デジタル大辞泉
「波」の意味・読み・例文・類語
なみ【波】[書名]
《原題The Waves》ウルフの小説。1931年刊。6人の幼なじみたちの独白により構成された実験的な作品。
山本有三の長編小説。男女の運命的な結びつきと親子の関係を描く。昭和3年(1928)朝日新聞に連載し、翌年刊行。
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は【波】
- 〘 接尾語 〙 ( 一(いち)、三(さん)、四(よん)などにつくときは「ぱ」となる ) 波のように、繰り返される行動や動きなどを数えるのに用いる。
- [初出の実例]「翌日、機動隊は第二波をかけてきよった」(出典:階級(1967)〈井上光晴〉五)
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普及版 字通
「波」の読み・字形・画数・意味
波
常用漢字 8画
[字音] ハ
[字訓] なみ・なみだつ・うごく
[説文解字]
[字形] 形声
声符は皮(ひ)。皮に表面の、うねうねとつづくものの意がある。〔説文〕十一上に「水涌きてるるなり」とするが、水流の動揺することをいう。(派)と声義近く、は分流することをいう。
[訓義]
1. なみ、なみだつ。
2. うごく、ゆれる。
3. わきながれる、うるおす。
4. 波のように他に及ぶ。
5. 書法で、右下に斜めにひらくこと。捺、。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕波 ナミ・シワ・セク・ツツミ・ヒタス・ナコロ・カタフク 〔立〕波 ヒタス・ツツミ・ナミタツコト・ナミノアヤ・ミヅノゴトク
[語系]
波・播・簸puaiは同声。播・簸(は)は波だつようにゆり動かし、あげおろしする行為をいう。・pheも同系の語で、水が分流し、脈動するように流れることをいう。
[熟語]
波影▶・波官▶・波間▶・波及▶・波▶・波光▶・波痕▶・波際▶・波散▶・波上▶・波心▶・波神▶・波水▶・波声▶・波折▶・波扇▶・波▶・波底▶・波濤▶・波盪▶・波▶・波動▶・波靡▶・波風▶・波面▶・波文▶・波紋▶・波瀾▶・波乱▶・波流▶・波累▶・波路▶・波浪▶
[下接語]
一波・偃波・煙波・遠波・横波・波・音波・恩波・回波・寒波・眼波・巨波・驚波・金波・銀波・傾波・鯨波・激波・光波・江波・洪波・香波・細波・周波・秋波・小波・衝波・水波・青波・清波・晴波・千波・素波・滄波・蒼波・大波・波・短波・波・電波・波・濤波・脳波・白波・万波・微波・風波・奔波・翻波・余波・揚波・瀾波・陵波・緑波・淪波・弄波
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波 (なみ)
wave
静かな水面に小石を投げ込むと,石の落ちた所を中心に波が輪のように広がっていく。この現象は次のように理解される。小石が水面にあたるとそこがへこみ,その分,そのまわりの円周上で少し盛り上がる。重力の作用で水面は平面になろうとして中心部では上昇し,まわりの盛上りは下降するが,水平面で止まらずに行き過ぎて振動を起こす。この振動は次々にそのまわりを巻き込んでいく。このように振動が次々に伝わっていく現象が波であり,ある瞬時をとると,水面は中心からまわりへと交互に凹凸に連なった,いわゆる波形となっている。このようにある媒質(水)に,その平衡状態(水面が平面となっている)を乱すような作用(小石を投げる)を及ぼしたとき,平衡状態に戻そうとする力,すなわち復元力(重力)が働き振動を始め,その状態が周囲に広がっていく現象を一般に波または波動と呼ぶ。
このような現象は広く見られ,音,光,電波なども波の一種である。これらを通じた波としての一般的な性質については〈波動〉の項目を参照されたい。また海の波は一般に周期,波長,その成因などから潮汐,津波,高潮,波浪などに分けられ,復元力の違いから表面張力波(さざ波),重力波などに分けられる。それぞれの項目を参照されたい。このほか地震動も地球を伝わる波(地震波)によって起こされたものであるし,気象に大きな影響を与える偏西風波動(大気大循環)なども,大気に起こる波である。
執筆者:寺本 俊彦
波 (なみ)
山本有三の長編小説。1928年(昭和3)7~11月《朝日新聞》に連載,29年朝日新聞社刊。〈妻〉〈子〉〈父〉の3部から成る。作品の主題は,息子が自分の子か他人の子かという悩みを持つ小学校教師見並行介の人生を描き,子どもは社会の子,全人類の子として育てるべきだというところにある。その揺れ迷う行介の心理を軸に,幼な妻と医学生,新しい女性と行介,子どもの反抗期・思春期と次々に起きる事件を描き,巧みな構成のもとに,行介の精神的な成長がくりひろげられていく。初出以後次々に表記に手が加えられ,漢字の使用を少なくし平易に改められており,作者の漢字制限論者としての立場もそこに知ることができる。
執筆者:浅井 清
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波
なみ
wave
池に石を投げると,水の表面に円形の波紋が広がっていく。このように,1つの場所に起った変動が次々に他の場所に伝わる現象を波または波動といい,波を伝えるものを媒質という。しかし,どんな波でも,ただ媒質の変動の状態が伝えられるだけで,媒質そのものが一貫して移動するわけではない。波のなかには,空間を伝搬せず,各点で異なった振幅で振動する波もある。これを定在波または定常波という。定在波に対して,空間を伝搬する普通の波を進行波と呼んで区別する。波には横波と縦波がある。横波は媒質の点の変位方向が波の伝搬方向に対して垂直になっているもので,電磁波はこの例である。縦波は変位方向が伝搬方向と一致するもので,空気中の音波はこの例である。縦波は疎密波とも呼ばれる。同じ時刻に同じ状態,すなわち同じ位相にある媒質の連続した点を結んでできる面を波面という。波面が平面である波は平面波,球面である波は球面波と呼ばれる。光でいえば,平面波は平行光線に対応し,球面波は点光源から出て四方八方に広がっていく光線に対応する。波面が自分自身に垂直な方向に進む速さを位相速度といい,単に波の速さといえばこれをさす。隣合う2つの波面の間の距離を波の進行方向に沿ってはかった長さを波長という。波の振動数を ν ,波長を λ とすると,位相速度 u は u=λν で与えられる。波の形はどんな形でもよいが,特に媒質の各点が単振動をする場合が重要である。このような波を正弦波という。波が満足する微分方程式を波動方程式という。 (→波浪 )
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波(山本有三の小説)
なみ
山本有三(ゆうぞう)の長編小説。1928年(昭和3)7月から11月まで『朝日新聞』に連載。「妻」「子」「父」の三部構成で、翌年2月に朝日新聞社刊。小学校教師見並行介(みなみこうすけ)は、売られた芸者屋から逃げ出してきた教え子君塚きぬ子と過失を犯し、責任感から結婚する。が、彼女は医学生と出奔し、連れ戻されるものの、男の子を生んで死んでしまう。遺児進(すすむ)が自分の子かどうかに悩んだすえに、やがて彼は、子供は私有物ではなく、社会の子であり人類の子なのだという考えにたどり着く。繰り返し打ち寄せる荒波のように、「あやまち、迷い、愛し、苦しみ、争い、疲れつつ、死んでいく」人生にあって、なお誠実に生きることの意味を問いかけた、求道的な作品。
[宗像和重]
『『定本版 山本有三全集5』(1976・新潮社)』
波(wave)
なみ
wave
空間や物体の一部に加えられた状態の変化が、次々に周囲の部分にある速さで伝わっていく現象。海の波、池の水面に広がる波紋、船の航跡に生ずる波などについては「波浪」の項で述べる。また、つるまきばねを伝わる縦波、音波・電磁波・光波・弾性波などについては「波動」の項で述べる。
[飼沼芳郎]
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波【なみ】
(1)→波動(はどう)(2)水の波。静止状態から乱された液体がもとの水平面の状態にもどろうとするために起こる波。波の速度がおもに重力できまる重力波と,おもに表面張力できまる表面張力波がある。
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波〔映画〕
1952年公開の日本映画。監督:中村登、原作:山本有三、脚色:大木直太郎、中村登、撮影:生方敏夫。出演:佐分利信、桂木洋子、淡島千景、津島恵子、笠智衆ほか。第7回毎日映画コンクール男優主演賞(佐分利信)受賞。
波〔雑誌〕
株式会社新潮社が発行する文芸・書誌PR誌。1967年、季刊誌として創刊。現在は月刊。2012年5月号からは、Web版の「波 -E magazine Nami-」も公開している。
波〔曲名〕
ボサノヴァのスタンダード曲「ウェーブ」(アントニオ・カルロス・ジョビン作)の邦題。
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世界大百科事典(旧版)内の波の言及
【ウルフ】より
…この間,神経症の治療と自作の発表機関をつくるため,1917年手刷り印刷機を買い,夫とともに小出版社ホガース・プレスをつくり,マンスフィールド,T.S.エリオットの作品も出版した。次いで,エリザベス朝で16歳の少年,20世紀には36歳の女性という両性具備の主人公の形で,彼女の内的世界を表現した《オーランドー》(1928),男女6人の内的独白のみを連ねたきわめて象徴的な作品《波》(1931),比較的伝統的な形で中流階級の一家の18世紀から現在に至る姿を描いた《歳月》(1937),《幕間》(1941)などを完成したが,第2次大戦中の41年3月入水自殺した。 彼女はまた第1次大戦後の文学の理論的旗手として,人間の内面,その魂を直接描くことを主張し,《普通の読者》2巻(1925,32),《大佐の死床》(1950),《花コウ岩と虹》(1958)などにまとめられた文芸評論を発表しているが,男女問題についても,《私自身の部屋》(1929),《三ギニー》(1938)などの先駆的名著がある。…
【海】より
…[海底堆積物]
[海水の運動]
海水の運動は種々雑多であるが大別してほぼ定常的なものと,だいたい一定の周期をもって繰り返すものがある。前者に属するものは[海流]で,後者に属するものには[潮汐]による潮浪,潮流,湾の振動(セイシュ)および[津波],[風浪],[うねり],内部波などがあり,日常生活に短期間周期の影響を与える。 海流によって気温,水温,塩分などの分布が支配され,またそれに従って気候,風土,生物などの分布が定まり,文明までがその影響を受けたと考えられる。…
【エネルギー資源】より
… 同様に,太陽が地球表面にもたらすエネルギーは世界のエネルギー消費量の約3000倍と推計されている。 このほか,自然のエネルギー源には,風力,波力,潮流,海水中の温度差等があり,また光合成による[バイオマス]もある。バイオマスは,エネルギーとしてより,食糧資源として重要であるが,一部は直接エネルギーに利用される。…
【波動】より
…水面の波は,だれもが見慣れた波動現象の一例である。このほか音,光,電波などの波動にわれわれはつねに取り囲まれている。…
【波浪】より
…水面波のなかで,海面,湖面などに日常みられる風浪,うねり,およびそれらが岸近くの浅海で変形した磯波を総称して波浪という。すなわち波浪は,おもに風の力が原因となって生成される周期や波長の短い水面波で,[潮汐],[津波],[高潮]などの波とは,周期や波長,成因などの点から区別される。…
※「波」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」