アラ(読み)あら(英語表記)ara

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラ」の意味・わかりやすい解説

アラ
あら /
ara
sawedged perch
[学] Niphon spinosus

硬骨魚綱スズキ目ハタ科ハタ亜科に属する海水魚背びれ棘(きょく)が13本あることで、11本をもつほかのほとんどのハタ族と区別され、アラ族に含められる。太平洋側では北海道から、日本海側では青森県から九州南岸、東シナ海、中国、朝鮮半島南岸、台湾、スル海などに分布する。大阪地方でホタ、高知地方でオキスズキとよばれている。体はやや長く側扁(そくへん)し、体高は体の中央部でもっとも高い。吻(ふん)はやや長くてとがる。上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下に達する。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁は鋸歯(きょし)状で、隅角(ぐうかく)部にある大きな棘は後方に突出する。主鰓蓋骨の上部に3本の棘がある。背びれ棘部と軟条部の間は深くへこむ。鱗(うろこ)はきわめて小さく、側線有孔鱗(ゆうこうりん)数は84~93枚。幼魚には、吻端から目を通り尾部後端に達する灰褐色の縦帯があり、背びれ軟条部の前部、および尾びれに2個の大きな黒斑(こくはん)がある。成長につれてこれらの斑紋は不明瞭(ふめいりょう)となる。沖合いの水深70~360メートルの沿岸から大陸棚の縁辺の岩礁域や砂底域にすむ。全長は1メートルほどになる。初冬から春までが漁期で、延縄(はえなわ)や一本釣りで漁獲される。深海性の大形魚だけに、一本釣りはその豪快さが釣り人に人気がある。餌(えさ)はサバサンマイカなどの切り身を用いる。幼魚は底引網で漁獲される。白身の高級魚で、冬季は肉に脂肪がのり、刺身、鍋物(なべもの)、蒸し物にすると美味である。

[片山正夫・尼岡邦夫 2020年6月23日]


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改訂新版 世界大百科事典 「アラ」の意味・わかりやすい解説

アラ (𩺊)
Niphon spinosus

スズキ目スズキ科の海産魚。北海道からフィリピンまで分布する。多くの地方でアラ,関西でホタ,中国地方の各地でイカケ,長崎・熊本でスケソウなど地方により多くの呼名がある。体型は細長くスズキに似るが,体色は背部は茶褐色で腹部は白色である。背びれは2基で,吻(ふん)は長くてとがり,歯は絨毛状で犬歯状の歯がない。成魚は沿岸のやや深い岩礁域にすむが,幼魚は砂泥底からも得られ,体側に3本の明りょうな褐色縦帯がある。この縦帯は成長とともに不明りょうになる。全長1mに達する。魚類,甲殻類などを食べる。産卵期は地域により多少異なるが,5~9月である。成魚は釣りで漁獲される。冬季がしゅんでちりなべなどにして喜ばれる。なお,近年その分類学上の位置に問題のあることが指摘されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アラ」の意味・わかりやすい解説

アラ
Niphon spinosus

スズキ目ハタ科の海水魚。全長約 1m。幼魚の体形はスズキに似る。体の背面は褐色で,腹部は白い。幼魚には吻端から尾柄まで暗色縦帯があり,尾鰭両葉および背鰭軟条部に大きな暗色斑があるが,成長するにつれてともに不明瞭になる。大陸棚縁辺の岩礁底などにすむ。北海道南部以南,東シナ海,フィリピン近海に分布する。

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百科事典マイペディア 「アラ」の意味・わかりやすい解説

アラ

スズキ科の魚。地方名ホタ,イカケ,タラ,オキスズキなど。スズキに似ているが口がややとがり,前鰓蓋(さいがい)骨に後方に向かう1本の鋭いとげがある。背面は灰青色,腹面は白色。全長1mに達する。日本〜フィリピンに分布し,やや沖合の岩礁部にすむ。冬美味。

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