炉の上に櫓(やぐら)をかけ布団で覆って暖を採る設備。炬燵,火燵,火闥,火榻などと書くが,日本での造語である。掘りごたつと置きごたつとあり,掘りごたつは囲炉裏から,置きごたつは火鉢から発達している。掘りごたつのほうが古く,室町時代に出現した。最初は,囲炉裏の火が〈おき〉になったときなどに上に櫓をかけ,紙子(かみこ)などをかぶせて,櫓に足をのせて暖めていたようだ。このため櫓も低く,形も櫓の上面が格子でなく簀の子になっていたようである。江戸初期には御所の中などにも掘りごたつが設けられている。大部屋用には大ごたつという長方形の大きなこたつもあった。これらのこたつは床(ゆか)を掘り下げた炉の周囲を石で囲み,木製の炉縁を入れて格子組みの櫓をかけたものである。元禄(1688-1704)ころになると一般にもかなり普及していたようで,大坂あたりではすでに既製品のこたつ櫓が売られている。置きごたつもこのころには出て来るが,これは掘りごたつにヒントを得たものらしい。当時,土火鉢という瓦製の安物の火鉢があり,こわれやすいために木箱に入れて使っていたが,これを櫓に変えて布団をかけるようにしたもののようである。また置きごたつの一種に行火(あんか)がある。櫓の代りにやきものや石で作った覆箱を用い,形はいろいろあるが,小型であることと火持ちがよいことから湯たんぽのように寝るときの暖房としてよく用いられた。こたつの発達をうながした最大の要因は,木綿生産の進展による木綿布団の普及と,木炭・たどんなどの燃料生産の増大であった。あくまでも内向きのものであったため,内弁慶のことを〈こたつ弁慶〉などともいう。こたつは近世,近代を通して庶民の重要な暖房具であったが,第2次大戦後は椅子座化が進み,炉の深い掘りごたつが主流になった。また昭和30年(1955)ころから電気ごたつに代わった。
執筆者:小泉 和子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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