アウトサイダー(読み)あうとさいだー(英語表記)outsider

翻訳|outsider

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アウトサイダー」の意味・わかりやすい解説

アウトサイダー
あうとさいだー
outsider

一般的には、一定の社会関係が成立している場合に、その範囲外にある人々ないし集団を、主としてその範囲内にある者(インサイダーinsider)の立場からいうときに用いられる。本来は、局外者、門外漢、下品な人、勝負事に勝ち目のない競争者、競馬で人気のない馬をさす英語。

 たとえば、いくつかの企業がカルテル、トラスト、同業組合を組織している場合、その協定に参加せず、その統制の外部にあって競争的立場にある企業は、アウトサイダーである。労働組合の場合は、企業の外に出ている組合を意味する。イギリス、アメリカの労働組合は、職業あるいは産業を同じくする労働者が企業を超えて組織され、全国組合の強い統制のもとに置かれている。これは、日本の支配的な企業別組合と大きく違う点である。日本でアウトサイド組合とは、労働組合法の手続に参加することができない法外組合をいう。

 社会学では内集団に対し外集団out-groupに含められる。二つの異なる社会や文化、あるいは時代的変化の過渡期において、どちらにも決定的に属しえずにはみだした集団は、境界的存在としてアウトサイダーの性格をもつ。たとえば、村内で村八分にされた人、変動期に生きる青年の世代はその例である。アウトサイダーは特定の集団に拘束されないという点で、事象を客観的にみ、そのような視点から独特の創造性を発揮することもあるが、他面、逸脱行動をとりやすい傾向をもつ。

[高島昌二]

哲学上のアウトサイダー

既成の価値観や世界観のうちにとどまることなく、その枠組みの外に出て、自由な立場から物事を根本的に問い直し、批判する人を哲学的な意味でアウトサイダーという。古代ギリシアにおいて「愛知」を説いたソクラテスはまさしくそういう人であった。彼は、たいせつなのはただ生きるのではなく、「よく生きる」ことであるとし、それがいかなることであるかを徹底して追究しようとした。その点で彼の生き方は一般の人々のそれと異なっており、人々から「風変わりな人」とみられた。古来優れた哲学者は大なり小なりアウトサイダーであったといえる。現代社会において表面的には豊かな物質と自由に恵まれたかにみえる大衆が、実際にはさまざまな言説や流行に押し流されて、無責任な平均人、世間人と化しつつあるとき、むしろ局外にたち、冷静な目で物事の本質を根本的に問い続ける人こそ、得がたいアウトサイダーであろう。

[稲垣不二麿]

『コリン・ウイルソン著、福田恆存・中村保男訳『アウトサイダー』全二巻(1975・紀伊國屋書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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