メジャー(メジャーズともいう)とは国際石油会社international major oil companyないし国際石油資本を指し,かつては,7社あったことから〈セブン・シスターズ〉と呼ばれていた。現在ではエクソン社,モービル社,テキサコ社,シェブロン社(以上アメリカ系資本),ブリティッシュ・ペトロリアム社(イギリス系資本),ロイヤル・ダッチ・シェル社(イギリス,オランダ系資本,ロイヤル・ダッチ・シェル・グループ)の6社をいう(1997)。1社少なくなっているのは,1984年初頭における激しい買収合戦の結果,メジャーのうちガルフ・オイル社が同じくメジャーのシェブロン社(当時はスタンダード・オイル・オブ・カリフォルニア社)に買収されたためである。
本来メジャーは,国際的に,生産,流通,精製,販売の活動を統合した一貫操業会社で,資本規模も大きく,世界の石油産業を支配してきた。1970年代に入り,OPEC(オペツク)が,自己の利益の極大化を図るため,参加・国有化を通じて,原油の生産量,価格水準の決定権を徐々に獲得し,拡大するのに応じて,メジャーの影響力も後退してきた。たとえば1965年のメジャー7社の原油生産量は1692万バレル/日で西側世界原油生産の68%を占めていたが,73年の第1次石油危機後急速にそのシェアを縮小し,79年には2014万バレル/日,西側世界の39.2%,82年には,1343万バレル/日,同32.5%にまで低下した。ただメジャーが取り扱っている石油製品の販売は,原油生産の低下ほどには低下してこなかった。すなわち1965年のメジャーの石油製品の販売量は1532万バレル/日,西側世界の57.4%から,79年には2254万バレル/日,同43.7%を経て,82年には1822万バレル/日,同39.9%となっている。このことは,現在でもメジャーは,相対的に支配力を喪失してきたとはいえ,まだ石油製品の販売では圧倒的な力をもっているということを示しているといえる。
しかしこのような勢力の相対的な後退のなかで,メジャー6社もそれぞれ生残り戦略を模索しはじめている。その戦略は,(1)原油の探鉱・開発の主力を北アメリカ,北海等の非OPEC地域に集中し,ペルシア湾への依存を避ける,(2)しかもコストのかかる新規開発よりも企業の吸収合併を通じて,自社の原油埋蔵量を増大させる,(3)また石油精製部門では,不採算地域における精製設備の売却,削減,閉鎖および人員整理を行い,(4)高度化装置(各種の分解装置等をいい,重質製品をガソリン等の軽質製品に転換する)の導入による製品価値の引上げと利益の増大を図る,という方向に向かっている。しかし石油のエネルギーに占める重要性は相対的に後退することが確実視されている現在,メジャーがメジャーとして生き残りうるのは,エクソン社,ロイヤル・ダッチ・シェル社,モービル社の3社程度ではないかともいわれており,状況はかなり厳しいといえよう。
執筆者:湯浅 俊昭
メジャーという言葉は国際石油会社のことだけでなく,世界の穀物市場を支配している五つの巨大な穀物商社のことをいうこともある。それはアメリカのカーギル社,コンティネンタル・グレーン社,フランスのルイ・ドレフュス社,オランダのブンゲ社,スイスのアンドレ社の5社である。この5社は輸送と貯蔵という穀物の流通システム全般を支配しており,その巨額にのぼる資本力によって,他社の参入を許していない。これら穀物メジャーの市場支配力は,たとえば世界の穀物輸出の約60%を占めるアメリカの穀物輸出の約50%をカーギル社とコンティネンタル社が扱い,後の3社を加えるとこの比率は85%くらいにまで上昇することで理解できよう。世界市場においても五大穀物メジャーは70%から80%のシェアを有していると推定される。
執筆者:黒田 満
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… ブロックブッキングの制度によって,1930年代のハリウッドはその全盛期を迎える。35年には,ロックフェラー財閥とモルガン財閥という2大金融資本の支配下で,パラマウント,ワーナー・ブラザース,MGM,20世紀フォックス,RKO,ユニバーサル,コロムビア,ユナイテッド・アーチスツの大手8社(〈メジャー〉の名で呼ばれた)がMPPA(アメリカ映画製作者連盟)を組織し,配給の95%を独占。パラマウント,ワーナー,MGM,20世紀フォックス,RKOの5大会社だけでアメリカ映画のほぼ80%を製作し,4000館の一流封切館を所有し,総売上高(興収)の88%を稼ぎ出していたといわれる。…
…しかしボーキサイトは熱帯,亜熱帯等(ギニア,ジャマイカ,オーストラリアなど)に偏在していて,これらの条件に合致する地域が少なく,結局,電力資源の条件がアルミニウム工業成立発展の基礎となる。アルミは製品の差別化がなく,このように原・燃料依存の高い産業のため,国際アルミニウム資本(メジャー)の影響が強い。世界のアルミニウム工業は19世紀末の勃興期当初からホール=エルー法(近代アルミ製錬,電解法)の特許が切れるまで,製錬企業数が世界で5社という寡占状態であった。…
…〈エッソESSO〉(Standard Oilの頭文字SOをもじって命名)の商標で知られる。原油生産および処理量,石油製品および天然ガス販売量,売上高および利益額のすべてにおいて石油メジャーの首位を占めるばかりでなく,世界最大の事業会社であり,かつ,100を超える国々で石油事業を営む典型的な多国籍企業の一つである。エクソンは,ジャージー・スタンダードStandard Oil Co.(New Jersey)が1971年社名変更したものであるが,カリフォルニア・スタンダード(スタンダード・オイル・オブ・カリフォルニア),インディアナ・スタンダード,オハイオ・スタンダード等の諸社もあり,これらはかつてはスタンダード・オイル・グループにあったものである。…
…以下ジャージー・スタンダードと略),スタンダード・オイル・オブ・カリフォルニア社(現,シェブロン社。以下カリフォルニア・スタンダードと略),スタンダード・オイル・オブ・ニューヨーク社(現,モービル社)が含まれており,いわゆるアメリカのメジャーの形がととのった。
[需要の拡大過程]
こうした石油産業の発展を支えたのが,石油需要の拡大である。…
※「メジャー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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