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カルチュラル・スタディーズ カルチュラルスタディーズ

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百科事典マイペディアの解説

カルチュラル・スタディーズ

文化研究のことであるが,狭義には1970年代英国のバーミンガム大学に,英国労働者の文化を研究するために設立された現代文化研究センター(CCCS)の流れをくむ学問のこと。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

カルチュラル・スタディーズ

従来の学問分野が対象として積極的に取り上げてこなかった、ロックやR&B、テレビや広告、そして社会運動などを、文化に潜む「政治性」に着目し、議論の俎上(そじょう)にのせてきた学問的な潮流。精緻(せいち)で体系的な学問を目指すよりも、いろんな分野の学問的な手法を取り入れ、学問という枠すら揺さぶり、その「政治性」を時に告発した。ナショナリズムポスト植民地主義研究など、人文・社会科学に大きな影響を与え、1980年代以降、世界的に広がった。スチュアートホールは、こうした潮流を主導する中心的な理論家で「教祖」的な存在だった。

(2014-03-11 朝日新聞 夕刊 文化芸能)

出典|朝日新聞掲載「キーワード」
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

カルチュラル・スタディーズ
かるちゅらるすたでぃーず
cultural studies

1960年代にイギリスで起こり、やがてアメリカをはじめ世界各地に広がっていった多元的かつ批判的な視点からの文化研究の総称。
 1964年に設立されたイギリスのバーミンガム大学「現代文化研究センター」Centre for Contemporary Cultural Studies(略称CCCS)を中心として、労働者文化や若者文化についての一連の研究が生み出され、そこからこの名称がつけられた。スタディーズstudiesと複数形になっているように、ここには、単一の方法論による単一の学科ではなく、さまざまな文化領域や文化実践を対象とし、多様な方法論による、学際的かつ学科を超えた研究が含まれている。
 これが従来の文化論や比較文化論と異なる点は、正統的で支配的な単一の文化の研究でなく、むしろそれに対抗するポピュラー文化、対抗文化(カウンター・カルチャー)、若者のサブカルチャーなどを研究対象とし、それを権力や伝統との関係においてとらえようとするところにある。この研究が誕生したのが、いわゆる「高級文化」と「大衆文化」の対比が際だっているイギリスであるのもうなずける。この研究の理論的背景として、エーコやバルトの記号論(文化記号学)、フーコーのポスト構造主義、ラカンの精神分析、グラムシの文化ヘゲモニー論、デリダの脱構築論などがある。[久米 博]

淵源

この研究の発端となったのは、リチャード・ホガートRichard Hoggard(1918―2014)の『読み書き能力の効用』(1958)とレイモンド・ウィリアムズの『文化と社会 1780―1950』(1958)の2著である。彼らはいずれも労働者階級出身で、伝統的な文学研究の方法を大衆文化の解読に適用した点で共通している。ホガートは1930年代イギリスの労働者階級の言語、信念、価値、家庭生活などと、彼らの儀礼、スポーツイベント、パブといった慣習との関係をたどり、それを民俗文化として評価する反面、第二次世界大戦後にアメリカのポピュラー文化の浸透によって生まれた労働者階級の文化をまがいものとして批判した。一方、ウィリアムズの『文化と社会』は文学史の本であるが、厳密なテキスト分析の方法を適用して、文化の生産物とその社会的関係性とを深く議論した。彼らは労働者階級の文化を、イギリス文化の一つのモデルとして示し、以後のカルチュラル・スタディーズに多大な影響を与えた。[久米 博]

展開と成果

カルチュラル・スタディーズを実質的に推進し、それを全世界に向けて発信したのは、前述のCCCSである。初代所長ホガートは、マスメディアのイデオロギー的機能の分析に重点を置いた。2代目所長スチュアート・ホールは、メディアを介しての受け手(オーディエンス)の「読み」による意味生産に焦点を当て、サブカルチャー、女性文化、若者文化の研究に関心を拡大した。文化現象をテクストとして「読む」分析は、社会学的分析へ、さらにメディアの送り手側がどのようにして構築され、機能し、オーディエンスといかなる相互関係をもってきたのか、という分析へ進み、さらにホールのメディア論はオーディエンスの新しい概念化へと発展していく。CCCSから始まったカルチュラル・スタディーズは、1960年代後半にはロンドン大学、レスター大学はじめ全英に広がっていった。
 1970年代にこのカルチュラル・スタディーズがアメリカに伝えられると、その関心や対象は人種問題、性差、植民地主義、エスニシティ(民俗性、民族に固有の性質や特徴)に拡大し、それらに対しフェミニズム、ポスト植民地主義などの観点からの研究が多数生み出された。その代表として、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』(1978)をあげることができる。
 スチュアート・ホールはジャマイカ出身でイギリスの高等教育を受け、サイードはパレスチナ出身でアメリカの大学に学んだ。彼らの研究は支配者の文化を被支配者の観点から見直すポスト植民地主義の視点に立ち、欧米の自民族中心主義(エスノセントリズム)の視座から生まれた従来の文化論を批判する。
 1990年代に入るとカルチュラル・スタディーズはアジア、アフリカに受け継がれ、たとえば少数者集団(マイノリティ)の文化を対象にした多元文化論的研究が生み出された。[久米 博]

日本の動向

日本でも1980年代からカルチュラル・スタディーズは、まずマス・コミュニケーション研究として紹介され、ホガートやウィリアムズらの著書が翻訳され、1990年代後半にいくつかの雑誌で本格的な特集号が出された。1996年には東京大学で国際シンポジウム「カルチュラル・スタディーズとの対話」が開催された。しかし本格的なカルチュラル・スタディーズの出現は今後に待たねばならない。[久米 博]
『R・ウィリアムズ著、若松繁信・長谷川光昭訳『文化と社会』(1986・ミネルヴァ書房) ▽R・ウィリアムズ著、大泉昭夫訳『文化と社会の語彙』(1989・南雲堂) ▽R・ホガート著、香内三郎訳『読み書き能力の効用』(1986・晶文社) ▽E・W・サイード著、今沢紀子訳『オリエンタリズム 上下』(1993・平凡社) ▽フランツ・ファノン著、海老坂武・加藤晴久訳『黒い皮膚・白い仮面』(1987・みすず書房) ▽テリー・イーグルトン著、大橋洋一訳『イデオロギーとは何か』(1996・平凡社)』

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