ロッシェル塩(読み)ロッシェルえん(英語表記)Rochelle salt

精選版 日本国語大辞典 「ロッシェル塩」の意味・読み・例文・類語

ロッシェル‐えん【ロッシェル塩】

〘名〙 (ロッシェルは Rochelle フランス西部の海港都市の名から)⸨ロッケルえん⸩ 酒石酸カリウムナトリウムの塩。化学式は KNaC4H4O6 ふつう四水塩で無色透明結晶下剤利尿剤としての効果があり、チーズフェーリング液に用いる。〔薬品名彙(1873)〕

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デジタル大辞泉 「ロッシェル塩」の意味・読み・例文・類語

ロッシェル‐えん【ロッシェル塩】

酒石酸ナトリウムカリウム無色の結晶。強誘電体で、ピックアップなどの圧電素子として用い、また下剤・利尿剤に使用。1672年、フランス西部の町ラ‐ロシェルの薬剤師P=セニエットが薬用として合成したものはセニエット塩とよばれる。化学式KNaC4H4O6

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改訂新版 世界大百科事典 「ロッシェル塩」の意味・わかりやすい解説

ロッシェル塩 (ロッシェルえん)
Rochelle salt

酒石酸ナトリウムカリウムC4H4O6KNaの立体異性体の一つであるL-酒石酸ナトリウムカリウムの別名。ほかにR-酒石酸塩,メソ酒石酸塩もある。無色の結晶。約55℃で融解してカリウム塩とナトリウム塩に分離する。ロッシェル塩は1655年ころ,フランスの港町ラ・ロシェルの薬剤師セニエットÉlie Seignette(1632-98)によって初めて調製された。当時利尿剤,緩下剤として広く用いられていた酒石(L-酒石酸水素カリウム)より水に対する溶解度が大きかったため,〈セル・ポリクレステ(長所に富んだ塩)〉という名称で販売されると直ちに広く普及した。ロッシェル塩,あるいはセニエット塩の名が用いられたのはこの後のことである。欧米では20世紀前半まで家庭常備薬として広く用いられた。

 化学薬品としてもロッシェル塩は化学者によって広く用いられた。1858年フェーリングHermann von Fehling(1812-85)はフェーリング液に,同じころJ.vonリービヒは銀鏡反応に,それぞれロッシェル塩を用いた。80年キュリー兄弟はロッシェル塩の物性研究中に圧電気現象を発見した。それより前L.パスツールも,結晶に関する初期の研究でロッシェル塩を用いている。このように多くの化学者によってロッシェル塩が用いられた理由は,この物質が当時のほとんど唯一といってよい化学工業であったブドウ酒醸造工業の産物であり,入手が容易だったからである。
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百科事典マイペディア 「ロッシェル塩」の意味・わかりやすい解説

ロッシェル塩【ロッシェルえん】

化学式はKNaC4H4O6・4H2O。酒石酸ナトリウムカリウムの4水和物。セニエット塩とも。無色の結晶。比重1.773,70〜80℃で結晶水に溶ける。水に可溶。200℃で分解。味わうと清涼感がある。単結晶は異常に強い圧電気効果と,大きい誘電率をもつため,発振器,圧電素子としてピックアップ,マイクロホン,受話器などに用いられる。またフェーリング液の主成分であり,医薬品,食品工業などにも用いられる。工業的には酒石酸水素カリウムと炭酸ナトリウム水溶液からつくる。
→関連項目圧電気マイクロホン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロッシェル塩」の意味・わかりやすい解説

ロッシェル塩
ろっしぇるえん

酒石酸ナトリウムカリウム

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