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サル サル Sarh

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

サル
サル
Sarh

旧称フォールアルシャンボー Fort-Archambault。チャド南部の都市。モアイヤンシャリ県の行政庁所在地ンジャメナ南東約 490km,シャリ川沿岸に位置。ワタ栽培地帯の中心都市で,織物,綿花加工などの工場があり,漁業も行われる

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サル
サル
monkey

広義には哺乳綱霊長目のなかのヒト以外の動物の総称である。食虫類から進化したもので,より原始的体制をもつキツネザルなどの原猿亜目と,類人猿 (ゴリラテナガザルなど) および狭義のサル類 (新世界ザル旧世界ザル) を含む真猿亜目に分けられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

サル
さる / 猿
monkeyape

哺乳(ほにゅう)綱霊長目中ヒトを除いた部分non-human primatesに対する一般呼称。狭義には、類人猿、原猿類をも除き、オマキザル、オナガザル2上科に属する種を総称することもあるが、一般名であるから厳密な限定はない。英名のモンキーmonkeyは尾の長いサルをさし、尾がないか極端に短いものつまりtailless monkeyをエープapeとよぶ。[伊谷純一郎]

分類

原猿類と真猿類の2亜目に大別される。前者は、メガネザル、ロリス、キツネザルの3下目5科からなり、後者は、オマキザル、オナガザル、およびヒトニザルの3上科中ヒト科を除いた4科からなる。これらはさらに、55属、約180種に分けられる。[伊谷純一郎]

起源

サルは、第三紀暁新世中期に食虫目のような下等な哺乳類から分岐したと考えられている。最初の化石群は、この時期の北アメリカ・ロッキー山脈沿いから出土するが、始新世にはユーラシアに広く分布を広げ、原猿類の繁栄期を迎える。次の漸新世の地層から出土するサル類の化石はきわめて少ないが、エジプトのファイユームの化石群のなかには現生のショウジョウ科の祖型が知られている。中新世には、ショウジョウ科、オナガザル科、オマキザル科がそれぞれ独自の進化を遂げ、鮮新世の初頭にはヒト科の祖型が現れる。[伊谷純一郎]

特徴

他の哺乳類と異なり、樹上に適応することによって独自の生活空間を獲得し、その進化の過程で大きな成功を収めたグループであるといってよい。したがって、霊長類がもつ基本的な特徴は、樹上への適応に関係のある諸形質である。すなわち、これらの諸特徴は、樹上での目測を誤らないための目と、樹上での活動を保証する手足の発達に集約されているといえる。まず、両眼は顔の両側から前面に移行し、両眼の視野の交差部分が広くなり立体視が可能になる。暁新世の原猿には、眼輪の閉じていないものがあるが、始新世の原猿、そしてそれ以降のサル類はすべて閉じた眼輪をもつ。ただメガネザルを除く原猿類は、側頭窩(そくとうか)と眼窩が通じているが、メガネザル類と真猿類のすべては完成された眼窩をもっている。このような目の構造の変化に伴って、鼻口部の短縮がおこり、機能的にも嗅覚(きゅうかく)依存型から視覚依存型へと移行し、大脳皮質部の相対的な発達の基盤をなしている。鼻口部の短縮は歯式によく現れており、原始的な哺乳類の歯式の基本型は

の44本であるが、すべてのサル類はこれより少なく、オナガザル科とショウジョウ科では

の32本となっている。
 ショウジョウ科とオナガザル科では、手足の指のつめはすべて平づめになっている。それ以外のものも、幾対かの平づめをもっている。手足の母指と他の指との対向が可能となり、把握や食物などの保持ができるようになっている点も重要な特色である。また、前肢はしだいに単なる歩行器官から解放され、手として完成されてゆく。手のひらは裸出し、指掌紋が発達する。鎖骨が発達し、腕の回転が自由になる。
 このほか、産子数の減少、妊娠期間の長期化、寿命の延長、表情そしてコミュニケーションの発達、社会構造の複雑化などをあげることができる。サル類は、動物界でもっとも進化を遂げた種と、きわめて原始的な種を同時に含む。このこと自体もこのグループの大きな特色であるといわなければならない。[伊谷純一郎]

分布

サルは、新旧両大陸の赤道を中心に分布を広げている。メガネザルは、フィリピン、ボルネオ島、スマトラ島に分布する。ロリス類は、アジアではインドとインドシナ半島、スマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島に、またアフリカではサハラ砂漠以南の森林、疎開林、サバンナに広範な分布をみせる。キツネザル類は、マダガスカル島とコモロ諸島の特産である。原猿類は、第三紀暁新世と始新世には北アメリカ大陸やヨーロッパで適応放散し多くの化石が知られているが、両大陸は現在ではサル類とは無縁の地になっている。オマキザル類は、アマゾン川・オリノコ川流域を中心とする南アメリカ大陸と、北はメキシコ南部までの中央アメリカに分布し、そのために新世界ザルの名でもよばれる。オナガザル類の分布は、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸、アラビア半島の一部、およびインド半島以東、チベット、中国の中南部、東南アジアの島々、そして日本の本州北端にまで達する。モルッカ諸島以東、ニューギニア、オーストラリア、朝鮮半島、琉球(りゅうきゅう)列島、そして北海道には分布しないし、サル類の化石も知られていない。ショウジョウ科のオランウータンはボルネオ島とスマトラ島に、テナガザル類はインドシナ半島を中心に、西はアッサム、北は中国南部、そしてスマトラ、ジャワ、ボルネオの各島に分布する。アフリカの類人猿であるゴリラ、チンパンジー、ボノボは、いずれもアフリカの熱帯林に分布している。サル類の分布の北限を占めるのはニホンザルで、青森県下北(しもきた)半島の北緯41度30分、南限を占めるのはチャクマヒヒで、アフリカ南端の南緯34度30分である。[伊谷純一郎]

生態

サル類の故郷が熱帯の多雨林であることは、その分布によく示されている。原始的なものほど熱帯多雨林の中に閉じこもっているが、オナガザル類になると森林から脱出する種も目だつようになる。アフリカやアラビア半島ではサバンナ、草原、半砂漠にさえすむようになった種がいるし、アジアではヤセザル類がヒマラヤの森林限界に達し、またニホンザルのように多雪地帯にすむようになった種もいる。このような熱帯森林からの脱出と分布の拡大は、地上性の獲得と無関係ではない。原猿類と新世界ザルはすべて樹上生活を営むが、旧世界のオナガザル類では、コロブスとアフリカのオナガザル属(グエノン)が主として樹上生活者であるのに対して、パタスモンキー、マカック、ヒヒなどは地上性の傾向が強い。類人猿では、テナガザルとオランウータンが純粋な樹上生活者、アフリカの3種は半地上・半樹上性といってよい。サル類のなかには、樹上生活への適応のために形態的な特殊化を示すものが知られている。新世界ザルのオマキザル、クモザル、ホエザルの3亜科は、把握力をもつ尾が第五の足としての機能を果たし、尾を枝に絡めてぶら下がることができる。また、クモザルやアフリカ産のコロブスは、手を鉤(かぎ)状にして枝から懸垂するが、手の母指は退化して痕跡(こんせき)だけになってしまっている。フクロテナガザルとクロステナガザルの足の第3・第4指は、皮膜によって癒着したようになっている。テナガザルとオランウータンの極端に長い腕も、樹上での枝渡りに適した特殊化であるといえる。
 原猿類のうち、メガネザル、ロリス、コビトキツネザル、アイアイは夜行性であり、マングースキツネザルは朝夕に活動する薄暮性、その他の大型のキツネザル、インドリ、シファカは昼行性である。真猿類では、中央・南アメリカのヨザルを唯一の例外として、他はすべてが昼行性である。
 夜行性の原猿類には、単独生活者で雑食性のものが多い。果実や樹脂などの植物食のほかに、昆虫やクモ、トカゲなどの小動物を捕食する。それに対して、昼行性の原猿類は植物食に偏している。サル類の食性の原型は、偏りのない雑食性が基本であり、偏食はそれから派生した食性と考えられるが、雑食と偏食は、原猿類のみならず真猿類の各系統群にも並行してみられる。新世界ザルでは、マーモセット類とフサオマキザルが雑食であるのに対して、クモザルは果実食、ホエザルは葉食と偏食化している。オナガザル類では、マカック、ヒヒなどが雑食であるのに対して、コロブスやヤセザルはリーフ・イーターleaf eaterともよばれる偏食主義者である。ショウジョウ科でも、オランウータンは果実食に偏し、ゴリラは葉、茎などの植物食に偏しているのに対して、テナガザル、ボノボ、チンパンジーは雑食である。近年の野外研究によって、チンパンジーは、あらゆる種類のサル、小形のレイヨウやノブタの子などを捕食していることが明らかにされた。アリ、シロアリなどの昆虫類にも強い嗜好(しこう)を示す。アリやシロアリの捕食には、木の枝などの道具を用いることも知られている。
 夜行性の原猿類のうち、ガラゴ、アイアイなど単独行動をする種のなかに、巣をつくるものが知られている。コビトキツネザルやロリスなどは、木の洞穴などをねぐらにする。真猿類中唯一の夜行性の種ヨザルも、集団でまとまって木のうろに潜り込んで日中を過ごす。これらの種にとって巣はねぐらであり、生活の中心になっている。彼らは日中は巣の中に潜んで眠り、夜間は巣を抜け出して自分の縄張りをパトロールして採食に専念し、朝になるとまた巣に戻ってくる。巣づくりの習性をもっているのは、それらのもっとも下等なサルたちと、もっとも高等な大形類人猿だけである。オランウータン、チンパンジー、ボノボ、ゴリラは、毎夕その夜を過ごすための新たな巣をつくる。これは巣というよりもベッドとよんだほうがよいであろう。チンパンジーのベッドは、樹上で枝を折り曲げてつくられる杯状のもので、その上に体を横たえて夜を過ごすが、わずか3、4分で完成する。ゴリラは、樹上よりも地上で草本を束ねるようにしてベッドをつくることが多い。その他の昼行性のサル類は巣づくりの習性をもたない。彼らは集団のまとまりを保って縄張りの中を遊動し、毎夕たどり着いた所で巣をつくることなしに夜を過ごす。ただ、縄張りの中に幾か所かの決まった泊まり場をもつものもある。テナガザルは1、2本の特定の巨木を、ニホンザルは険しい斜面や尾根を、マントヒヒやゲラダヒヒは断崖(だんがい)を泊まり場としている。遊動生活に巣づくりを兼ね合わせているのは大形類人猿だけである。[伊谷純一郎]

社会

もっとも原始的なサルは、集団をつくらない。このような種社会は、単独行動をする雌雄の各要素からなっており、多くは短い交尾期間中にそういった雌雄が出会って交尾をし、また単独の生活に戻る。雌は子を哺育するが、その期間も短く、やがて子は雌親から離れて単独の生活に入る。このような社会をもつ種では、性差がほとんどみられないのが特色である。コビトキツネザル、アイアイ、ロリスの仲間がこのような社会をもっている。
 夜行性の原猿類のなかにも集団をつくるものがある。セレベスメガネザルは、雌雄各1頭とその子からなるペアの集団をつくっている。この型の集団は、サル類の単位集団のなかでもっとも原初的なものであり、真猿類においても同型の集団は各系統群にみることができる。昼行性の原猿類では、インドリとシファカがこれと同じペアの単位集団をもっている。この構造が維持されるためには、ペアの間で生まれた子は、雌雄ともに、性的成長に達するまでに生まれ育った出自集団を離脱しなければならない。こうして集団を離れた若い雌雄が新しいペアを形成すると考えられる。
 昼行性の原猿類のうち、キツネザル属に含まれる種は、複雄複雌のよりサイズの大きい集団をつくっている。この型の集団の維持機構は、おそらくオナガザル類にみられる母系の社会に近いものであろう。この型の集団と、前記のペア型の集団との関係は明らかにされていないが、これら2型は、サル類の社会集団の基本をなすものであり、真猿類の各種も、これらいずれかの社会形態をもち、あるいはより高度な発達を遂げたものも、そのいずれかの系譜を引いていると考えることができる。
 原猿類の社会行動にみられる顕著な特色の一つは、マーキング行動である。原猿類の多くは、上腕、耳下、腋下(えきか)、鼠径(そけい)部などに皮脂腺(せん)をもっており、それを木の幹などに塗り付ける。このような皮脂腺をもたないものは、自分の尿や糞(ふん)でマーキングを行う。自分よりも劣位の個体や雌にマーキングをするといった例も知られている。この行動は一種の縄張り行動で、原猿類が嗅覚に依存した生活を営んでいることを知ることができる。真猿類になると、オマキザル類に若干同様の行動を認めることができるが、オナガザル類ではほとんどこの行動はみられなくなる。
 新世界ザルのゲルディモンキー、ヨザル、ティティ、サキ、ヒゲサキなどはいずれも小型の多夫一妻、単婚などの集団をもっており、それに対して、リスザル、ウアカリ、オマキザル、クモザル、ウーリークモザル、ウーリーモンキー、ホエザルは複雄複雌のより大型の集団をもっている。オマキザル科の社会は単婚かあるいは雌雄とも集団を出入りする双系の社会をもつものが多いが、フサオマキザルは母系の社会を、またクモザル類は父系の社会をもつことが近年の研究で明らかになった。クモザルの単位集団は、チンパンジーの社会にみられるような離合集散を繰り返すことが知られている。ホエザルはのどに音声を共鳴させる袋をもっており、群れ間で相互に大声をあげて接触を避け、縄張りを防衛する。
 オナガザル類は、メンタウェールトンとブラザモンキーがペアの集団をもつことが知られている。また、アカコロブスは双系の集団をもつ。それ以外のすべての種は、単雄複雌あるいは複雄複雌の母系的な単位集団をもつ。このことから、これら母系的な単位集団はペアに由来すると考えられるが、その機序は明らかにされてはいない。単雄複雌の集団は、アフリカのオナガザル属、コロブス属、東南アジアのラングール属などの樹上性の種に多くみられ、それに対して複雄複雌の集団は、マカック属、ヒヒ属など、地上性または半地上・半樹上性の種に認められる。しかし、ハイイロヤセザルなどでは地域によって両型が認められ、また雄の子は性的成熟までに出自集団を離脱し、単位集団は母系によって継承されるという点では、両型の基本構造は共通しているといわなければならない。集団を離れた雄は単独行動者として、あるいは雄グループを形成してより広範囲を行動し、やがて他の集団に接近してその成員になる。
 単雄複雌の集団は普通20頭未満とそのサイズが小さいのに対し、複雄複雌の集団は30~60頭といったより大きなサイズをもち、ときには数百頭に達する例も知られている。後者においては、雄間、そして雌間に、直線的な安定した順位が認められる。また、血縁集団間にも安定した順位があり、同年に生まれた子の間では、血縁集団間の順位が踏襲される。雄間の直線的な順位にはいくつかの分節が認められ、最高位の1~数頭をリーダーとよぶ。リーダー・クラスの雄は雌たちとともに群れの中心部に位置して群れの統制にあたり、より若い雄たちはそれを取り囲んで群れの周辺部を形成するという空間的配置をとる。帯状になって移動するときにも、行列の先頭と後尾にはこれらの若い雄たちが位置する。
 ニホンザルについての長期にわたる研究によって、集団内では血縁間の交配が避けられていることが明らかにされてきた。とくに1親等、つまり母と息子、2親等、つまり兄妹、弟姉、祖母と孫息子などの間柄には交尾が認められない。これまでに少数の例外的な記録がありはするが、統計的にみても近親婚は避けられているといってよい。さらにそれに加えて、ほとんどすべての雄は出自集団を離脱し、近親の雌とは社会的な距離を置くことになるから、近親婚はさらに確実に避けられているわけである。
 一方、単雄複雌の集団では、雄が1頭だけであるために父と娘の間に近親婚がおこる可能性があるが、実は雄が一つの集団に雌たちとともに生活する期間は4、5年であるために、結果的に避けられているわけである。ハイイロヤセザルでは、単雄複雌の集団のほかに、雄だけからなる集団がみられ、ときおり後者は前者に攻撃を加え、雄のすげ替えがおこる。このあと新しい雄は、雌たちが抱いている子を殺し、やがて雌たちは発情を開始して新しい雄と雌たちとのつながりができるという過程をたどるのであるが、この社会変動を機に若い雄たちの離脱と子殺しによる消失などで集団のサイズはもとの約半数に減って新たな出発を迎えることになる。この現象は、単雄複雌の構成をもついくつかの種でみられている。
 オナガザルの母系的な社会の一部に、重層の構造をもつものが知られている。ゲラダヒヒの単位集団は、単雄複雌の普通数頭からなる集団であるが、これがいくつも集まって、200~400頭といったハードherd、つまり地域集団を形成して遊動する。またマントヒヒは、一つの単位集団のなかに、いくつかの単雄複雌の構成をもつ下位集団をもち、さらにこのような構造をもつ単位集団がいくつも集まって休眠集団をつくる。
 類人猿の社会は、種ごとに多様な構造をもっているが、そのいずれもがオナガザル類のような母系的な社会をもっていないという点で共通している。テナガザルの単位集団は典型的なペアの集団であり、子は雄も雌も性的成熟までに出自集団を離れる。オランウータンは、真猿類中唯一の単独行動者で単位集団をもたない。ゴリラは、平均10頭ばかりの単雄複雌の集団をもつが、雌が集団間を移籍することが認められている。ゴリラの単位集団は家父長的な雄が死亡すると、雌たちは単独行動をする雄や近隣の集団の雄に奪われるから、結局継承されることのない集団であるといえる。チンパンジーとボノボの単位集団はともに複雄複雌で、前者は平均40頭程度、後者は80頭程度のサイズをもつ。集団は縄張りをもち、集団間は互いに接触を避け合っているが、雌は性的成熟に達すると隣接する集団に移籍する。両種とも雄の移籍は認められていない。チンパンジーでは、集団内の雄間に強い結合がみられる。ボノボの隣りあった遊動域をもつ二つの集団は、ときに一時的に融合し、異なる集団に属する個体間で平和裏に社会的交渉が交わされる。チンパンジーには、これまでに十数例の子殺しと共食いがみられ、犠牲者の大半が雄の子であることが知られているが、この理由は明らかにされていない。[伊谷純一郎]

研究・実験

サルの研究は、20世紀後半に入って急速に盛んになったが、現生のサルを対象にして人間性の究明を目ざすという目的と、医学、薬学、神経生理学、心理学などの実験動物としての必要性が高まったためである。1960年以降は、各国に霊長類研究所がつくられ、わが国においても、1956年(昭和31)に財団法人日本モンキーセンターが、また1967年には京都大学霊長類研究所がともに愛知県犬山市に設立された。前者は、90種を越える生きたサルを収集、飼育、展示し、世界一の規模を誇っているし、後者には、分子生理、社会生態、行動神経、進化系統の4部門とそれに含まれる10分野が設置されている。また、日本モンキーセンターは国際学術雑誌『Primates』と、一般誌『モンキー』を刊行している。また、日本霊長類学会は、1985年に発足した。[伊谷純一郎]

飼育

サルの飼育は、種によって難易の度は異なるが、多くが熱帯産であり、なかには特殊化した食性をもつものがいるので、一般的に困難であるといってよい。また、幼児期には扱いやすくても、成長後は行動の制御が困難になるなどの点も留意しておく必要があろう。ニホンザルは保護動物であるから、自由に飼育することは許されていない。サルは人間と共通の病気をもち、またとくに熱帯から輸入されたものは、ウイルス、細菌、寄生虫など、まだ十分に解明されていない病原をもつものがあるので注意を要する。一般の家庭では飼育しないほうがよい。[伊谷純一郎]

人間との関係

人間との類似性から、サルはすべての動物のなかでも特殊な位置を与えられてきた。すなわち、サルは動物と人間あるいは自然と文化の中間に置かれ、このことは、世界中の神話や儀礼のなかに登場するサルのさまざまな性格を説明している。
 多くの民族がサルに関しては一種の逆進化論を語っており、サルはいわば退化した人間と考えられている。たとえばメキシコのアステカの創世神話では、原初に激しい嵐(あらし)がおこって人々を吹き飛ばすが、風に運ばれた人々も生き残った者もサルになったといい、これは人間が変身したものと考えられている。マヤ系インディオのキチェの神話集『ポポル・ブフ』のなかでも、サルは創造主が最初に木でつくった人間の末裔(まつえい)であると語られている。彼らは顔をつぶされ破壊されてしまったが、その子孫はいまもなお森の中に住んでいると信じられている。またチアパス高原では、サルは悪と混沌(こんとん)の象徴とされ、女たちが男の誘惑に負けたりすると、それはサルのせいだとされる。この否定的な性格は、同地のカーニバルに現れて、いたずらの限りを尽くす道化のサルにも受け継がれている。ボルネオ島先住民のダヤクでも、創造主が人間をつくろうとした際の失敗作が、オランウータンやサルの祖先だと語られている。
 しかし、サルはつねに否定的な性格を負わされているわけではない。バビロニアやエジプトではサル(ヒヒ)は月の神と同一視され、とくにエジプトでは太陽神を出迎える従者としてのサルの像が多数残されている。このサルは太陽神の仲間であるとともに、知恵の神や書記、学者の守護神ともされている。東アフリカの王権神話では、王となる人物がしばしばサル(コロブス属)に結び付けられ、ケニアの農耕民メルでは白黒2色のコロブスモンキーが神聖視されている。インドでも神聖な動物とされ、アッサム地方の山地農耕民ガロでは共同体の供犠にサルを用いる。またインドネシア、スマトラ島北部の民族集団バタックでは、人間とサルの祖先が同じであると考え、食べることを禁じている。このほかマダガスカル島でも、サルを殺したり捕らえたりすることをタブーとし、死んだサルは埋葬するという。[加藤 泰]

民俗

日吉神社(ひえじんじゃ)(山王権現(さんのうごんげん))の神使(しんし)とされるサルは、山の神としても尊ばれた。猿神信仰もみられ、また庚申信仰(こうしんしんこう)に基づく「見ざる、聞かざる、言わざる」を表した三猿塔(さんえんとう)(庚申塔)を立てることも広く行われている。群馬県利根(とね)郡片品(かたしな)村では、旧暦9月の申(さる)の日に猿追祭が行われ、サルに扮(ふん)した人が幣帛(へいはく)(神への奉納物)を担いで武尊様(ほだかさま)というお宮の周りを三度逃げ回る。これを櫃元(ひつもと)、酒元(さかもと)という祭役が追うが、サルが追い詰められるとその年は豊作という。また、サルは子供の無事を祈る願掛けとしても信仰されるため、妊婦の安産を守るという子安地蔵にくくり猿を奉納したり、子供の背守りにサルをつける風習もある。
 サルを厩(うまや)に飼う風習は海外にもその例がみられ、わが国では鎌倉時代に厩にサルを置いたことが、橘成季(たちばなのなりすえ)編『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』(1254)巻20にみられる。蒼前神(そうぜんしん)はウマを保護する神として信仰されているが、厩の祭りには、猿曳(さるひ)きがこの神を祀(まつ)って『勝善経(そうぜんきょう)』を誦(しょう)し、サルを舞わせたという(猿屋伝書)。
 狩猟者は、サル(去る)ということばを使うのを嫌い、ヤマノヒト、エテモン、キムラなどの山ことばを用いるが、岩手県遠野地方では、年を経たサルは毛に松脂(まつやに)を塗り込んでいるため、鉄砲の弾も通らないといって恐れる。サルは昔話の主人公として登場することも多く、『猿蟹合戦(さるかにがっせん)』『猿婿入り』『猿の生肝(いきぎも)』などがよく知られている。[大藤時彦]

文学

上代の文献から数多くみえ、『日本書紀』皇極天皇(こうぎょくてんのう)の巻にも登場する。『万葉集』巻3には大伴旅人(おおとものたびと)の酒を讃(ほ)むる歌のなかに、「あな醜賢(みにくさか)しらをすと酒飲まぬ人をよく見ば猿にかも似む」の一例がある。『懐風藻(かいふうそう)』など漢詩に用例が多く、『和漢朗詠集(ろうえいしゅう)』下「猿」に「猿の叫び三声暁峡(みこゑけうかふ)深し」(紀長谷雄(きのはせお))とあるように、暁方(あけがた)の峡谷で悲しげに三声鳴き旅情をかき立てる、というのが類型化していたようである。和歌の用例はあまり多くはないが、「ましら」「まし」などの形で詠まれ、『古今集』雑躰(ざってい)に「わびしらにましらな鳴きそあしひきの山のかひある今日にやはあらぬ」(凡河内躬恒(おおしこうちのみつね))の歌があり、『古今六帖(ろくじょう)』や『紫式部集』などにもみえる。『枕草子(まくらのそうし)』には人間の比喩(ひゆ)として2例用いられている。御伽草子(おとぎぞうし)や草双紙(くさぞうし)などにも昔話に取材した猿の話がいくつかある。俳諧(はいかい)では芭蕉(ばしょう)の「初しぐれ猿も小蓑(こみの)をほしげ也(なり)」(猿蓑)が有名。[小町谷照彦]
『伊谷純一郎編『人類学講座2 霊長類』(1977・雄山閣) ▽杉山幸丸著『サルの百科』(1996・データハウス) ▽西田利貞・上原重男著『霊長類学を学ぶ人のために』(1999・世界思想社)』

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