マントル対流(読み)マントルたいりゅう(英語表記)mantle convection

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

マントル対流
マントルたいりゅう
mantle convection

地球内部のマントル中の温度差によって引き起こされる,マントル物質のきわめてゆるやかな対流。対流が生じる原因や対流の規模にはいくつかの説がある。マントル対流は大陸移動(→大陸移動説)や造山運動の原因として,1929年アーサー・ホームズによって提唱された。大西洋中央海嶺などの海嶺系はマントル対流の湧出口にあたり,海洋地殻はマントル対流に乗ってベルトコンベヤのように移動し,これが大陸移動,海洋底拡大 (→海洋底拡大説)の原因と考えられた。プレートテクトニクスが地球科学の基軸となる考え方として一般的に定着した 1970年頃以降は,マントル対流は海洋プレートの沈み込みによって生じる地球表層の密度分布の不均衡によって引き起こされるという考えが有力になった。これによれば海嶺では海洋プレートは両側に向かって移動するので,マントル物質はそのすきまを埋めるため受動的に上昇してくると考えられた。さらに 1990年代以降,マントル内の地震波速度の 3次元的な不均質が明らかになるにつれて,マントル物質が大規模な塊となって上昇したり降下したりする動きが提唱された。この塊はプリュームと呼ばれ,暖かいプリュームが核との境界付近からわき上がり,一方冷たいプリュームはマントル上部から下部マントルへ降下すると考えられた。

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世界大百科事典 第2版の解説

マントルたいりゅう【マントル対流 mantle convection】

地球のマントル深部から表面近くまでに達する大規模な熱対流が存在すると仮定して,熱も物質も対流に乗って運ばれるとすると,地殻と上部マントルに起こっている諸現象をうまく説明することができる。熱せられた地球が表面から冷えていく段階で,その内部に熱対流が生じるだろうとは古くから指摘されていた。地球内部が高温であることは,地下の温度が深部ほど高いという観測事実からも推定されるが,放射性核種の崩壊による発熱や落下に伴う重力エネルギーの熱エネルギーへの変換によって,地球内部は地球生成後のある時期以後ずっと高温に保たれていたと考えられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

マントル対流
まんとるたいりゅう

大陸移動や造山運動などの大規模な地殻運動を説明するために考えられた、地球のマントル内部の熱対流のこと。地震波の観測などから知られるとおり、マントルは全体としては相当の硬さをもつ固体である。しかし、アイソスタシーなど長時間の現象に対しては流動的にふるまうことが知られており、マントル内に大規模な対流が存在する可能性は十分にあるとされている。1930年代、イギリスのA・ホームズはマントル対流により大陸移動や海溝の形成を説明したが、60年代に生まれた海洋底拡大説やプレートテクトニクスの背景にあったのも、この考えであった。しかし、対流の上昇域と下降域をそのまま中央海嶺(かいれい)と海溝に対応させるには、非常に複雑なパターンをもち、しかも不自然に薄い形の対流を考えなければならないという難点がある。このようなことから、マントル対流こそプレート運動の原動力であり、プレートはそれに乗って受動的に動くだけであるとする従来の考えには疑問がもたれているが、マントル内にある種の対流現象が存在する可能性まで否定されているわけではない。[吉井敏尅]

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