法界(読み)ホウカイ

デジタル大辞泉 「法界」の意味・読み・例文・類語

ほう‐かい〔ホフ‐〕【法界】

ほっかい(法界)」に同じ。
自分と何の縁故もない人。
「―の男ぢゃと思へば済むと」〈浄・重井筒
父母の命日などに無料で奉仕したり施しをすること。
「橋立の供養に人の群衆ぐんじゅして施餓鬼の飯は―のため」〈鷹筑波・四〉
法界悋気りんき」の略。
「―ではなけれど、あの男めにあったら女房をもたせて置くさへ腹たつに」〈浮・懐硯・三〉

ほっ‐かい【法界】

仏語
意識対象となるすべてのもの。
因果の理に支配される万有の総体。全宇宙
一切の現象の本質的な姿。真如しんにょ実相

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精選版 日本国語大辞典 「法界」の意味・読み・例文・類語

ほう‐かい ホフ‥【法界】

〘名〙
① =ほっかい(法界)②〔日葡辞書(1603‐04)〕
※浮世草子・懐硯(1687)三「法界(ハウカイ)ではなけれど、あの男めにあったら女房をもたせて置さへ腹たつに」
③ 自分とは何の縁故もない存在。
※説経節・説経苅萱(1631)上「かめいみつにさしかかり、ほうかいしゅじゃうとかきたむけ」
④ 亡き父母などの命日の供養のため、無料で奉仕すること、また、物を恵むこと。
※俳諧・鷹筑波(1638)四「橋立のくやうに人の群集して せがきのめしはほうかいのため〈直継〉」

ほっ‐かい【法界】

〘名〙 (dharma-dhātu の訳) 仏語。
① 十八界の一つ。法境のこと。意識の対象となるものすべてをいう。
大乗仏教で、全宇宙を法の現われと見、真如と同視する。真如そのもの。また、諸宗により理解に差があるが、本源的な法性としては真如、その差別的な現われとしては世界・宇宙の両義に用いる。ほうかい。
※続日本紀‐天平一五年(743)一〇月辛巳「尽国銅而鎔象。削大山以構堂。広及法界朕知識

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改訂新版 世界大百科事典 「法界」の意味・わかりやすい解説

法界 (ほうかい)

〈ほっかい〉ともいう。サンスクリットのdharma-dhātu。仏教用語としては種々の意味に用いられるが,もっとも重要なのは大乗仏教における意味である。すなわち,この全宇宙は全存在が互いにおかしあうことなく秩序を保って存在するから,また,全宇宙は正しく真理(法)のあらわれであるから,法界と呼んだ。さらに,このような存在,すなわち全宇宙の現実のありのままの相(すがた)と,全宇宙をしてそのようにあらしめているもの,すなわち真理を意味した。いいかえると,法界は現実界そのものと,真理・真如(しんによ)の両義を含んでいる。この法界はすべてのものが互いに因となり,縁(えん)となって現れているという意味で,〈法界縁起(ほつかいえんぎ)〉が説かれた。上述の意味とは別に,意識の対象となるものを法界(または法境(ほうきよう))ということもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法界」の意味・わかりやすい解説

法界
ほっかい
dharma dhātu

仏教用語。 (1) 法はかくあるべき真理であり,法界とはあるがままの事理であり,真如ともいわれる。界 dhātuは物体を構成する根本的な要素。このように法を根本的な要素とみなして,それを空観で基礎づけるところに仏教思想の特性がある。法界を理念として世界観を打立てたのは華厳宗である。法界を4つの観点からとらえて,差別のある現象界の事法界,宇宙のありようすべて真如であるとする理法界,現象界と実在とは一体不二であるとする理事無礙法界,現象界が一と多との無尽な縁起の関係にあるとする事事無礙法界の法界縁起をきわめ,四法界観とした。そのほか経論により三法界,地獄餓鬼などの十法界,観門十法界,密教十法界などの分類がある。 (2) 部派仏教時代には六根六境六識を合わせた十八界としたが,その一つとしての意識の対象を法界といった。これは狭義の法界である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「法界」の意味・わかりやすい解説

法界
ほっかい

仏教用語。サンスクリット語ダルマダートdharmādhātuの訳。(1)諸法の一分界という意。個別な、ものの世界のこと。たとえば「事法界」「十法界」などと使う。(2)意識の対象となるすべてのものという意。十八界の一つ法境のこと。(3)法の根源の意。聖道(しょうどう)を生み(因義)、諸法の根拠となる(性義(しょうぎ))もの(真如(しんにょ))のこと。大乗仏教では、宇宙間の全存在を法(真理)の現れとみて、真如、法身(ほっしん)と同義の語と解する。また、華厳(けごん)教学では、現実のありのままの世界(分義)と、それをそのようにあらしめているもの(性義)との、相即関係を示す場所の意として用いている。(4)決まり、定めの意。因果の理に支配される範囲のこと。

[池田魯參]

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普及版 字通 「法界」の読み・字形・画数・意味

【法界】ほうかい

万象。

字通「法」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の法界の言及

【法界】より

…仏教用語としては種々の意味に用いられるが,もっとも重要なのは大乗仏教における意味である。すなわち,この全宇宙は全存在が互いにおかしあうことなく秩序を保って存在するから,また,全宇宙は正しく真理(法)のあらわれであるから,法界と呼んだ。さらに,このような存在,すなわち全宇宙の現実のありのままの相(すがた)と,全宇宙をしてそのようにあらしめているもの,すなわち真理を意味した。…

【無縁仏】より

…供養されることがないのでつねに腹をすかせ,あるいは安らかな死が迎えられず,怨恨をもって迷っているため,たたりやすく,またこの世に害を与えるので,無縁仏には個人または集団でことあるごとにまつる必要があるとされた。中世の霊魂祭祀では,個々の無縁霊がもれないように,総括して法界,三界万霊,無縁一切精霊などと表現していた。民俗用語としては,現今,南九州・南島ではフケジョロ(外精霊),ウケジョロ(浮精霊),ホカドン(外殿),トモドン(供殿)など,紀ノ川沿いではお客ボトケ,兵庫県宍粟郡ではショウロサン(精霊様),岐阜県加茂郡では一切精霊様,壱岐ではサンゲバンゲ(三界万霊)などとよばれている。…

※「法界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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