[1] 〘自マ下一〙 つ・む 〘自マ下二〙
① せまる。前方がつまる。行きづまる。また、窮する。
身動きがとれなくなる。
※今鏡(1170)九「ならはせ給はぬ御ありさまに、御かうぶりのひたひもつむる心ちせさせ給」
② きまった場所に控える。出仕する。出勤する。また、おしかける。
※東寺百合文書‐に・文明一四年(1482)正月日・丹波大山荘陣夫注文「日数十九日とん田へつむる分」
[2] 〘他マ下一〙 つ・む 〘他マ下二〙
① 物をすき間に入れて、空所のないようにする。
(イ) 物をいっぱいに押し入れて動けなくする。ゆるみをなくす。また、物を入れてその場所をふさぐ。
※落窪(10C後)二「打ち叩き、押し引けど、内外につめてければ、ゆるぎだにせず」
(ロ) 物を入れて満たす。いっぱいにする。〔
日葡辞書(1603‐04)〕
(ハ) (「息をつめる」の形で用いて) 呼吸の流れを止める。
※
即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉猶太の翁「息を屏
(ツ)めて覗ひ居たり」
② 身動きができないような状況に至らせる。
(イ) きびしくせまる。攻め寄せる。
※宇治拾遺(1221頃)二「脇の門より走入るを、やがてつめて、走りかかりければ」
(ロ) 対処できないような状況に追い込む。ゆきづまらせる。「問いつめる」「言いつめる」のように他の動詞と複合しても用いる。
※米沢本沙石集(1283)一〇本「小禅師にてありし時も人をつめしが、当時も人をつむるやとぞ申されける」
(ハ) 議論、疑問の検討などを最終段階にまで押し進める。
※
石山本願寺日記‐証如上人日記・天文五年(1536)一一月一二日「殊申事には、此儀雖可詰覚悟候、却而御機嫌をも不存候間、先令上洛以連々可申候」
(ニ) 物事の奥儀、真髄などを追究する。
※随筆・槐記‐享保一四年(1729)三月二二日「又これほどとつめて、それより先はきわまりなき芸もあり」
(ホ) それ以上考えが及ばないような点に至る。「思いつめる」「考えつめる」など。
③ そのことにかかりきる。絶えずする。つづけてする。根(こん)をつめる。
※仮名草子・恨の介(1609‐17頃)上「君に添へ奉りて、
我が身はつめての御奉公は申さず、時時の
御見舞」
④ 短くする。ちぢめる。
(イ) 長さを短くする。
※
風姿花伝(1400‐02頃)二「老いぬればとて腰膝をかがめ、身をつむれば、花失せて、古様にみゆるなり」
(ロ) 規模を小さくする。特に家計などを倹約する。切りつめる。
※
浄瑠璃・夕霧阿波鳴渡(1712頃)中「男のさがをあらはすまいとずいぶん
わしが身をつめ、三度つける油も一度つけ」
※玉塵抄(1563)二二「真乗はせうとよめたぞ。せっとつめはせられぬぞ」
⑤ 狂言で、一曲を終わりにする。
※虎明本狂言・饅頭(室町末‐近世初)「ああしなひたりしなひたり ともつむる、たらしめがやるまひぞやるまひぞといふておいこみにもする」
⑥ (②から転じて)
(イ) 将棋で、相手の王将を逃げ道のないように包囲する。
※俳諧・犬子集(1633)一五「ならぬ間そたのみなりける さか馬にいられて後はつめにくし〈貞徳〉」
(ロ)
囲碁で、自分の地
(じ)を広げながら、相手の石に迫って石を打つ。〔
壒嚢鈔(1445‐46)〕
⑦ ドアなどに指などをはさむ。
⑧ 謝罪やかたい約束のしるしに指を切り落とす。多く、博徒・てきや仲間、または、遊里での
心中立てなどに行なわれる。
※流人島にて(1953)〈
武田泰淳〉「指を
一本つめてもらひたいんだ」