ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウルフ」の意味・わかりやすい解説
ウルフ
Wolfe, Thomas Clayton
[没]1938.9.15. メリーランド,ボルティモア
アメリカの作家。ノースカロライナ大学在学中演劇に興味をもち,引続きハーバード大学で演劇を専攻。のちニューヨーク大学で教鞭をとり,またヨーロッパを旅行したりして,1926年初めて小説に手を染めたが,これが最初の自伝的小説『天使よ故郷を見よ』 Look Homeward,Angel (1929) になった。まもなく教職を辞して,続編『時と川について』 Of Time and River (35) を発表,さらに自己の生涯を素材としながら意識的に「客観的」手法をとった膨大な原稿を書上げたが,生前には出版にいたらなかった。この遺稿は『くもの巣と岩』 The Web and the Rock (39) ,『汝再び故郷に帰れず』 You Can't Go Home Again (40) として出版され,前2作とともに,一つの壮大なアメリカの叙事詩,飢えにとりつかれたようにすべてを吸収しようと放浪を続ける精神の自伝的大河小説を構成する。ほかに,短編集『死から朝へ』 From Death to Morning (35) ,創作論『ある小説の物語』 The Story of a Novel (36) など。
ウルフ
Wolfe, Tom
[没]2018.5.14. ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカ合衆国の小説家,ジャーナリスト。フルネーム Thomas Kennerly Wolfe, Jr.。ワシントン・アンド・リー大学卒業後,エール大学で博士号取得。雑誌『ニューヨーク』や『エスクワイア』などに寄稿し,ジャーナリズムの一線で活躍する一方,ビート,ヒッピー,イッピー,幻覚剤などの流行を素材にし,俗語,隠語,新語を駆使したサイケデリックな文体を特徴とする『クール・クール LSD交感テスト』The Electric Kool-Aid Acid Test(1968)などの小説を書いた。また筆者の主観を重んじ,さまざまな形式を用いて現実を伝えようとするニュー・ジャーナリズムの旗手として,アンソロジー『ニュー・ジャーナリズム』The New Journalism(1973)を共編。ほかに宇宙飛行士の記録『ザ・ライト・スタッフ』The Right Stuff(1979),『虚栄の篝火』The Bonfire of the Vanities(1987)など。
ウルフ
Woolf, (Adeline) Virginia
[没]1941.3.28. サセックス,ロドメル
イギリスの女流作家。評論家 L.スティーブンの娘。 1912年同じ「ブルームズベリー・グループ」の L.ウルフと結婚した。初期の『ジェーコブの部屋』 Jacob's Room (1922) あたりから伝統小説のプロットや性格概念に対して実験的再検討を試み,『ダロウェー夫人』 Mrs. Dalloway (25) や『灯台へ』 To the Lighthouse (27) などで刻々と移り変る人物の「意識の流れ」を叙述していく方法を確立,さらに時間に対する新しい概念をこめた『オーランドー』 Orlando (28) や象徴的な『波』 The Waves (31) などによって,現代小説の技法確立に大きな貢献をした。ほかに,女性らしい感受性に満ちた評論集『一般読者』 The Common Reader (2巻,25,32) ,夫の編集による『作家の日記』A Writer's Diary (53) がある。第2次世界大戦中に自殺をとげた。
ウルフ
Wolfe, James
[没]1759.9.13. ケベック
イギリスの軍人。「四十五年の反乱」の鎮圧戦に参加,スコットランド軍勤務 (1749~52) ,パリ駐在武官 (52~53) ,アイルランド駐留軍主計総監 (57~58) を歴任。七年戦争が始ると,1758年その一局面をなす北アメリカ大陸のフレンチ・アンド・インディアン戦争に従軍,ルイスバーグ攻略戦で武勲をあげ,いったん帰国。翌年ケベック攻略軍司令官になり,重傷を負いながら指揮を続け,同市攻略成功の報に接したが戦死。
ウルフ
Woolf, Leonard (Sidney)
[没]1969.8.14. サセックス,ロドメル
イギリスの評論家。ケンブリッジ大学に学び,雑誌編集者となる。「ブルームズベリー・グループ」に加わり,1912年 L.スティーブンの娘バージニアと結婚,17年出版社ホガース・プレスを設立。『帝国主義と文明』 Imperialism and Civilization (1928) などの評論のほか,全5巻の自伝 (60~69) がある。
ウルフ
Wolfe, Humbert
[没]1940.1.5. ロンドン
イギリスの詩人。官吏として労働省に勤務しながら詩作した。『ロンドン・ソネット集』 London Sonnets (1920) から『戦時のケンジントン・ガーデン』 Kensington Gardens in Wartime (40) にいたる多くの詩集のほか,自伝や論集『対話と独語』 Dialogues and Monologues (28) がある。
ウルフ
Wolfe, Charles
[没]1823.2.21. コーク
アイルランドの牧師,詩人。有名な詩篇『サー・ジョン・ムアの埋葬』 The Burial of Sir John Moore (1817) の作者。
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