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中央アジア、天山山脈西端南麓(なんろく)にある構造盆地。大部分がウズベキスタン共和国に含まれ、一部はキルギス共和国とタジキスタン共和国に属する。アラル海に注ぐシルダリヤの上流がフェルガナ盆地を貫いて西へ流れる。盆地の面積は約2万2000平方キロメートル。中央部は砂漠ないしステップの荒れ地であったが、1939年に完成した大フェルガナ運河による導水の結果、農耕地面積が拡大し、ワタ、クワ、ブドウなどが作付けされている。
[津沢正晴]
紀元前数世紀より、イラン系住民による農耕文化が発達し、ブドウの名産地として知られる。前2世紀に漢の武帝の命令を受けた張騫(ちょうけん)が中央アジアに旅行した際、大宛(だいえん)国として伝えたのはこのフェルガナ地方である(大宛の語義は明確ではない)。中国唐代に鏺汗(はつかん)、抜汗那(フェルガナ)として知られた。10世紀ごろよりトルコ人に支配され、ついでイスラム化し、モンゴル帝国、ティームール朝、ブハラ・ハン国の領地となった。18世紀初頭、この地のコーカンド市を中心にコーカンド・ハン国が独立、オシュ、アンディジャン、マルギラン(現在のフェルガナ市)、ナマンガンの新興都市が勃興(ぼっこう)し、商業が栄え、ついでロシア、ソ連領となり、ソ連崩壊後は現在の各共和国に属するようになった。
[佐口 透]
中央アジア東部のウズベキスタン,タジキスタン,キルギスの各共和国にまたがる地域名。パミール山塊北端と天山山脈西端の山脈に囲まれたシル・ダリヤ中流域のフェルガナ盆地を中心とする。この盆地は周辺の山々から流れ下る多くの河川によって潤され,紀元前数百年紀から牧畜を伴う農耕文明が成立していた。大宛国を代表とするアーリヤ系の住民によるいくつかの地方政権の後,7世紀からはトルコ系遊牧民の支配の下で住民のトルコ化が進んだ。8世紀にはイスラムも伝わり,16世紀のウズベク族の定着によって現在の住民構成がほぼ完成した。中世のフェルガナ盆地では東部のアンディジャーンAndijānなどのいくつかの都市が東西交易によって繁栄していた。18世紀初めには盆地西部のホーカンドを首都とするホーカンド・ハーン国が成立したが,やがて南下してきたロシアに占領された。現在では盆地の南部に新しく建設されたウズベキスタン共和国のフェルガナ市が地域の行政的中心で,綿花,絹織物の生産のほか,ウラニウムをはじめとする各種の鉱工業も盛んである。
執筆者:堀 直
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
大宛(だいえん)シル川の上流,東西300km,南北150kmの盆地。古くから東西世界を結ぶ陸路の要衝にあたり,漢代には大宛の名で知られ,ブドウ酒,名馬の産地として有名であった。住民はイラン系であったが,西突厥(にしとっけつ),カラハン朝に支配され,トルコ化,イスラーム化した。1876年ロシアに併合されて州となり,現在はウズベキスタン共和国,クルグズ共和国,タジキスタン共和国に分属。
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