エボラ出血熱(読み)エボラシュッケツネツ(その他表記)Ebola hemorrhagic fever

デジタル大辞泉 「エボラ出血熱」の意味・読み・例文・類語

エボラ‐しゅっけつねつ【エボラ出血熱】

エボラウイルスの感染による、致死率の高い急性の感染症。突然の発熱・脱力感・筋肉痛・頭痛・のどの痛みなどに始まり、嘔吐・下痢、腎機能や肝機能の低下がみられ、さらに悪化すると出血しやすくなる。発症した患者の血液・体液・排泄物などに接触することで人から人へ感染する。潜伏期間は2日から3週間。エボラウイルス病EVD(Ebola virus disease)。EHF(Ebola hemorrhagic fever)。
[補説]名称は、ザイール(現コンゴ民主共和国)のエボラ川近くに住む患者からウイルスが発見されたことに由来。1976年以降、中央アフリカ諸国でしばしば流行が確認されている。

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共同通信ニュース用語解説 「エボラ出血熱」の解説

エボラ出血熱

エボラウイルスが原因の感染症で、致死率が高いことから感染症法で一番危険な病気に分類されている。血液や体液を介してうつる。主な症状は発熱や頭痛など。必ずしも患者が出血するわけではないことから、海外では最近「エボラウイルス病」と呼ばれる。コンゴ(旧ザイール)で流行しており、世界保健機関(WHO)は7月、ウイルスが地理的に広がる恐れがあると緊急事態を宣言した。

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精選版 日本国語大辞典 「エボラ出血熱」の意味・読み・例文・類語

エボラ‐しゅっけつねつ【エボラ出血熱】

  1. 〘 名詞 〙 ( エボラは Ebola コンゴ川の支流の名に由来 ) 死亡率の高いウイルス性疾患で、感染症法では最も危険な1類感染症の一つ。症状は、風邪のような高熱と頭痛から始まり、血管が破れ、血が固まらず、吐血や下血、口内出血など全身から出血する。重いと数日で死亡する。血液感染のため、患者の血液に触れなければ二次感染はおこらない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エボラ出血熱」の意味・わかりやすい解説

エボラ出血熱
えぼらしゅっけつねつ
Ebola hemorrhagic fever

エボラウイルス(Ebola virus:EV)に感染することによって発症する急性ウイルス性感染症。エボラウイルスは空気感染することはなく、感染者の血液や体液および排泄(はいせつ)物などに直接触れたり、それらに汚染された注射針などを介して感染する。エボラ出血熱(Ebola hemorrhagic fever:EHF)は長い間使われてきた疾患名だが、出血症状を伴わないこともあるため、近年ではエボラウイルス病(Ebola virus disease:EVD)の呼称が使われることも多い。ラッサ熱マールブルグ病(出血熱)、クリミア・コンゴ出血熱、南米出血熱などとともに、ウイルス性出血熱(Viral Hemorrhagic Fever:VHF)とよばれ、致死性の高い感染症の一つとされる。日本では感染症法において1類感染症に指定されている。

 エボラウイルスはマールブルグウイルスと同じフィロウイルス科に属するウイルスで、名前の由来は、最初の患者が中部アフリカのコンゴ民主共和国(旧、ザイール)を流れるエボラ川流域の住民だったことによる。自然環境でのエボラウイルスの宿主はコウモリと考えられており、ウイルスを保有しているコウモリに触れたり食したりすることでヒトに感染する。コウモリからサルなどの野性動物に伝播(でんぱ)し、そこからヒトに感染することもあると考えられる。

 1976年にコンゴと南スーダンで流行をみたのが最初で、その後もコンゴやスーダンおよびガボンなど中央アフリカを中心に流行がみられ、さらに東アフリカのウガンダや西アフリカのギニアなどでも流行が報告されている。アフリカに流行が多いのは、葬式の際に死者の体に直接触れる風習によるところも大きいと考えられている。近年では2014年に西アフリカのギニアを中心に集団発生し、翌2015年にかけて複数国にまたがって流行するアウトブレイクが起こり、1万1000人以上が死亡している。

 症状は通常2~21日の潜伏期間を経て、一般に突発的な高熱および頭痛、極度の倦怠(けんたい)感、筋肉痛や咽頭(いんとう)痛に始まり、嘔吐(おうと)や下痢などの消化器症状、肝臓でのウイルス増殖による肝腫脹(しゅちょう)から右季肋(きろく)部の圧痛や叩打(こうだ)痛をきたし、腎(じん)機能障害が生じることもある。さらに悪化すると吐血や下血ほか全身の出血傾向を呈するようになり、重症となると死に至る。致死率は50~90%とされる。

 エボラウイルスに対するワクチンは、現在開発が進められており、WHO(世界保健機関)は、カナダ政府が開発したワクチンが、高い確率でエボラ出血熱を予防するとした臨床試験の結果を発表している(2016年12月)。このワクチンが実用化されれば、エボラウイルスの感染を防ぐ初めてのワクチンとなる。

[編集部 2017年8月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エボラ出血熱」の意味・わかりやすい解説

エボラ出血熱
エボラしゅっけつねつ
Ebola hemorrhagic fever

エボラウイルスによるウイルス性出血熱。エボラウイルス病 Ebola virus diseaseとも呼ばれる。感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で 1類感染症と定義される。「エボラ」は,ウイルスが初めて分離・採取された患者の住んでいたザイール(コンゴ民主共和国)の村を流れる川の名に由来する。エボラウイルスの自然宿主は特定されていないが,オオコウモリ科の複数種が考えられている。ウイルスに感染したヒトや野生動物の,血液などの体液に触れることによって感染する。症状としては発熱嘔吐皮疹がみられ,重篤化すると大量に出血する。2014年現在ワクチンや治療薬は研究段階で,治療は対症療法のみ。感染者の致死率は 50~90%。1976~77年にザイールとスーダンで数百人が感染し死亡したのをはじめ,1995年にはザイールのキクウィトで 244人が死亡,2000~01年にはウガンダで 225人が死亡した。2014年には西アフリカのギニアリベリアシエラレオネを中心に大流行し,同年 12月までに約 2万人の感染者,7500人超の死者を出すにいたった。

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家庭医学館 「エボラ出血熱」の解説

えぼらしゅっけつねつ【エボラ出血熱 Ebola Haemorrhagic Fever】

[どんな病気か]
 齧歯類(げっしるい)やコウモリが保有していると考えられているエボラウイルスの感染でおこります。ウイルスで汚染されたものに触れたときに、皮膚の小さな傷から感染することが多いのですが、重症な人からの飛沫感染(ひまつかんせん)もあります。
 アフリカ中央部に常在します。
[症状]
 潜伏期間は4~16日で、高熱、腰痛(ようつう)、眼球結膜炎(がんきゅうけつまくえん)、咽頭炎(いんとうえん)、せきをともなう胸痛(きょうつう)などがおこります。ついで嘔吐(おうと)、下痢(げり)(血便(けつべん))が始まり、歯肉出血(しにくしゅっけつ)、鼻出血(びしゅっけつ)などの出血傾向がみられるほか、かゆみのない斑(はん)や丘疹(きゅうしん)のような発疹(ほっしん)が全身に現われます。
 病人の約半数は、4~10病日ごろに強い中毒症状と播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)(「播種性血管内凝固症候群(DIC)」)で死亡しますが、もちこたえると3週間以降回復にむかいます。
[治療]
 この病気の回復期にある病人の血漿(けっしょう)の注射が有効です。

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百科事典マイペディア 「エボラ出血熱」の意味・わかりやすい解説

エボラ出血熱【エボラしゅっけつねつ】

エボラウイルスを病原体とする,致命率の高い出血性熱病。1976年,アフリカのコンゴ民主共和国のエボラ川周辺で大流行したことから,この病名がつけられた。これまでコンゴ民主共和国のほか,スーダンでも発生。1995年にはコンゴ民主共和国南西部で再び流行をみた。2013年〜2015年にかけては西アフリカ一帯で流行し1万人を超える死亡者をだした。エボラウイルスは,ネズミなどの齧歯(げっし)類やコウモリが保有するとみられ,ウイルスに汚染されたものに触れた皮膚の小さな傷からの感染が主だが,重症患者からの飛沫(ひまつ)感染の可能性も示唆されている。4〜16日間の潜伏期間の後,高熱,頭痛,筋肉痛,下痢,嘔吐が続いて脱水症状を呈し,重症化すると吐血,鼻出血,歯肉出血,下血などの出血傾向がみられ,半数以上は死亡する。→エマージング・ウイルス
→関連項目感染症予防法

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世界大百科事典(旧版)内のエボラ出血熱の言及

【伝染病】より


[国際伝染病]
 1977年6月10日,厚生大臣の諮問機関である国際伝染病小委員会で決められた行政上の名称で,〈国内に常在せず,予防法,治療法が確立していないため,致命率が高く,かつ伝染力が強いので,患者及び検体の取扱いに特殊の施設を必要とする特定の伝染病〉と定義されている。ラッサ熱,マールブルク病,エボラ出血熱の各ウイルス性疾患が該当する。これらはいずれも人獣共通伝染病で,サハラ以南のアフリカ諸国,とくに西アフリカに風土病的に存在するものとみられるが,院内感染での致命率が高いところから注目された。…

※「エボラ出血熱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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