平板な石材に画像を彫刻したもので,中国で建築物,墓室などの建材として使用された。画象石とも書く。時代は漢・魏が中心で,その後,南北朝・隋唐代に及ぶ。地上の建築物では石祠堂,石闕(せつけつ)の壁面などにみられ,地下のものでは墓室の石壁,石柱,楣石(まぐさいし),天井石と石棺にみられる。それらは同時代の建築である木造宮殿,邸宅,木造廟堂や闕にかざられた壁画,地下墓室の壁画,壁面にぶらさげられた帛画(はくが)の応用で,内容はほぼ同じである。特に墓室のものは被葬者の生前の生活が,死後も彼岸の世界である墓室内で同じように続けられると考えて,墓室内に生前と同じような生活用具を入れ,それと同時に,生前のもっとも光輝ある場面,すなわち車馬行列,宴楽,謁見などをはじめ,すべての生活に関係する場面を壁面にあらわした。また,地上の建築物の壁画にあって,座右の銘としたと思われる,儒教思想にもとづく忠臣・孝子・烈士・貞婦の図,孔子,老子などの図もみられる。このため画像石は当時の生活,風俗,思想を知るうえで重要な資料となっている。地上祠堂(武氏祠など)では中央正面にもっとも重要な拝礼図をおくなど,画像石にはその画像によりほぼ置かれる位置が定まっており,墓室では,門には門守像,門扉には鋪首と門守の代りをする動物像,門柱・門楣石には神霊界の奇怪な神獣・神仙の図と瑞獣像,前室壁には車馬出行や饗宴の画像,天井には日月星宿や瑞象の図がある。一部の画像石では画像のそばに傍題や紀年を刻した銘文があり,画題や製作年代を考える手がかりをあたえてくれる。
製作方法には次の六つがある。(1)石の表面を水磨きで平らにして,画像を線画のように陰刻にする。この場合は彩色された可能性がある。(2)画像の輪郭の内面をほり下げ,そこを平らにする。さらに画像のない地のところは垂直平行ののみ跡を一面につける。山東省の画像石に多い。(3)画像の輪郭の内部は平滑にし,外面の地のところを削りくぼめる。影絵風に画像を浮き上がらせる浮彫風のレリーフとは区別される。精巧なものでは画像にこまかい毛彫(針彫)が加わり,なかには画像の人物の目や鼻を線刻でなく,筆がきによって表現したものもある。(4)画像の輪郭の外面に,平行線ののみ跡を斜めに施す。(5)画像の面を水磨きせず粗彫の跡をのこす。(6)半肉彫で画像を浮き出させるもので,画像の細部に線刻を加える。
画像石は山東省にもっとも多く,全省域でみられる。そのほかでは,山西,河南,陝西,甘粛,四川,江蘇,安徽,湖北の各省に及んでいる。画題,表現様式,技法にはこれらの地方において差がある。
画像石に類するものに画像塼がある。これは画像,文様を細泥でつくられた塼の表面にスタンプしたり,型づくりしたもので,戦国時代末期から前漢代初期にかけての空心塼からはじまって,六朝時代の文様塼にいたるまである。後漢代の四川地方(蜀)でつくられた墓室壁面をかざったものや,南京付近の南朝墓での竹林七賢図などは特に有名である。
執筆者:杉本 憲司
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