〘名〙 (touch) (ある意図をもって)手や道具で触れること。
① (━する) スポーツ用語で、触れること。
(イ) 野球で、走者をアウトにするために野手がボールを持った手またはグラブで走者に触れること。「タッチアウト」
※ベースボール(外野及び練習篇)(1928)〈飛田穂洲〉練習篇「塁審〈略〉遠くから見ると、タッチしたか、しないか〈略〉さうした点を見落して仕舞ふ」
(ロ) テニス、バレーボールなどで、打ち込まれた球に触れること。また、球がネットなどに触れること。
※破戒(1906)〈島崎藤村〉五「打込んだ球はかすかに網に触れた。『触(タッチ)』と銀之助の一声」
(ハ) 競泳で、ターンやゴールインの際に、プールの内壁に触れること。
(ニ) ラグビーで、球、または球を持ったプレーヤーがタッチラインや線外の地面にふれること。
② (━する) 故意に異性の体の一部に触れること。
③ (━する) ある物事に、関与すること。
※新版大東京案内(1929)〈今和次郎〉市政と事業「交通巡査はいちばん市民とのタッチが深い」
※黯い潮(1950)〈井上靖〉三「役目柄この事件にタッチして行かなければならぬ山名だけが」
④ 鍵盤楽器やタイプライターのキーを押したときの感触、打ち味。特に、鍵盤楽器で演奏者の指が鍵盤に触れるとき、その触れ方。さまざまな強弱の度合、音色のちがいを含めていう。
※モオツァルト(1946)〈小林秀雄〉一〇「演奏者の腕の不正確は直ぐ露顕せざるを得ない。曖昧なタッチが身を隠す場所がないからであらう」
⑤ 絵画などで、筆づかい。
※放浪時代(1928)〈龍胆寺雄〉二「絵は〈略〉ごく初期のものには多少筆触(タッチ)の生硬なのや何かがないでもなかった」
⑥ (⑤から比喩的に) 文章の書きぶり。文章の趣。また、映画・テレビ番組などで、全体的な表現のしかた。
※映画と批評(1939)〈津村秀夫〉三「前半で簡潔なタッチで描かれた市街の断片は」