ルーブル美術館(読み)ルーブルびじゅつかん(英語表記)Musée National du Louvre

精選版 日本国語大辞典 「ルーブル美術館」の意味・読み・例文・類語

ルーブル‐びじゅつかん ‥ビジュツクヮン【ルーブル美術館】

フランス、パリにある国立美術館。建物はルーブル宮殿大部分を占める。フランソワ一世にさかのぼる歴代王室の収集品を基としてフランス革命後、一七九三年公開。ルーブル。「書記の像」「ミロのビーナス」「モナリザ」など、世界有数の美術品を所蔵。

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デジタル大辞泉 「ルーブル美術館」の意味・読み・例文・類語

ルーブル‐びじゅつかん〔‐ビジユツクワン〕【ルーブル美術館】

musée du Louvreルーブル宮殿内にあるフランスの国立美術館。1793年「諸芸術中央美術館」として開館。「ミロのビーナス」「モナリザ」をはじめとする数々の名作を所蔵する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルーブル美術館」の意味・わかりやすい解説

ルーブル美術館
るーぶるびじゅつかん
Musée National du Louvre

フランス、パリのほぼ中心、セーヌ川右岸に位置するルーブル宮殿内にある世界最大級の国立美術館。

 コレクションレオナルド・ダ・ビンチの保護者としても有名な16世紀のフランソア1世に始まる。その後歴代の王が蒐集(しゅうしゅう)を続け、とくにルイ14世治世下の財務長官コルベールの積極的な芸術振興政策によってコレクションは飛躍的に拡充した。王室コレクションをルーブル宮殿内で公開するという構想は啓蒙(けいもう)思想の影響のもとにすでに18世紀なかばに準備されていた。しかしそれが実現したのはフランス革命のさなか1793年であり、共和国の「中央美術館」と命名されて開館した。19世紀初頭には、「ナポレオン美術館」と改称され、ナポレオンがイタリアやエジプトなどへの遠征からもちかえったおびただしい戦勝品により、コレクションは一時飛躍的に増大したが、ナポレオン失脚後にその大部分がそれぞれの国に返還された。その後、政府による購入、個人コレクションの寄贈などがあいつぎ、充実したコレクションが形成され、2000年現在、その数は三十数万点を超える。また、来館者数は年間580万人にのぼっている。

 コレクションの内容は、(1)古代オリエント美術・イスラム美術、(2)古代エジプト美術、(3)古代ギリシア・古代エトルリア・古代ローマ美術、(4)彫刻、(5)工芸、(6)絵画、(7)グラフィック・アートの7部門および「ルーブルの歴史と中世の城砦(じょうさい)」から構成される。2004年にアジア、アフリカ、アメリカ、オセアニア美術部門が開設される。それぞれの部門は(1)『グデア像』、(2)『ルーブルの書記座像』、(3)『ミロのビーナス』『サモトラキのニケ』、(4)ミケランジェロの『奴隷』、(5)フランス王室の宝飾品、(6)レオナルド・ダ・ビンチの『モナ・リザ』、ルーベンスの『マリ・ド・メディシスの一代記』など、世界的名品を所蔵する。

 1981年、大統領ミッテランは「大ルーブル計画」を発表。15年以上にわたる工事を必要とするこの大改造は20世紀を締めくくる壮大なプロジェクトであり、これによりルーブル宮全体が美術館として生まれ変わった。1989年にはナポレオン広場中央に美術館への入り口として、イオ・ミン・ペイ設計の高さ21メートル、底面辺長33メートルのガラス張りピラミッドが完成した。また地下に残る中世の城砦の巨大な礎石も公開された。さらに開館200年を記念する1993年には、リボリ通り側のリシュリュー翼の旧大蔵省跡が美術館に併合され、常設展示面積が倍増した。1997年にはドノン翼とシュリー翼が再整備されるなど、ルーブルはその運営・展示を改善して近代化された美術館として変貌を遂げている。

 ルーブル美術館は古代から19世紀前半までの厖大(ぼうだい)なコレクションを収蔵するが、19世紀後半から20世紀初頭にかけての芸術作品はセーヌ川対岸のオルセー美術館に引き継がれている。なお、この美術館のあるパリのセーヌ河岸は1991年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。

[吉川節子]

『吉川逸治・堀米庸三編『世界の博物館10 ルーブル博物館』(1978・講談社)』『高階秀爾監修『NHKルーブル美術館』全7巻(1985~86・日本放送出版協会)』『吉川逸治総編集『ルーヴルとパリの美術』全8巻(1985~88・小学館)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルーブル美術館」の意味・わかりやすい解説

ルーブル美術館
ルーブルびじゅつかん
Musée du Louvre

フランス,パリにある国立美術館。正式には Grand Louvreといい,ルーブル宮殿の大部分を占める。フランス・ルネサンスの父と呼ばれたフランソア1世の時代に基礎がおかれ,ルイ13世ルイ14世,宰相ジャン=バティストコルベールらによって積極的な収集活動が行なわれた。これらのなかにはイングランド王チャールズ1世のコレクション,イタリア美術の最高の収集品とされたマントバ公のコレクションも含まれている。
フランス革命後,すべての王室コレクションは没収されてルーブル宮殿に移され,1793年に国立美術館として一般に公開された。ナポレオン1世も美術品の収集に関心を示し,征服した国々から多くの名品を戦利品として持ち帰り,そのためにルーブルは一時「ナポレオン美術館」と呼ばれたほどであった。これらの戦利品はナポレオンの失脚と同時に返還されたが,その後も活発な収集活動が続けられ,ロンドンの大英博物館やロシアのサンクトペテルブルグエルミタージュ美術館などと比肩する質量ともに世界最大のコレクションを誇っている。
古代文明から 19世紀半ばまでの作品を収蔵し,『ハンムラビ法典』『サモトラケのニケ』『ミロのビーナス』『モナ・リザ』など多くの傑作を含め,その数は 30万点以上に及ぶ。1980~90年代には大規模な増改築が行なわれ,アメリカ合衆国の建築家 I.M.ペイ設計の斬新な入場口「ガラスのピラミッド」が設置されたほか,1993年には開館200年記念事業として財務省が使用していた建物がリシュリュー翼として展示スペースに改築され,ルーブル宮殿全体が美術館として利用されることになった。

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百科事典マイペディア 「ルーブル美術館」の意味・わかりやすい解説

ルーブル美術館【ルーブルびじゅつかん】

パリのセーヌ川右岸,ルーブルLouvre宮殿内にあるフランスの国立美術館。ルーブル宮殿は,12世紀末に建てられた城砦を16世紀にフランソア1世が拡張し王宮としたもので,美術館として一般に開放されたのは1793年。現在の建物のプランはナポレオン3世時代に完成した。1981年から始まる〈グラン・ルーブル〉計画によって入口にガラスのピラミッドが完成(1989年),地下に売店を設けるなどさらなる拡張が試みられている。収蔵品は,フランソア1世以来の収集をもととし,ナポレオン1世の時に戦利品によって充実。レオナルド・ダ・ビンチの《モナ・リザ》,ルーベンスの連作《マリー・ド・メディシスの生涯》,《ミロのビーナス》《サモトラケのニケ》など19世紀以前の名品を多数収蔵し,世界屈指の大美術館として有名。
→関連項目印象派美術館オルセー美術館ギメ美術館ケ・ブランリ美術館パイオニオスパリパリのセーヌ河岸柳宗理

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改訂新版 世界大百科事典 「ルーブル美術館」の意味・わかりやすい解説

ルーブル美術館 (ルーブルびじゅつかん)
Musée National du Louvre

パリのセーヌ川右岸,ルーブル宮殿内に設置されたフランス国立美術館。《ミロのビーナス》《モナ・リザ》をはじめ広く知られた名作を数多く収集・展示する世界最大級の美術博物館の一つ。隣接するテュイルリー公園内のジュ・ド・ポーム・ギャラリー(いわゆる印象派美術館)はその直轄部門で,他に図書館,美術史・考古学の教育機関〈ルーブル学院École du Louvre〉も併設。行政的には,国立美術館総局Musées Nationaux de Franceが併置され,フランスの全国公立美術館を統括する。古代オリエント部,古代エジプト部,古代ギリシア・ローマ部,中世以降の彫刻からなる彫刻部,中世以降の絵画を収集する絵画部,宝石類をふくむ工芸部の主要6部門から成り,他に版画,素描の収集保存もなされている。フランソア1世時代以来の歴代の王室コレクション,とくにコルベール時代に飛躍的に増加した収集に起源をもつ。これらの王室所蔵品は,ルイ15世時代リュクサンブール宮殿で公開展示され,革命後の1793年8月10日,共和国美術館としてルーブル宮殿で公開された。従来の収集に加え,ナポレオン時代のエジプトからの将来品,その後の発掘品や購入品,寄贈が今日のルーブル美術館を形づくっている。なお,収蔵品の増大にともないルーブル美術館は近年改修が施され,中庭に新たにピラミッド風建築が造られるとともに,19世紀後半の美術品は,印象派美術館の所蔵品とともにセーヌ川対岸に1986年開館した,オルセー美術館Musée d'Orsayに移管された。
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世界遺産情報 「ルーブル美術館」の解説

ルーブル美術館

ルーヴル美術館は、パリのセーヌ川の右岸に位置し、13世紀末から19世紀中葉までのヨーロッパ絵画を約6000点保有しています。1793年にフランス共和国により設立され、ヨーロッパで最も古い美術館の1つに数えられます。コレクションは7つの部門に分かれており、 地中海沿岸の古代文明の黎明期から西洋中世前期を経て、 さらに19世紀前半までの作品を有し、正に百科事典のような性格を特徴としています。不朽の名作、ダ・ビンチの「モナ・リザ」をはじめ、ミロのヴィーナス、サモトラケのニケなど、著名な作品が数多くあります。

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世界大百科事典(旧版)内のルーブル美術館の言及

【博物館】より

…89年に始まったフランス革命は,博物館の歴史にも大きな影響を与えた。91年召集されたフランス国民公会は,王室の収集品をルーブル宮殿に収容して一般に公開することを布告し,93年に〈共和国美術館〉として開館した(ルーブル美術館)。また,94年には国立工芸博物館Musée du Conservaloire National des Arts et Metiers(現,国立技術博物館)が国民教育の場として公開された。…

【美術館】より

…美術館と博物館とは本来区別さるべき二つの概念であるが,しかし慣用的には両者は区別なく用いられることも多く,また実際,収集,陳列すべき対象の相違を別にすれば,施設,機関としての性格はほとんど変わらない。美術館という呼称はmuseum of fine arts,musée des beaux‐arts(フランス語),Kunstmuseum(ドイツ語)等に対応しているが,狭義の美術品(絵画,彫刻,工芸等)のほか,考古学的な遺物や武具,服飾品等も収蔵,展示しているルーブル美術館ウィーン美術史美術館などは,厳密には〈美術博物館〉ともいうべき性格をそなえている。これに対し,絵画のみを集めた美術館(絵画館)については,ギリシア語起源のピナコテカpinacoteca(イタリア語),ピナコテークPinakothek(ドイツ語)という呼称が使われることもある。…

※「ルーブル美術館」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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