日本大百科全書(ニッポニカ) 「モザイク卵」の意味・わかりやすい解説
モザイク卵
もざいくらん
動物の卵のうち、卵のどの部分が将来、体のどの部分になるかが非常に早くから決定され、それらの各部分がモザイクのように配置されていると考えられる卵をいう。卵の各部分の運命が周囲との関連において徐々に決められると考えられる卵、すなわち調節卵に対する概念である。モザイク卵では卵割初期に分離された割球は、体のある限られた部分、器官しかつくらない。これに対し調節卵では、分離された割球は小さいながらも完全な体をつくることができる。かつては、動物の胚(はい)発生における各部分の発生運命の決定の機構をめぐって、卵がモザイク卵であるか、調節卵であるかが大問題であった。しかし現在ではモザイク卵は、発生運命の決定に関して特別な性質をもつ卵というより、卵の各部分の発生運命が比較的早くから決定されている卵、という意味で使われている。
[竹内重夫]