スバル
すばる
文芸雑誌。1909年(明治42)1月~13年(大正2)12月。全60冊。昴(スバル)発行所発行。編集兼発行人石川啄木(たくぼく)、のち江南(えなみ)文三。森鴎外(おうがい)を指導者にいただき、『明星』脱退組の北原白秋、木下杢太郎(もくたろう)、吉井勇らと新詩社系の啄木、平出修(ひらいでしゅう)、平野万里(ばんり)らによって創刊。ほぼ『明星』を継承、詩歌を中心に唯美的な新浪漫(ろうまん)主義思潮を主導し反自然主義の有力な拠点となった。小説・戯曲では、鴎外の文壇再活躍を象徴する『半日』『ヰタ・セクスアリス』(ともに1909)、『青年』(1910)、『雁(がん)』(1911)、杢太郎の『南蠻寺(なんばんじ)門前』(1909)、『和泉(いずみ)屋染物店』(1911)、長田(ながた)幹彦(みきひこ)の『澪(みお)』(1911)などの名作が載り、詩歌では、白秋、杢太郎、勇、高村光太郎らがのびのびと自己の表現世界を示した。とくに『道程』(1914)に結晶する光太郎の詩業は、啄木の評論とともに近代日本の矛盾に鋭く迫り、新しい時代を用意した。なお、復刻版『スバル』(1965・臨川書店)がある。
[石崎 等]
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すばる【スバル】
文芸誌。1909年(明治42)1月~13年(大正2)12月。全60冊。《明星》廃刊直後から,北原白秋,木下杢太郎,吉井勇,長田秀雄,石川啄木,平野万里,高村光太郎ら新詩社系の青年詩人が中心同人となって発刊。指導者に森鷗外を迎え,与謝野寛・晶子を顧問格とし,上田敏,永井荷風,谷崎潤一郎,小山内薫,石井柏亭,山本鼎ら,学問,小説,演劇,美術ほか各分野の第一線推進者の協力を得た。興隆する自然主義に対抗し,理想主義的・耽美派的な芸術思想・作品の結集する場として大きな役割を果たした。
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世界大百科事典内のスバルの言及
【詩】より
…同年三木露風が《廃園》を出し,白露時代と並称された。北原白秋,木下杢太郎ら耽美派とよばれる詩人たちは《スバル》に拠って自然主義運動のあとに来るべき文学・芸術上の新思潮を準備した。《スバル》は指導者に森鷗外を仰ぎ,石川啄木,吉井勇その他多くの新進詩人,作家,劇作家らを擁した。…
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