ロンドン動物園(読み)ロンドンどうぶつえん(英語表記)London Zoo

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロンドン動物園」の意味・わかりやすい解説

ロンドン動物園
ロンドンどうぶつえん
London Zoo

イギリスロンドンウェストミンスター地区にあるリージェント公園北端部に位置する動物園。世界で最も多くの種類の動物を保有する動物園の一つで,動物園付属施設としては最大の図書館を併設する。ロンドン動物学協会が運営している。1828年に開園し,1830年にウィンザー城から王室所有の動物が,続いてロンドン塔からそこで飼育されていた動物が加わって増強された。1849年には世界初の爬虫類館が,また 1853年には初の一般市民向け水族館も開館した。第2次世界大戦中は深刻な被害を受け,動物は殺処分疎開を余儀なくされたほか,食用になる魚は市民の食料にまわされた。1955年,再建事業が始まると歩道橋ゾウ舎とサイ舎,ウォークスルー形式の鳥舎,動物病院が 10年のうちに次々と建設された。1967年には小型哺乳類展示館が完成し,1972年には類人猿サルの展示館であるソベルパビリオンも開館した。このパビリオンにはジャイアントパンダ舎や動物研究センターも入っている。1994年には,1938年に設置された夏季こども動物園が再開された。15万m2敷地に数千点の動物を飼育展示しているほか,シフゾウをはじめ,コビトカバジャコウウシチリーフラミンゴホッキョクグマなどの繁殖でめざましい成功を収めてきた。有名なジャイアントパンダのチチは 1958年に中国からやって来た。1931年,ロンドン動物学協会は郊外の分園として,セントラルベッドフォードシャーダンスタブルにウィップスネード動物園を開園した。面積 240万m2の広大な敷地で,多数の動物の展示と繁殖が行なわれている。同園にはロンドン動物学協会の後援を受けた二つの主要な研究組織,ウェルカム比較生理学研究所とナフィールド比較医学研究所が入っている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロンドン動物園」の意味・わかりやすい解説

ロンドン動物園
ろんどんどうぶつえん
London Zoo (The Zoological Society of London)

ロンドン動物学協会により1828年にイギリス、ロンドン市のリージェント・パーク内に開園された動物園。当初はGardens of The Zoological Societyという名称で、会員とその友人だけが入園できるものであった。1847年から平日のみはだれもが入園できるようになり、日曜も開放されたのは1940年のことである。ロンドン動物学協会は1826年に設立され、1829年には国王ジョージ4世により「動物学の振興と動物界の新しく珍しい事実を紹介する」ための協会として認められた。当時のイギリス王国の力を借りて、世界各地の動物が収集展示された。哺乳(ほにゅう)類と鳥類だけでなく、動物界のすべてを紹介するため、爬虫(はちゅう)類館(1849)、水族館(1853)、昆虫館(1881)を世界で初めて建設した。2002年末の飼育動物は495種4856点で、このほかに163種9009点(推定)の無脊椎(むせきつい)動物と、19種の家畜家禽(かきん)がいる。面積は15ヘクタール。1931年には、より自然に近い状態での展示を目ざして、郊外に分園のホイプスネード動物公園(260ヘクタール)を開園した。ホイプスネード動物公園の飼育動物は149種2880点で、このほかに家畜11種に加え、31種295点(推定)の魚類と、26種70点(推定)の無脊椎動物がいる。

[祖谷勝紀]

『G・ヴェヴァーズ著、羽田説子訳『ロンドン動物園150年』(1972・築地書館)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ロンドン動物園」の意味・わかりやすい解説

ロンドン動物園 (ロンドンどうぶつえん)
Zoological Society of London

ロンドンにある動物園。探検家であり博物学者でもあったT.S.ラッフルズやJ.バンクスの尽力で設立されたロンドン動物学協会は,〈動物学および動物生理学の進歩および動物界における新しいものを紹介する〉目的で,1828年にリージェント公園内にロンドン動物園を開設した。これは動物園が一部の特権階級のものであったそれまでの流れに終止符を打ち,一般市民の動物に対する正しい認識を広めようとする近代化の一歩であった。展示法も従来の見世物的な檻(おり)を,動物の習性とみやすさの両面から改良し,近代動物園のパイオニアとしての役割を果たしてきた。園内の施設として爬虫類館,水族館,昆虫館が開設されたが,いずれも世界初の試みとして成果をあげ,その後の動物園界に多大な影響をもたらした。面積約15ha。また研究所と図書館を所有しているが,近年経営上の問題から規模が縮小されている。一時,動物園も閉鎖される危機にあったが,国際的な寄付金によって維持されている。《国際動物園年鑑》《動物命名表》をはじめとする雑誌や単行本の刊行は続けられている。なお,動物園を意味するzooということばは市民がロンドン動物園の略称として用いたThe Zoologicalがさらに略されたもので,それがやがて動物園そのものを示すことばに変わってきたものである。
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世界大百科事典(旧版)内のロンドン動物園の言及

【動物園】より

… こうした事実と成果は世界の注目を集め,各国からこれを見にきた。たとえばイギリスのT.S.ラッフルズはこれに刺激され,後年ロンドン動物園を開設するために動き出したと推定されるし,万国博参加のために日本からやってきた田中芳男や福沢諭吉もこれを見学し,やがて日本に動物園をつくるときにここの印象を基にしたと考えられている。 つまり動物園という啓蒙施設はこのメナジュリーを原型として,19世紀にヨーロッパやアメリカに広がり飛躍的な発展を遂げるのである。…

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