狭義には標高一六九九・六メートルの安達太良山(乳首山・甑明神)をさすが、広義にはこれを主峰として連なる連山の総称。
「日本紀略」寛平九年(八九七)九月七日条に「授陸奥国坐正六位上飯豊別神、安達嶺禰宜大刀自神、安達嶺飯津売神並正五位上、従五位下小陽日温泉神正五位下」とみえるのが山名と神名の初見。これによると正六位上の飯豊別神である安達嶺の禰宜大刀自神と飯津売神は正五位上を授けられ、従五位下の小陽日温泉神は正五位下を授けられている。
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福島県のほぼ中央に位置する円錐状の火山。標高1700m。安達太郎山とも書くが,これは〈安達地方第1の山〉の意。東および南東麓の二本松市や本宮(もとみや)地方では乳首山または岳山,南西麓の猪苗代地方では沼尻山または硫黄山とも呼んでいる。安達太良山は鬼面山(1482m),箕輪山(1719m)とともに一つの火山群を形成し,その北方に位置する吾妻火山群(吾妻山)とは土湯峠で境されている。安達太良山には鉄山,矢筈森,船明神山などの外輪山によって囲まれた直径約500mの沼ノ平火口があり,西方の沼尻方面に大きく口を開いている。1900年の大爆発では,沼ノ平に長径300m,短径150m,深さ40mの新しい爆裂火口がつくられた。ここからの水は西方に火口瀬をつくり,沼尻川となって流下するが,途中溶岩の絶壁を落下して比高50mの白糸ノ滝を形成する。この爆発では火山灰や岩石片を吹きとばしただけで,溶岩の流出はなかったが,沼ノ平北東隅の硫黄製錬所は跡かたもなく吹きとび,82名が死傷した。
50年に指定された磐梯朝日国立公園の東部に位置し,山腹はカラマツ,ブナ,ダケカンバなどの林や各種の高山植物が豊富である。山麓には国民温泉の岳温泉をはじめ,塩沢,野地,鷲倉,横向,沼尻,中ノ沢など数多くの保養向きの温泉があり,これらの温泉は安達太良山への登山基地ともなる。また,岳,横向,沼尻の各温泉は冬季スキー客でにぎわう。《万葉集》巻十四に〈安太多良の嶺に臥す鹿猪(しし)のありつつも吾は到らむ寝処な去りそね〉とあるのをはじめ,高村光太郎の《智恵子抄》や宮本百合子の《播州平野》などにも登場する。
執筆者:水野 裕
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福島県中北部にある安山岩質の活火山。東側の二本松市などでは岳山(だけやま)、西側の猪苗代(いなわしろ)町では沼尻山(ぬまじりやま)とも称す。南北に続く和尚(おしょう)山(1602メートル)、主峰の安達太良山(1700メートル)、鉄(てつ)山(1709メートル)、箕輪(みのわ)山(1728メートル)、鬼面(きめん)山(1482メートル)などの諸峰の総称。有史以後の噴火は、鉄山の西側の沼の平火口(直径1キロメートル余、深さ約150メートル)での1899~1900年(明治32~33)の水蒸気爆発である。とくに1900年7月の大爆発では、火口内の硫黄(いおう)鉱山の従業員83人中、死者72、負傷者10人を数え、西側火口壁を破って硫黄川が流出した。沼尻温泉の湯元も火口付近にある。磐梯朝日(ばんだいあさひ)国立公園に含まれ、四季を通じ一般登山者にも容易に登れる。西側の沼尻、中ノ沢両温泉、東側の岳(だけ)温泉、北側の野地温泉などが登山基地で、冬は絶好のスキー場になる。高村光太郎の詩集『智恵子抄(ちえこしょう)』に「阿多多羅山(あたたらやま)」と歌われている。福島地方気象台が常時火山観測中である。
[諏訪 彰]
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