大腸炎(読み)だいちょうえん(英語表記)colitis

翻訳|colitis

精選版 日本国語大辞典 「大腸炎」の意味・読み・例文・類語

だいちょう‐えん ダイチャウ‥【大腸炎】

〘名〙 大腸に起こる炎症。主症状は下痢で、腹痛を伴うことがある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「大腸炎」の意味・読み・例文・類語

だいちょう‐えん〔ダイチヤウ‐〕【大腸炎】

大腸の炎症。急性と慢性とがあり、細菌性のものは急性の場合が多い。下痢・腹痛・粘血便などの症状がある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「大腸炎」の意味・わかりやすい解説

大腸炎 (だいちょうえん)
colitis

大腸の炎症。外部からの刺激作用に対する生体の応答の表現で,いろいろな病気が含まれる。病理学的には,急性・慢性カタル性(この場合を大腸カタルという),出血性,壊死性,偽膜性,化膿性などの病変がある。消化管全般にわたる炎症の部分的な現象として現れたり,また独立して大腸に現れたりする。特異性大腸炎と原因不明の非特異性大腸炎に分けられ,特異性のものとしては,細菌性赤痢,粘膜侵入性大腸菌,腸管出血性大腸菌(O-157),カンピロバクター腸炎,大腸結核症,淋菌性直腸炎,クラミジア直腸炎,大腸放線菌症,アメーバ赤痢,日本住血吸虫症,バランチジウム症などがあり,非特異性の大腸炎としては,潰瘍性大腸炎,大腸クローン病(肉芽腫性大腸炎),非特異性(単純性)結腸潰瘍,ベーチェット病,放射線照射性大腸炎,大腸憩室炎,虚血性大腸炎,偽膜性大腸炎,抗生物質惹起性大腸炎,尿毒症性大腸炎などがある。炎症の部位による分類では,盲腸炎虫垂炎,左半結腸炎,区域性大腸炎,S状結腸炎,直腸炎,小腸大腸炎,全大腸炎などがある。炎症の時期による分類では,急性と慢性に分けられ,急性炎症は細菌,ウイルスまたは原虫などの炎症性因子により起こり,慢性炎症は特異性のものとして大腸結核症など,非特異性のものとして潰瘍性大腸炎,大腸クローン病などがある。従来いわれていた便通異常(下痢や便秘)を主とする慢性大腸炎は,その多くは過敏性大腸症候群に相当する病態である。欧米でいう特発性直腸結腸炎は潰瘍性大腸炎と同義である。症状は,原疾患により異なるが,下痢や軟便などの便通異常と腹痛を呈し,発熱を伴うものもある。診断は,病歴の分析,糞便潜血反応,虫卵検査,細菌学的検査および顕微鏡検査,大腸X線検査,大腸内視鏡検査,腸生検などによる。治療は各疾患によって異なる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大腸炎」の意味・わかりやすい解説

大腸炎
だいちょうえん
colitis

大腸の炎症性疾患の総称で、多種多様の疾患を含み、いろいろな分類法がある。(1)発病期間によって急性と慢性に分けられるが、区別はかならずしも明確でない。普通、数か月に及ぶものは急性大腸炎とはよばない。急性大腸炎の多くは感染性大腸炎であり、慢性大腸炎は潰瘍(かいよう)性大腸炎やクローン病など非特異性大腸炎の場合が多い。(2)部位や広がりによって、びまん性と限局性に分ける。びまん性大腸炎は潰瘍性大腸炎、限局性大腸炎はクローン病や腸結核がそれぞれ代表例である。(3)感染の有無からは、感染性と非感染性に分ける。感染性大腸炎は細菌性赤痢、腸チフスサルモネラ腸炎など、細菌感染による急性大腸炎がほとんどであるが、腸結核やアメーバ症などでは慢性の経過をとる。(4)病因が明確であるかどうかによっては、特異性と非特異性に分けられる。特異性大腸炎は病因の明確なものの総称で、腸結核、細菌性赤痢、サルモネラ腸炎などが含まれる。非特異性大腸炎は病因が不明で、特発性大腸炎ともよばれ、潰瘍性大腸炎やクローン病が代表例である。(5)このほか、子宮癌(がん)の放射線治療後にみられる難治性の放射線性大腸炎、抗生物質投与による菌交代現象で生ずる大腸炎、動脈硬化症や糖尿病などに併発する虚血性大腸炎、食中毒による感染性大腸炎などがある。

 主症状は下痢で、腹痛や発熱を伴うことが多い。糞便(ふんべん)の細菌学的検査、大腸内視鏡検査、注腸X線検査などで診断される。

[吉田 豊]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「大腸炎」の意味・わかりやすい解説

大腸炎【だいちょうえん】

大腸粘膜の炎症。大腸カタルとも。消化管炎症の部分的現象として起こることが多く,下痢,腹痛などを呈する。原因は細菌やウイルス,原虫などの感染,消化不良,食中毒,抗生物質の使用による菌交代症などで,食事療法が必要。潰瘍(かいよう)性大腸炎は大腸に多くの小潰瘍を生じる原因不明の病気で,下痢便に血液や粘液が混じる。治療は鎮痛薬サルファ剤副腎皮質ホルモン剤投与など。→腸炎
→関連項目痔瘻赤痢腸捻転腹痛

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大腸炎」の意味・わかりやすい解説

大腸炎
だいちょうえん
colitis

大腸カタル。大腸の炎症で,部位によって盲腸炎,虫垂炎,S状結腸炎に区別される。細菌による感染性のもの,抗生物質で起るもの,大腸の血流障害によるものなど,原因はさまざま。症状は原因により異なるが,下痢と大腸に沿った圧痛があり,索状物を体外から触知できる。小腸炎との差は,便中に粘液が混じらないで表在する点にある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「大腸炎」の解説

大腸炎

 病変が主に大腸にある腸炎.下痢や下腹痛を起こすことがある.アメーバ性,細菌性,虚血性のものがあり,クローン病でも起こる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android