かも(読み)カモ

デジタル大辞泉 「かも」の意味・読み・例文・類語

かも[終助]

[終助]名詞、活用語の連体形、まれに形容詞シク活用の終止形に付く。
感動を込めた疑問の意を表す。…かなあ。
「一つ松幾代いくよか経ぬる吹く風の声の清きは年深み―」〈・一〇四二〉
感動・詠嘆を表す。…だなあ。…ことよ。
「天の原ふりさけ見れば春日かすがなるみかさの山に出でし月―」〈古今・羇旅〉
(多く「めかも」の形で)反語の意を表す。なんで…か(いやそうではない)。
「いにしへを仰ぎて今を恋ひざらめ―」〈古今・仮名序〉
(「ぬかも」の形で)願望の意を表す。…てくれないかなあ。
「ぬばたまの渡る月ははやも出でぬ―海原の八十島やそしまの上ゆいもがあたり見む」〈・三六五一〉
[補説]連語「かも」の文末用法より転じたもの。「か」を終助詞、「も」を終助詞あるいは間投助詞とする説もある。2は中古以降、おおむね「かな」に代わる。

か‐も[連語]

[連語]
副助詞「か」+係助詞「も」》副助詞「3」に同じ。
《係助詞「か」+係助詞「も」。上代語》種々の語に付く。感動を込めた疑問の意を表す。…かなあ。
「あしひきの山―高き巻向まきむくの岸の小松にみ雪降り来る」〈・二三一三〉
[補説]「かも」がかかる文末の活用語は連体形をとる。

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精選版 日本国語大辞典 「かも」の意味・読み・例文・類語

か‐も

  1. [ 1 ] ( 係助詞の「か」と「も」が重なったもの。→係助詞「か」 )
    1. [ 一 ] 文中用法。係助詞的にはたらく。この場合の「か」は疑問の意を表わし、係り結びを起こす。
      1. [初出の実例]「置目もや 淡海の置目 明日よりは み山隠りて 見えず加母(カモ)あらむ」(出典:古事記(712)下・歌謡)
    2. [ 二 ] 文末用法。終助詞的にはたらく。平安以後はおおむね「かな」となる。
      1. 体言、用言の連体形(まれにシク活用形容詞の終止形)を受ける。
        1. (イ) 詠嘆を含んだ疑問を表わす。
          1. [初出の実例]「女鳥の わが王の 織(お)ろす服(はた) 誰が料(たね)ろ迦母(カモ)」(出典:古事記(712)下・歌謡)
        2. (ロ) 詠嘆を表わす。
          1. [初出の実例]「御諸の 厳白檮(いつかし)が本 白檮が本 忌々しき加母(カモ) 白檮嬢子」(出典:古事記(712)下・歌謡)
          2. 「春霞色のちぐさにみえつるはたなびく山の花のかげかも〈藤原興風〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春下・一〇二)
      2. 已然形を受けて反語の意を表わす。上代では東歌にだけ現われる。
        1. [初出の実例]「陸奥の安太多良真弓はじき置きて反(せ)らしめ来なば弦(つら)はかめ可毛(カモ)」(出典:万葉集(8C後)一四・三四三七)
      3. 「ぬかも」の形で、願望を表わす。
        1. [初出の実例]「朝ごとにわが見る屋戸の瞿麦(なでしこ)が花にも君はありこせぬ香裳(かも)」(出典:万葉集(8C後)八・一六一六)
  2. [ 2 ] ( 副助詞の「か」に「も」が重なったもの ) 副助詞的用法。近世以後「かもしれない」「かもしれぬ」などの形で用いられる。→かも知れない

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「かも」の意味・わかりやすい解説

カモ
かも / 鴨
duck

鳥綱カモ目カモ科カモ亜科に属する鳥の総称。この亜科Anatinaeの仲間は、カモ科Anatidaeのうち全長約35~60センチメートルと中・小形の水禽(すいきん)類で、大形のガン類が一般に雌雄同色で光沢ある羽色を欠くのに対し、普通、雄は雌より大形で、羽色が特殊化し、美飾羽をもつものもあり(少数は雌雄とも美飾的)、声も種ごとに特徴的である。雌は類似した「雌型」のじみな羽色で、声も一般に「ガ」あるいは「ゲ」音系である。近似種間では、たとえばマガモとカルガモのように雄どうし、雌どうしで同系の声をもち、交雑しやすい。

黒田長久

生態

繁殖においては、雄の美飾と関連して求愛誇示の諸動作が発達しており、共通の行動型があるが、羽色の違いに応じた種差がある。また、雌雄同色でともに保護色のガン類では雄が雌や巣卵を保護し防衛にあたるが、雄が美飾のカモ類では保護色の雌のみが巣の雛(ひな)を守り、雄は遠くにいて関与しない。したがって雌は外敵に対し保護色に徹し、とくにマガモやケワタガモなどでは、巣に伏せて自衛するが、危機に際しては「擬傷」動作をする。この動作は、負傷を装って水上をばたばたと逃げ、敵を雛や巣卵から反対の方向に誘うもので、地上営巣のチドリそのほかにも共通した防護戦術である。1腹の卵数は雛の死亡率に見合って、5~12個ぐらい(7、8個の場合が多い)と多く、抱卵日数は、コガモなど小形種の21日から、マガモなど大形種の28日ぐらいまである。雄は繁殖ののち換羽して雌型羽色(エクリプス)となり、秋にまた換羽して美飾羽を装う。多くは換羽途中で越冬地に到着してつがいを形成し、翌春繁殖地に戻る。種に特徴的な雄の美飾羽や声は、この越冬地において多種が混群をつくるので、交雑防止のために発達したもので、広大な環境に多種類が分布する旧北区で発展した種間進化である。一方、種ごとに独立的な分布を示す南半球や島嶼(とうしょ)では、これら雄の特徴的な羽色は退化し原型的な雌型に近くなるか、雌雄ともに同様な美飾羽を示す。

[黒田長久]

分類

カモ亜科はツクシガモ族、フナガモ族、バリケン族、ヤマガモ族、カモ族、ハジロガモ族、アイサ族、オタテガモ族の各グループからなる。

(1)ツクシガモ族 美しい羽色をした種類の集まりで、ガン型の草食であるコバシガンなどツクシガン類と、泥生動物を主食とするカモ型のツクシガモ類からなる。後者には旧北区の代表種ツクシガモTadorna tadorna、アジアの絶滅種カンムリツクシガモT. cristata、旧北区中南部のアカツクシガモT. ferrugineaを北限とし、南アジア、アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドに特徴ある種類が分布する。

(2)フナガモ族 このグループのフナガモ属Tachyeresには3種があり、主として沿岸産で、南アメリカの南端部およびフォークランド諸島に分布する。このうち2種は無飛力種である。

(3)バリケン族 木に止まり、また樹洞営巣性の多型的種類を含む樹上カモ類の集まりである。家禽化され、白色品種もある南アメリカのノバリケンCairina moschataを代表種とし、オシドリAix galericulata、アメリカオシA. sponsa、アフリカと南アメリカのコブガモSarkidiornis melanotos、インドのモリガモCairina scutulata、アフリカにいる大形のツメバガンPlectropterusから、小形のタテガミガンChenonetta jubata、南アジアからオーストラリア、アフリカに3種がいるマメガンNettapus、南アメリカのアカアシコガモAmazonettaやクビワコガモCallonettaなどまでを含む。

(4)ヤマガモ族 この族のヤマガモMerganetta armataは、アイサ型の体形のカモで、南アメリカの急流にすみ、3亜種がある。

(5)カモ族 代表的なカモ類で、カモ属Anasの38種、そのほか数属を含む。全世界に分布し、海にも出るが、おもに淡水湖沼にすみ、淡水ガモ類freshwater ducks、あるいは水表面または水際で採餌(さいじ)するので水面ガモ類surface-feeding ducks(dabbling ducks)とよばれる。日本産のおもな種類とその類縁種は次のようである。マガモA. platyrhynchosはアヒルの原種であり、カモ類の代表種で、雄はいわゆる「青首」である。北半球北部に広く繁殖し、日本でも北海道、所により九州まで繁殖例がある。ハワイガモレイサンガモはマガモの土着島嶼種で、またマリアナ諸島のマリアナガモはマガモが南方系のマミジロカルガモと交雑して生じたと考えられている。カルガモA. poecilorhyncha zonorhynchaは本州では唯一の留鳥として繁殖するカモで、葦原(あしはら)や水田に営巣し、ときにマガモとの雑種がある。本種は南方系で、インド、ミャンマー(ビルマ)に別亜種があり、オーストラリア、太平洋の諸島には近縁種マミジロカルガモが分布する。コガモA. creccaは小形で、ユーラシアに広く分布し、日本にも多く渡来する。北アメリカには別亜種アメリカコガモが分布する。オナガガモA. acutaも北半球全般の普通種で、日本では冬鳥であるが、最近増加し、東京・上野の不忍池(しのばずのいけ)ではほかの数種を圧倒し、著しく人になれている。渡りの習性が強く、はるか南半球のケルゲレン島、クローゼー島には羽色の退化した島嶼種がある。また同系の別種は、バハマ諸島、ガラパゴス諸島、南はカモ類の最南分布である南極半島のサウス・ジョージア島まで分布する。ヒドリガモA. penelopeはユーラシア産。近縁種に北アメリカのアメリカヒドリA. americana、南アメリカのワキアカヒドリA. sibilatrixがある。ヨシガモA. falcataは日本産のカモ類中もっとも美しく、その蓑(みの)状の肩羽によりミノヨシの地方名があり、ヒドリガモとともに海草を好む。アジア特産の種であるが、最近減少が著しい。オカヨシガモA. streperaは北半球に広く分布するが、その数は少ない。トモエガモA. formosaは小形で、雄の頭側には黄、黄、緑の順に黒線で境された独特の模様がある。東部シベリアで繁殖し日本、中国に渡るアジア特産種であるが、最近減少している。シマアジA. uelquedulaはコガモとともに最小種で、雄には白い眉帯(びたい)がある。ユーラシアに分布するが、日本ではまれである。北アメリカにはミカヅキシマアジ、南北アメリカにアカシマアジが分布。ハシビロガモA. clypeataは全北区に広く分布し、嘴(くちばし)が長く先広で、もっぱら水面採餌を行い、動植物とくに浮遊動物質を多く食べる。おもしろいことに、この種にもオーストラリアにミカヅキハシビロ、南アメリカにアカハシビロがあり、アフリカ南部に雌型羽色のケープハシビロがある。以上のほか、アフリカ、南アメリカ、オーストラリアに多数の独特な種類がある。

(6)ハジロガモ族 潜水ガモ類diving ducksまたはウミガモ類sea ducksともいい、体は太く短く重く、足は短く体後方につき、足指の水かき面積が大きく、後趾(こうし)も扁平(へんぺい)であり、潜水して底性動植物を食べる。代表属はハジロガモ属Aythyaで、そのうちのホシハジロA. ferinaは頭が栗(くり)赤色、胸は黒色、体は白色に黒い細斑(さいはん)で、雌は褐色、淡水湖を好み、ユーラシアに広く分布し、日本ではおもに冬鳥で、北海道で一度繁殖したことがある。北アメリカにアメリカホシハジロ、オオホシハジロがある。アカハジロA. baeriは頭が緑黒色、胸は赤褐色、背は褐色で、目は白色。アムール川流域に繁殖、東アジア特産であるが、日本にはまれな種。近似種にヨーロッパに広く分布するメジロガモA. nyrocaがある。キンクロハジロA. fuligulaの雄は長い後頭垂冠があり、体は黒色にわき羽の白色がくっきりと美しい。雌は褐色。日本では普通の冬鳥で、淡水沼や湖、内海などに渡来して越冬する。スズガモA. marilaはやや大形、羽冠はなく、背には細かい波状斑がある。浅海で大群をつくり、アサリなど二枚貝を好んで食べる。

(7)アイサ族 ハジロガモ族よりいっそう潜水適応が進み、体はより重く水に沈む。従来ハジロガモ類に分類されていたカモ型のものと、魚食で嘴が細く歯状突起の発達した長躯(ちょうく)・長尾の真のアイサ類からなり、南アメリカのアイサ1種のほかは北半球北部に分布する。ケワタガモSomateria spectabilisコケワタガモPolysticta stelleriはまれな冬鳥として北海道に渡来する。北極圏にもっとも広く分布するホンケワタガモS. mollissimaは、巣に多量に用いるその綿羽が北方各国で羽ぶとんに利用されてきた。北アメリカ大西洋岸のカササギガモCamptorhynchus labradoriusは、1875年採集の1羽を最後としておそらく絶滅した。そのほか、岩礁で付着貝類を食べるシノリガモHistrionicus histrionicus、雄は中央尾羽が細く長く、北海道から青森沿岸までに越冬するコオリガモClagula hyemalis、外海の沿岸に渡来するクロガモMelanitta nigraやビロウドキンクロM. fusca(アラナミキンクロも迷鳥記録がある)、むしろ浅い江湾を好むホオジロガモBucephala clangula(近縁の北アメリカのヒメハジロも迷鳥として渡来)などがあり、ホオジロガモは外観はカモ型であるが、内臓などの構造上はむしろアイサに近い。アイサ類では、小形で雄は白色のミコアイサMergus albellusは浅い海岸や淡水面に、カワアイサM. merganserは最大で湖など淡水面に、ウミアイサM. serratorは海に渡来する。北アメリカのオウギアイサM. cucullatusは扇状に広がる白地に黒い縁どりの羽冠がみごとであり、中国にコウライアイサ、南アメリカにクロアイサという希種がある。

(8)オタテガモ族 この族にはオタテガモ属Oxyuraが旧北区、南北アメリカ、アフリカ、オーストラリアにすむが、日本には産しない。

[黒田長久]

人間生活との関係

カモ類の多くは飼育が容易であり、動物園などの水禽舎、池の放し飼いのような装飾飼い鳥として好適で美しい。カモ類の捕獲法には、日本の鴨場(かもば)式のほかにヨーロッパ式があり、またイランには日本式に似る独特の鴨場がある。マガモは北半球ではもっとも広く分布し、都市の公園や池にも入り込んで人になれるが、そのような性質から家禽としてアヒルがつくられ、多くの品種ができた。半野生となったアヒルと野生マガモの雑種は、飛べるが体が重く、ナキアヒルとよばれる。また、アヒルとバリケンの飼育雑種は不妊性であるが、肉が美味で、台湾で食用に作出されている。

[黒田長久]

料理

脂(あぶら)がのっておいしいのは11月から翌年3月で、寒い季節が旬(しゅん)である。肉は赤みを帯び、脂肪は皮下に多く、柔らかく風味があり、鳥肉中もっともおいしいとされている。

 狩猟したカモは、羽毛をむしって毛焼きをし、頭と内臓を除き、もも肉と胸肉に分ける。

 日本料理でも西洋料理でも高級料理として取り扱われる。鴨飯(かもめし)、鴨鍋(かもなべ)、鴨汁、鴨雑煮、ローストなどの料理がある。鴨飯は、脂皮を煮だしてスープをとり、それに薄塩味をつけてご飯を炊く。肉はよくたたき、炒(いた)めてから酒としょうゆで味をつけ、熱いご飯の上にかけ、刻みせり、もみのりなどを添える。鴨汁は肉をたたいて、おろしたヤマノイモ、小麦粉と混ぜて団子にし、ダイコンニンジン、セリなどといっしょに煮込み、しょうゆで味つけする。カモの葛まぶし(くずまぶし)は北陸地方の料理で、カモの肉を1センチメートルくらいの厚さに切り、これに葛粉をまぶしてゆでる。別にだし汁をこしらえ、セリを加えて鴨汁をつくる。なお、最近のカモ料理では、野生のカモは入手しにくいので、マガモとアヒルの雑種のアイガモを使うことが多い。

河野友美・大滝 緑]


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改訂新版 世界大百科事典 「かも」の意味・わかりやすい解説

カモ (鴨)

カモ目カモ科カモ亜科Anatinaeに属する約120種の鳥の総称。極地を除く全世界に分布する。くちばしは幅広く扁平で,先端にかぎ状の突起があり,縁にはぎざぎざの板歯が列生している。脚は短く,前3本のあしゆびは水かきでつながっている。カモ類でも何々ガンという名をもつ鳥もいるが,外観上他のカモ科の鳥と異なる点は,一般に体が小型であること,他はほとんど雌雄同色であるが,カモ類は雌雄異色のものが多いことなどである。

ふつう,雄のほうが雌よりも体が大きく,色とりどりの美しい羽毛をもっている。繁殖が終了する夏の初めには他の鳥と同様カモ類も換羽するが,このとき雄は雌と同様のじみな羽毛にかわる。これをエクリプスeclipseと呼ぶ。この換羽のときには他の多くの鳥と異なり翼の羽毛まで一度にはえかわるので,換羽は早くすむが一時飛べない時期がある。雄は秋の終りに越冬地へ到着したものから換羽を始め,美しい羽毛になるが,このときには翼は換羽しない。なお雌雄同色のカモではエクリプスは見られない。

 一般に水面で餌をとるもの(水面採餌ガモ)と潜水して餌をとるもの(潜水採餌ガモ)に分けられ,体の構造もそれに適した変化をしている。水面採餌ガモは,水面のくちばしのとどく範囲で採餌し,逆立ち程度はするが,身が危険な場合以外潜水することはない。餌はおもに草本類,水草類の葉,種子,根や穀類,水生昆虫などである。潜水採餌ガモは,脚が体の後方についているため泳ぐのには適しているが,陸上生活には適していない。餌は水草や貝類,魚類,甲殻類などで,それらをまるごと食べるが,貝殻などは砂囊で砕かれる。

 植物質を主食にしている水面採餌ガモは,その肉が美味なことから広く世界中で狩猟の対象にされているが,日本でも狩猟鳥に指定されている種がマガモ,カルガモ,オナガガモ,コガモなど14種に及び,毎年狩猟期間中には90万~100万羽が撃殺されている。巣は,水辺に近い草原の中の地上につくるもの(マガモ属やハジロ属など)と木の穴につくるもの(アイサ属,ホオジロガモ属,オシドリ属など)がいる。卵は6~12個程度を産むものが多く,抱卵日数も24~28日程度のものが多い。雌が腹部の綿毛(ダウンと呼び,良質の防寒具に利用される)を抜いて巣の内側に敷きつめ,卵の保温に役だてている種が多い。孵化(ふか)した雛は綿羽に包まれているが,羽毛が乾くとすぐに歩行,遊泳が可能で,親についていくことができる。雛は約8週間たつと飛ぶことができるようになる。ガン類やハクチョウ類と違い,大部分のカモ類の雄はほとんど雛のめんどうをみず,育雛(いくすう)は雌が行う。

カモ類は次の8グループに分けられる。(1)ツクシガモ類Tadornini ガン類と典型的なカモ類との中間的な体つきをしていて,日本名はカモであるが,むしろガン類といったほうがよい。全長60~70cmとカモ類としては大きい。ツクシガモ,マゼランガン,オリノコガン,アカツクシガモ,エジプトガンなどが含まれる。またフナガモ属Tachyeresも近い仲間である。(2)マガモ類Anatini 淡水の湖沼などで見られるのはこの仲間のカモがもっとも多い。全長40~70cm。世界中に広く分布しており,マガモコガモオナガガモカルガモハシビロガモなど約40種いる。日本では11種の記録がある。(3)ヤマガモ類Merganettini 南アメリカのアンデス山脈の山地の渓流にすんでいる。ヤマガモMerganetta armata(英名torrent duck)1種よりなり,6亜種が知られている。(4)ケワタガモ類Somateriini 北半球の極北地域に繁殖するグループで4種が知られており,日本ではケワタガモとコケワタガモの2種が記録されている。(5)ハジロガモ類Aythyini 代表的な潜水採餌ガモで,翼に白色帯が出ることからこの名がある。海湾や河口,大きな湖沼にすむ。15種がおり,日本ではホシハジロ,オオホシハジロ,アカハジロ,キンクロハジロスズガモなど8種の記録がある。(6)バリケン類Cairinini 樹上に上がる性質をもつことが特徴。オシドリ類,ナンキンオシ類,ノバリケン,ツメバガン,コブガモ類などが含まれている。ナンキンオシ類はカモ科の中で最小の大きさで,アフリカ,オーストラリア,南アジアにすむ。(7)アイサ類Mergini アイサ属,クロガモ属,ホオジロガモ属を含む。アイサ属以外はいずれも海にすむ潜水採餌ガモで,日本ではクロガモ,ビロードキンクロ,ホオジロガモ,ヒメハジロなど10種の記録がある。アイサ属はくちばしが細長く魚食に適しており,7種が知られ,日本ではウミアイサ,カワアイサ,ミコアイサの3種の記録がある。(8)オタテガモ類Oxyurini 南北アメリカ,オーストラリア,アフリカ,西アジアなどに分布する。硬い尾羽をぴんと立てて泳ぎ,ディスプレーのときに尾を垂直に立てて広げるので知られている。くちばしは幅広く,くびが太い。淡水の池や湿地にすみ潜水して餌をとる。アカオタテガモ,コシジロオタテガモ,ニオイガモなど9種が知られるが,日本からの記録はない。

バライロガモRhodonessacaryophyllacea(英名pink-headed duck)はインドを最後に1939年以来知られていない。カササギガモCamptorhynchus labradorius(英名Labrador duck)は1875年以来記録がない。カンムリツクシガモTadorna cristata(英名crested shelduck)は1965年ころに観察記録があるが,それ以前の標本3体が残っているだけである。いずれも絶滅したと考えられる。
執筆者:

カモの肉は美味なので,日本人は古くからこれを愛好した。貝塚から出た鳥骨もカモ類のものが多い。《播磨国風土記》にはカモをあつものにした記事が見え,偶然ではあるが,これが文献に記載された日本最古の料理ということになる。しかし,それ以後貴族や武家の支配階級はキジを最高の美饌(びせん)として尊び,カモはやや軽視されていた。近世に入ると,武家は鶴を珍重したが,カモは庶民層によってこよない美味とされるようになり,カモやカモの味の語は,無上のごちそうや快楽,あるいは獲物,幸運などを意味するようにもなった。井原西鶴の作品にはカモ料理の名が多く見られるが,とくに《日本永代蔵》には〈鴨鱠(かもなます),杉焼のいたり料理〉という語があって注目される。いたり料理は手のこんだぜいたくな料理の意で,脂皮を除いて細切りにした肉をあたためた酒で洗ってワサビ酢をかける鴨鱠,杉箱の底に塩をぬりつけて火にかけ,その中でみそを溶かしてカモ,タイ,豆腐,ネギ,クワイ,ヤマノイモなどを煮て食べる杉焼といったものが,代表的なぜいたく料理だったというわけである。なお,カモ料理に用いるアイガモはマガモとアヒルの雑種である。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「かも」の意味・わかりやすい解説

カモ
ducks

カモ目カモ科のなかの比較的小型の種の総称。日本に分布するカモ科の鳥を対象にすると,大型のガン類とコクガン類,ハクチョウ類などを除いた中型,小型の鳥をカモ類としてまとめている。このように取り扱うと,カモ科は現生種の約 160種からなるが,日本に分布しているカモは 42種となる。分類学的にはカモ目カモ科カモ亜科,リュウキュウガモ亜科,オタテガモ亜科などの鳥の総称となる。しかし,ガンやハクチョウという呼び名との境界がはっきりしているわけではなく,ガンやカモと呼ばれていてもカモ科の鳥を明確に分類しているわけではない。(→ガンカモ類

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百科事典マイペディア 「かも」の意味・わかりやすい解説

カモ(鴨)【カモ】

カモ科の鳥のうち,一般に体が小さく,首があまり長くなく,雌雄で色彩を異にするものをいう。分類学上のまとまった群ではない。水鳥で泳ぎが巧み。足指にはみずかきがある。巣は地上,樹洞などに作られ,雌の羽毛を敷く。雌のみ抱卵。雛(ひな)は早成性で孵化(ふか)したときには綿毛がある。日本には35種。冬鳥として渡来するものが多い。主として淡水にすむものにマガモ,カルガモ,オナガガモ,トモエガモ,海産種にキンクロハジロ,スズガモ,クロガモなどがある。→カモ猟
→関連項目谷津干潟

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栄養・生化学辞典 「かも」の解説

カモ

 特に[Anas platyrhynchos].脊椎動物門鳥綱カモ目マガモ属の鳥.世界的に分布する鳥類で,食用にする.

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世界大百科事典(旧版)内のかもの言及

【鳥料理】より

…鳥類の肉を主材料とする料理。現在の日本では狩猟法によって野鳥の捕獲が制限され,ふつう食用とされるのは,家禽(かきん)では鶏,アイガモ,アヒル,シチメンチョウ,ウズラなど,野鳥ではキジ,ヤマドリ,コジュケイ,カモ類,シギ類,スズメなどで,鳥料理の主体は鶏肉を使うものとなっている。鶏肉の和風料理としては,水炊き,すき焼などのなべ料理のほか,焼鳥,とりわさ,いり鳥,つくねなどにする。…

※「かも」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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