軟骨)に覆われ,それらの間にすきま(関節腔)があって粘液(滑液)を満たし,その連結部全体が結合組織性の袋(関節包)で包まれている場合である(人体解剖学ではこの種の連結を厳密な意味での〈関節〉とする)。関節腔の中には薄い円板状の軟骨(関節円板)や環状または三日月型の軟骨(関節半月)が挟まっている場合があり,これらは関節面どうしの適合とすべりを円滑にする働きをもっている。関節軟骨は関節の骨が軟骨を経て形成される過程で骨化せずに残存したものである(ただし哺乳類の下顎骨の関節にある関節軟骨は由来の異なる二次軟骨である)。滑膜性結合では,2個の骨のうち一方の突き出した関節面(関節頭)が他方のくぼんだ関節面(関節窩(か))にはまりこむ形になっていることが多い。このような関節の形態には球関節,楕円体関節,鞍(くら)関節,蝶番(ちようばん)関節など種々の型が区別され,こうした形態がそれぞれの関節の機械的な機能の基となる。これらの関節には,関節腔の中で強固なひも状の靱帯(関節内靱帯)が両方の関節面を結びつけているものもある。可動性の激しい関節でも骨と骨とが一定の範囲以上に動くことがないのは,関節面そのものの形態によるほか,上記の関節包,関節内靱帯,種々の外部の靱帯,関節腔内の陰圧などの総合された強い結合作用によるところが大きい。もっともヒトでは,このような滑膜性関節もある種の病変によって全体が骨化して一体となり,可動性をまったく失うことがある。なお,化石で知られるところによると,古生代の原始魚類であった板皮(ばんぴ)類のなかには,カニの脚のように関節でつながる胸びれをもつ種類(胴甲類)やコメツキムシのように頭部と肩部の骨格がちょうつがい状の関節で連結する種類(節頸類)があったが,それらの関節の構造や機能は十分明らかになっていない。
執筆者:田隅 本生
ヒトの全身には多くの関節があり,個々の関節にはそれぞれの動きに応じて形態の相違がみられるが,しかしすべての関節に共通した基本的構造がある。関節をつくる二つの骨は,一般に一つは凸面をなし,これを関節頭といい,他はそれに応じて凹面をなし,これを関節窩という。関節頭と関節窩は互いに適合した形をとるから,その間にある関節腔はあまり広いものではない。しかし相対する二つの骨の形があまり適合しない場合(たとえば膝関節)は,比較的広い関節腔を残すことになるが,そのときでも,後述するように,関節内の靱帯や滑膜に包まれた脂肪のひだが関節腔内に突出して,関節面の形を整えているため,関節腔は広くない。ちなみに関節腔といっても,そこには空気が入っているわけではなく,滑膜から分泌された滑液が満たされていて,これが運動時の潤滑油のような働きをしている。関節腔の外側を包む膜を関節包という(古くは関節囊といった)。関節包に包まれて関節腔が独立した一つの間隙(かんげき)となる。関節包は2枚の膜から成る。外側の膜を繊維膜といい,これは骨の表面を覆う骨膜のつづきで,関節包のところではこの骨膜がひじょうに厚くなって関節包をつくっている。骨膜はおもに膠原(こうげん)繊維でできているから,関節包の繊維膜もその本体は膠原繊維である。関節包の内側にある膜が先に述べた滑膜である。滑膜は滑液という粘稠(ねんちゆう)性のある液体を関節腔内に分泌して,関節面を動きやすいように滑らかにするのに役だっている。関節頭と関節窩では,ともに骨自体が関節腔に露出しているわけではなく,その表面は関節軟骨という軟骨で覆われている。この軟骨は,関節面の運動時における摩擦を和らげる役目があるほか,場合によっては運動に応じて変形して,運動がスムーズに行えるように調節している。なお関節軟骨の表面は滑膜をかぶらない。関節包の外側には,関節の補強装置として靱帯がある。靱帯は膠原繊維の束で,関節する二つの骨の間を結んでいて,関節包の外面に接している。一つの関節には通常,いくつもの靱帯が付属している。そのほか,関節包の外側にある筋肉やその腱も,靱帯と同じように関節の補強装置として役だっている。腱と靱帯とは本体はともに膠原繊維の束であるが,靱帯は関節に付属しているもので,とくに筋肉とは関係はない。腱は関節よりもむしろ筋肉の付属物で,筋肉が骨に付着するところでは必ず腱を介して骨に付着している。
個々の関節は,その目的に応じていろいろ複雑な運動をするが,全身の関節をその運動様式によって分類すると,1軸性関節,2軸性関節,多軸性関節の3種に分けることができる。1軸性関節というのは,たとえば肘関節のように屈伸運動だけしかできない関節で,この場合の運動軸は一つだけで,それは肘関節を横切って水平に走る。2軸性関節とは,互いに直角に交わる2方向の軸をもった関節で,具体的にはこの二つの軸に沿って4方向の運動を順に連続して行うと描円運動(分まわしともいう)ができる。したがって結果的にはあらゆる方向に動かすことができるが,軸回旋はできない。たとえば手首の関節(橈骨(とうこつ)手根関節)がこれにあたる。多軸性関節とは,肩関節のように,あらゆる方向に動かすことができるほかに,軸回旋,すなわちいわゆるねじれができるものをいう。
他方,この分類とは別に,関節面の骨の形状によって関節を分類すると次のようになる。(1)球関節は,関節頭も関節窩も球状の丸い形をしているもので,運動面からは多軸性関節に相当する。肩関節や股関節がこれにあたる。(2)楕円関節は,関節面が楕円体に近く,楕円の長軸と短軸を軸とした2軸性の運動を行う。橈骨手根関節がこの一例。(3)蝶番関節は,屈伸運動だけしかできない1軸性の関節で,肘関節や膝関節などがこれに相当する。(4)車軸関節も蝶番関節と同じ1軸性であるが,この関節の特徴は,関節面が車輪のような形をしていて,その中心を通る線を軸として回旋運動を行う。前腕における橈骨と尺骨の間の関節がこれで,この運動によって手のひらを前に向けたり後ろに向けたりする(この運動を回外,回内という)。
次に人体にあるおもな関節について,そのおよその構造と運動について説明しよう。
肩甲骨と上腕骨の間の関節で,関節頭をつくる上腕骨の上端部(上腕骨頭)はほぼ完全な球面をなし,これに対する肩甲骨の関節窩も球形の凹面をつくる。この関節の特徴として,関節窩が関節頭に比して著しく小さいので,関節頭が関節窩から大きくはみ出している。このことは肩関節の運動性がきわめて大きいことに関連しているが。その反面,脱臼をおこしやすい欠点がある。関節包の外面にはとくにこれを補強する靱帯はないが,関節の運動に関係した筋肉が関節包を補強している。それらの筋肉は,ことに関節の上面と後面で発達している。したがって関節の前方と下方では関節包が弱く,この部分で脱臼することが多い。実際には,上肢を横に挙上したとき,外力が上方または後方から加わると,上腕骨が前下方に脱臼することが多い。肩関節は球関節であるからすべての方向に運動でき,また上肢の軸回旋もできる。しかし実際には,周囲の骨などによる運動の制限があって,肩関節だけの運動では,上肢を水平位に90度挙上できるにすぎない。上肢をさらに上方にほぼ真上まで上げることができるのは,肩関節の運動のほかに,同時に胸鎖関節や肩鎖関節の運動が加わるためである(このように,一つの運動を行うのにあたって,隣接した複数の関節が同時に働いて,運動範囲を拡大する現象がしばしばみられる。ヘビが自分の体よりも大きいものを飲みこむことができるのも,ヘビの顎の関節のこのような特殊な構造による)。上腕骨に対する肩甲骨の関節面は,真横から約30度前方へ傾いた方向にある。肩関節はこの線上で最も作業しやすい。この位置を上肢の作業位という。日常,物を書くときやはしを持つときの上腕骨の位置は,すべて無意識的にこの位置をとっている。また肩関節を主とした左右の上肢の運動範囲は,ほぼ自分の視野の範囲に一致している。
→肩
上腕骨と橈骨および尺骨との間の関節で,これら3骨の相互の間にある三つの関節が共通の関節包に覆われて肘関節をつくる。このような関節を〈複関節〉という。しかし肘関節としての本来の働きは,上腕骨と尺骨との間の関節(腕尺関節)で行われる。肘関節の運動は,ひじの屈伸で,したがって1軸性の蝶番関節である。
前腕において平行に並んでいる橈骨と尺骨の間の結合をいう。この両骨はそれぞれの上端と下端で二つの関節をつくって結合している。これを上橈尺関節,下橈尺関節という。前者は肘関節の関節包に包まれている。この二つの関節は,軸回旋のみを行う車軸関節で,回旋運動の軸は上方は橈骨の上端を通り,下方は尺骨の下端を通る。この線を軸として,橈骨が尺骨の周りを回旋する。この運動は具体的には,手のひらを前後にまわす運動で,手のひらを前に向ける運動を回外といい,反対に後ろに向けることを回内という。
手首の関節で,単に手関節と呼ばれることもある。橈骨の下端と手根骨との間の関節で,関節面は楕円形をなすから,関節の分類上は2軸性の楕円関節に相当する。手のひらの屈曲(前方へ曲げる)・伸展(後ろへ反らす),および内転(手のひらを小指側へ倒す)・外転(同じく母指側へ倒す)を行い,この4方向の運動を順をおって続けると,描円(分まわし)ができる。
→手
母指(親指)は他の指に比べてひじょうによく動く。その原因がこの手根中手関節の動きによる。手根骨の一つである大菱形骨と母指の中手骨との間の関節で,関節面は馬の背にのせる鞍の形をした鞍関節である。鞍関節というのは,楕円関節と同じく2軸性である。したがってこの関節では,母指の屈曲,伸展のほか,内転(母指を第2指に接する),外転(手のひらを上に向けて水平においたとき,母指の先端が上方に向く運動)を行い,さらにこれらの運動を総合して描円ができる。ここでたいせつなのは,母指を屈曲したときに,母指が他の四つの指と向かい合うことで,この運動をとくに対立という。この運動ができるのは,人間を含めた霊長類の特徴で,物をしっかり握るのに役だつ。人間でも,赤ん坊のときには,まだこの運動がじょうずにできない。
寛骨の寛骨臼と大腿骨頭との間の関節で,関節面はほぼ完全な球面をなす。したがって肩関節と同じ多軸性の球関節に属するが,肩関節と違う点は,関節窩としての寛骨臼が深くて,関節頭(大腿骨頭)の約1/3を覆っている。したがって肩関節ほど運動範囲は広くないが,また反面,脱臼しにくい。関節包の外面に接する靱帯も強い。多軸性であるから,あらゆる方向に運動できるが,その運動範囲は,ひざを曲げたときに,伸ばしたときよりも約2倍も拡大される。これは股関節と膝関節の二つの関節をこえて寛骨から脛骨につく大腿部の長い筋肉の緊張に関係している。股関節のいま一つの特徴は,関節包が広く大腿骨頭のみならず大腿骨頸まで包むため,この部分の血管分布が十分でないことである。高年者に多い大腿骨頸部骨折が治りにくいのは,このことにも原因がある。
→先天性股関節脱臼
大腿骨下端と脛骨上端との間の関節で,そのほか関節の前面にある大腿四頭筋の腱のなかにある膝蓋骨も関節の構成に関与している。1軸性の蝶番関節でひざの屈伸を行うが,ひざを曲げた位置では,さらに足の内旋や外旋ができる。これは,ひざを伸ばしたときには,関節の両側にある靱帯(じんたい)(側副靱帯という)が緊張して足の内旋,外旋はできないが,ひざを曲げた位置ではこれが緩むために可能となる。スキーのときなど,ひざを少し曲げた姿勢で滑るのはこのためである。大腿骨の下端は球面に近いが,脛骨の上面は平面的であるから,この両者の関節面は,互いに適合した形ではない。このため関節腔が広いが,これを関節包より突出した脂肪を含んだ滑膜のひだや関節内靱帯が埋めている。また関節面の不適合を補うために,脛骨の上面には繊維軟骨から成る関節半月がのっている。これには内外二つの半月があり,内側半月,外側半月という。関節半月は,激しい衝撃などで裂傷を生ずることがあり,そのときは激痛を発するという。膝蓋骨は,ひざの屈伸のときに骨と筋肉との間に生ずる摩擦を軽減する。
足関節ともいう。脛骨下端および腓骨下端がつくる関節窩に,距骨が関節頭として適合している。外踝(がいか)(そとくるぶし)と内踝(うちくるぶし)を結ぶ線を軸として,足の屈伸を行う。
側頭骨と下顎骨とによってつくられる関節で,耳のすぐ前方に位置し,咀嚼(そしやく)運動に際して,皮膚の上からよくその動きに触れることができる。この関節は口の開閉,および上顎の歯と下顎の歯をかみ合わせる(咬合(こうごう))ときに働く。このことは,食物を咀嚼する際に重要である。顎関節は,形のうえからは,蝶番関節ないし楕円関節であるが,その動きは動物の食性に関係していて複雑な動きをする。その運動を分析すると次の3種に分類できる。(1)下顎の上下運動,すなわち口の開閉,(2)下顎の前進運動,これは口を閉じた状態で著しい,(3)下顎の水平運動,これは下顎を横に動かす運動で,これも口を閉じた状態で著しい。この3種の運動のうち(1)は肉食の動物に著しい運動で,(2)は齧歯(げつし)目(ネズミ,リスなど)で,(3)はウシ,ウマなどの草食動物で著しい。ヒトなど雑食性の動物では,上述3種の運動を混合して行う。
→顎(あご)
左右の恥骨が体の正中線につくる結合で,外陰部の直上部にある。この結合は正確には繊維軟骨結合で,両者の間には繊維軟骨が介在する。したがって多少の可動性があるが,とくに女性では動きやすく,ときには繊維軟骨のなかに関節腔が存在することがある。これは分娩に際して骨盤腔を広げ,産道を広くして胎児の娩出を助ける。ある種の動物では女性ホルモンを投与することによって,恥骨結合を実験的に広げることができる。
頭蓋骨は15種,23個の骨から成るが,このうち下顎骨と舌骨以外は,すべて縫合という独特な結合様式により,不動性に連結している。縫合というのは二つの骨が膠原繊維によって結合するものをいう。しかし胎児や新生児などで,骨化が十分に進んでいない時期では,縫合も発達不十分で,隣接する骨の間には比較的大きい間隙があり,この部分は結合組織により膜状に閉鎖している。この間隙を泉門という。泉門のうち,とくに左右の頭頂骨と前頭骨の間のものは,ひし形の大きい間隙で,大泉門といわれる。大泉門は生後8~9ヵ月では2~3cmの大きさがあるが,しだいに骨化が進むとともに小さくなり,生後2年前後で閉鎖して縫合が完成する。泉門の存在によって,分娩の際胎児が母体の狭い産道を通過するとき,児頭が産道の大きさや形に応じて変形して分娩を助けることができる。
→骨格
執筆者:河西 達夫
関節に対する手術には以下のものがある。(1)関節切開術arthrotomy 目的に応じて皮膚より関節内にまで切開を加える手術法の総称。関節内組織の試験切除,関節内部の診断,遊離体の摘出,半月板の切除,化膿性炎症の治療などの目的をもって行われる。(2)滑膜切除術synovectomy 関節膜の滑膜面をむき取るように切除する手術。慢性関節リウマチ,変形性関節症,関節結核などに適応のある場合がある。(3)関節切除術joint resection 病巣を含んだ関節端を一塊として切除する手術。現在あまり行われない。(4)関節制動術arthrorisis 関節辺縁に骨移植を行い関節可動域を制限する方法。下垂足の矯正のため足関節の後方に植骨し底屈をブロックするなどの方法がある。(5)関節固定術arthrodesis 関節の本来の性質である可動性を廃する手術で,関節病変の鎮静,関節痛の除去,関節支持性の獲得,良肢位の保持,関節変形の矯正などの目的で行われる。対象となる疾患または症状としては,関節結核などの慢性関節炎,変形性関節症,麻痺による動揺関節,骨の変形による手足の変形などがあげられる。(6)関節形成術arthroplasty 強直した関節の関節面を剝離(はくり)し可動性を再獲得する手術。関節面の適合,癒着の防止には各種の手技が用いられる。すなわち中間挿入膜,筋膜,関節包などを関節に挿入または面を覆うなどである。(7)人工関節置換術joint replacement 関節の全体または一部を人工物で置換し,機能を温存するとともに痛みをとるのを目的に行う。骨頭全体を置換する手術は人工骨頭置換術と呼ばれ,大腿骨頭付近の疾患,病変に用いられる。関節全置換術は,股関節,膝関節に主として行われ,多くの術式と人工関節の種類がある。
→人工関節
執筆者:近藤 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物の骨格は各骨が互いにいろいろな形式で連結しており、その連結を関節という。結合する骨が種々の運動を必要とする場合は可動関節によって結合し、動きを必要としない場合には不動関節によって結合する。一般に関節というときは可動関節をさし、不動関節の場合は、骨間にある組織の種類によって靭帯(じんたい)結合、縫合(頭蓋骨(とうがいこつ))、軟骨結合(恥骨結合、脊椎(せきつい)の椎体間結合)などとよぶ。
可動関節は互いの骨の間に関節腔(くう)とよぶ狭い間隙(かんげき)があり、関節腔の内面には滑膜という組織が張られている。関節をつくっている関節骨の骨端部の表面には関節軟骨とよぶ硝子軟骨(ガラスなんこつ)の薄層(厚さ0.5~2ミリメートル)があり、関節面を平滑にしている。関節腔内には滑液が入っていて、潤滑油の役割をしており、関節の動きを滑らかにしている。関節は一般的には対向する関節面があり、一方は凸面で関節頭とよび、他面は凹面で関節窩(か)とよぶ。関節窩の辺縁部には線維軟骨性組織があったり(股関節(こかんせつ)の関節唇)、関節腔を完全に二分している関節円板(顎関節(がくかんせつ)、胸鎖関節)や円座のような関節半月(膝関節(しつかんせつ))が存在して関節面の適合をよくしている。
関節は関節包とよぶ結合組織で包まれるほか、さらに骨を互いに結合させる補強用の多数の靭帯が関節の周囲にあって、関節の運動を機能的に助けている。関節運動の性質、可能範囲は関節の形態、関節包、靭帯のつき方で決まるといってよい。
関節の分類法にはさまざまなものがあって、関節に関与する骨の数によって単関節(2個の骨の連結)とか複関節(3個以上の骨の連結)を区別したり、関節運動の形式によって、屈曲、伸展、内転、外転、外旋、内旋、回内、回外などに区別するが、これらの運動は関節軸を中心として行われるものである。関節軸とは、関節を通り二つの骨をまっすぐに伸ばした方向に走る「縦軸」と、縦軸に直角の方向の「直角軸」、これら両軸にそれぞれ直角な「垂直軸」を設定したものであり、関節はこの三つの軸を中心にして運動を行う。関節軸からみた場合、屈伸や回旋の運動を1軸のみで行う一軸性関節、互いに直交する2軸を中心にそれぞれが屈伸できる二軸性関節、前後や側方への屈伸のほか、回旋運動も行う三軸性関節(多軸性関節)の三つに分けられる。
関節の分類のうち、もっとも一般的なのは、関節面の形状、つまり関節頭と関節窩の形による分類である。なかには、厳密に区別できない形状の関節もあるが、球関節(臼(うす)関節)、楕円(だえん)関節、鞍(くら)関節、蝶番(ちょうつがい)関節、車軸関節、平面関節などがこれである。
(1)球関節 関節頭が半球状で、他方の関節窩が浅く、回転が自由で、運動範囲も関節のなかではもっとも広い多軸性関節である(肩関節)。関節窩が深い場合は臼関節といい、可動範囲も制限される。股関節がこれに属する。
(2)楕円関節 関節頭が楕円形の二軸性関節で、2方向に屈曲するが、回転運動ができない。顎関節、橈骨(とうこつ)手根関節がこれに属する。橈骨手根関節は、橈骨と手根骨に属する舟状骨・月状骨両骨との間にできる関節で、手掌側、手背側、橈骨側、尺骨側への屈曲を行う。
(3)鞍関節 対向する骨端面が鞍状で、互いに直角にあわさっている二軸性関節で、母指の手根中手関節(母指の付け根の関節)がこれに属する。
(4)蝶番関節 一軸性関節で、蝶番と同じ働きをして、1方向だけの屈曲運動を行う。指節間関節(指骨の間の関節)や腕尺関節(上腕骨と尺骨間)がこれに属する。
(5)車軸関節 円柱上の関節頭が長軸となり、その側面に関節窩がはまるように湾曲している。関節窩が固定して関節頭が運動軸となる一軸性関節であり、可動性も大きい。橈骨と尺骨との間の、上・下橈尺関節は前腕の回外・回内運動を行う車軸関節であり、また、第1頸椎(けいつい)と第2頸椎との間に構成される正中軸関節は頭部を回転させる。
(6)平面関節 二つの関節面が平面的で、互いにずれる運動を行う(椎間軟骨)。
関節運動の形式や運動範囲は、関節の形式、関節軟骨の形態、関節周囲の靭帯や筋のつき方、走行によって決まるため、関節の修復、整形などには、それらの条件を十分に考慮しないと機能回復が円滑にいかない。関節の運動感覚は、関節の内面・軟骨・靭帯などの内部に、関節面の接触によって位置や運動状況を感受する受容器があるため、自動的、他動的運動に関係なく、関節運動を感じる。
[嶋井和世]
代表的なものは「関節炎」と「脱臼(だっきゅう)」である。関節炎は原因によって種々に分類されるが、「関節リウマチ」(リウマチ性関節炎)や「変形性関節症」などは別に扱われる。また脱臼は、外傷性では肩関節に多くみられるが、先天性では「股関節脱臼」がもっとも多い。日常的には「捻挫(ねんざ)」がよくみられるが、幼児の手を引っ張った瞬間におこる「肘内障(ちゅうないしょう)」も肘関節の一部脱臼である。
関節の疾患にはかならず関節の運動障害を伴い関節痛を訴えることが多く、関節可動域のテストが行われる。また関節の内視鏡検査には、日本で開発された「関節鏡」が使われ、簡単な手術も可能となっている。治療としては「関節固定術」のほか、関節の可動性を回復させる「関節形成術」があり、「人工関節」が使われることもある。
以上についての詳しい解説は、それぞれの項目を参照されたい。
[永井 隆]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…ここには声帯vocal cordsと呼ぶ2枚の弁があり,互いに接したり離れたりして,肺から流れ出る空気を遮断したり通過させたりする。こうした上位と下位の器官を用いて言語音声を発することを調音articulationと呼び,調音に参加する器官を調音器官articulatorという。
【子音の分類】
子音は肺から流れ出る空気を声道において妨害するとき発する音である。…
…また楽句の切れ目はリズム的な原理ばかりでなく,音の強弱や音色の変化からも感得されることがある。そこからアーティキュレーションarticulationとの混同も生じる。しかしアーティキュレーションはレガートやスタッカートなど,各音の演奏表現にかかわる概念であって,音楽的意味の区分であるフレージングとはあくまでも区別されねばならない。…
…岩石の割れ目や破断面で,それに沿うずれ(変位)がないか,あるいはほとんど認められないもの。面に平行なずれのあるものを断層という。花コウ岩や厚い塊状砂岩などのような均質な岩石の場合には,ずれを認定する手がかりがないので,鏡肌や断層粘土あるいは断層角礫など断層に伴う諸特徴が認められない限り,両者を区別するのはむつかしい。力学的には,最大圧縮主応力軸に対して約30度傾く方向にできる剪断節理と,この軸と中間主応力軸の両者を含む面に平行な張力節理とに分けられる。…
…石造,煉瓦造,コンクリートブロック造などの組積(くみづみ)工事の壁や床,タイル張りなどの張付け工事の壁や床において,個々の材料の間にできる継目(つぎめ)をいう。また,モルタル塗りの壁や床で,亀裂を防ぐためにつける溝や金属板をはめ込んだ筋目も目地と呼ぶ。垂直の目地を縦目地,水平の目地を横目地というが,組積工事では,縦目地が2層以上連続したものを芋(いも)目地と呼び,構造を脆弱にするものとして絶対に避けるようにしている。…
…移動運動の様式には遊泳,匍匐(ほふく),歩行,跳躍,走行,飛翔(ひしよう),帆翔,ジェット推進などいろいろあり,そのために使われる器官(運動器官)や機構もさまざまである。筋肉運動の場合は,関節をもつ骨格とそれに付着する伸筋・屈筋の組合せが一般的であり,骨格は無脊椎動物では外骨格,脊椎動物では内骨格になる。
[遊泳swimming]
遊泳は液体状の媒質の中を,底面から離れて移動する様式であり,まず歴史的に最も古く現れたものと考えてよい。…
…関節に可動制限のある際の日常生活上機能的に能率のよい肢位。各関節にはそれぞれ固有の可動域があり,それらの組合せによって総合的な運動が営まれている。…
…大多数の種類では骨格にキチン質の薄いところがあって,そこで体幹や体肢が折れ曲がるようになっている。これは一種の関節で,節足動物の名はここからきている。 軟体動物の大多数は体表に石灰質の貝殻を備えて体の保護をなす。…
※「関節」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
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