ワールブルク(英語表記)Warburg, Otto Heinrich

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ワールブルク
Warburg, Otto Heinrich

[生]1883.10.8. フライブルク
[没]1970.8.1. ベルリン
ドイツの生化学者。物理学者で国立物理工学研究所所長をつとめた父のエミールに物理学の手ほどきを受け,ベルリン大学で有機化学を,ハイデルベルク大学で R.クレールの助手となって医学を修め,1911年学位取得。ここで O.マイアーホーフと知合ってナポリ海洋研究所で共同研究を行い,12年細胞をすりつぶした液で酸素吸収の起ることを明らかにして,呼吸の生化学的研究に基礎をおいた。その後一時ベルリン大学で酸化還元電位の研究に従事したのち,14年よりカイザー・ウィルヘルム生物研究所所員。細胞呼吸における鉄イオンの働きについて研究し,鉄による酸素活性化説を立て (1921) ,鉄を含む呼吸酵素の存在の証明に努めた末,発見 (28) 。これは D.ケイリンが発見したチトクロムと同一物であることがのちに判明した。光合成の機作に関しても,量子収量の測定法を開発して,1分子の二酸化炭素が植物によって同化されるに必要な光量子の数は4個 (22) ,のちに1個と唱えて一光量子説を立てた (50) 。今日,彼の説は支持されていないが,光合成の定量的研究を創始した点で大きな功績とされる。 32年に,当時黄色酵素と呼ばれていた脱水素酵素を精製,蛋白質のほかに低分子物質が含まれていることを認め,単離に成功 (35) ,トリホスホピリジンヌクレオチドと命名 (後年,ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸 NADPと改称) 。 50年代以降は,腫瘍を研究。正常組織に比べて腫瘍の増殖には少い酸素ですむことを解明 (56) ,それに基づく治療法を提案したが,普及はしなかった。 31年に細胞呼吸の研究によりノーベル生理学・医学賞を受賞。彼が開発したワールブルク検圧計はいまなお広く使われている。

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百科事典マイペディアの解説

ワールブルク

ドイツの美術史・文化史家。ハンブルクのユダヤ系銀行家の長男として生まれ,ボン大学に学んだのち,生涯野にあってイコノロジーを方法的基盤とする研究に専念した。その私設図書館〈ワールブルク文庫〉はのちロンドン大学ウォーバーグ研究所に発展する。ルネサンス美術に蔵された古代文化再発見の試みは,占星術からインド・イスラム学までを動員する学際研究の模範。《著作集》(1932年)とゴンブリッチによる評伝(1970年)がある。→ワールブルク学派
→関連項目ウィントカッシーラーコートールズ[会社]ザクスル図像学パノフスキー

ワールブルク

ドイツの生化学者。ベルリン,ハイデルベルク両大学に学ぶ。カイザー・ウィルヘルム研究所員,のち同細胞生理学研究所長。ワールブルク検圧計を発明し,光合成,呼吸,解糖系等の生化学を発展させた。呼吸酵素の特性および作用機構の発見で,1931年ノーベル生理医学賞。
→関連項目クレブステオレル

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世界大百科事典 第2版の解説

ワールブルク【Aby Warburg】

1866‐1929
ドイツの美術史家。ユダヤ系の富裕な銀行家の家に生まれ,生地ハンブルクに美術史の文献を中心とした〈ワールブルク文庫〉を創設。文庫はナチスに追われて1934年ロンドンに移転,ロンドン大学付属ワールブルク研究所となる。彼は,当時全盛の様式批判による美術史に対して,作品の主題的側面が芸術家やパトロンたちにとって重要な意味を有していたことを,主としてイタリア初期ルネサンス美術の研究を通じて主張。その画期的なボッティチェリ論(1893)によって拓かれ,後にパノフスキー等の図像学(イコノロジー)として結晶した彼の美術史的方法の基本は,すでに文庫の構成に組み込まれており,現在の研究所に継承されている。

ワールブルク【Emil Gabriel Warburg】

1846‐1931
ドイツの物理学者。ハイデルベルク大学で物理学と化学を学び,ベルリン大学で学位を取得。1872年,新設されたカイザー・ウィルヘルム大学の臨時教授となり,A.クントとともに気体分子運動論に関する実験的研究を行う。76年から95年までフライブルク大学の物理学教授をつとめ,弾性余効の研究からJ.A.ユーイングとは独立に強磁性体のヒステリシスを実験的に見いだした。95年からはクントの後任としてベルリン大学の実験物理学の教授となり,多くの研究者を養成した。

ワールブルク【Otto Heinrich Warburg】

1883‐1970
ドイツの生化学者。ベルリン大学,ハイデルベルク大学。E.フィッシャーから化学を,また物理学者であった父E.G.ワールブルクから物理学と光化学などを学ぶ。1914年カイザー・ウィルヘルム協会(後のマックス・プランク協会)の細胞生理学研究所所員,37年同研究所所長。彼の考案したワールブルク検圧計(1918)は,20世紀前半の生化学で広く用いられた。呼吸酵素(1920年代),トリホスホピリジンヌクレオチド(TPN,現在はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNADPと改称)の発見(1935)をはじめ,呼吸,解糖系,また光合成の生化学で業績を挙げた。

ワールブルク【Paul Moritz Warburg】

1868‐1932
アメリカのユダヤ系銀行家。1798年に設立されドイツの大銀行に発展したワールブルク商会を経営するワールブルク家の子としてハンブルクに生まれた。1894年から数年間は同社に参加したが,その後アメリカに渡り,1902年にニューヨークの銀行クーン・ローブ商会の社員,11年にアメリカ市民となった。彼はヨーロッパのような中央銀行をアメリカにも設置するように議会に働きかけたが,13年に制定された連邦準備法では,統一的な中央銀行は設立されなかった。

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大辞林 第三版の解説

ワールブルク【Warburg】

〔Aby W.〕 (1866~1929) ドイツの美術史家。ハンブルクにワールブルク文庫(1933年ナチスに追われロンドンに移転してワールブルク研究所)を創設、美術史・文化史研究に大きな影響を与えた。
〔Otto Heinrich W.〕 (1883~1970) ドイツの生化学者。ワールブルク検圧計を考案して細胞呼吸を研究。癌がん細胞の生理、光合成の研究でも知られる。

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世界大百科事典内のワールブルクの言及

【図像学】より

…他方,古代神話・寓意等キリスト教以外の図像についても近世以来一貫して研究が行われてきた。 現代の図像学の発端は,一般にA.ワールブルクが1912年に発表した15世紀イタリアの月暦画についての研究報告に認められている。ハンブルクに起こり,後にロンドンに移った彼の学派(ワールブルク研究所)から,優れた研究者が多数出たが(ゴンブリッチ,ザクスルF.Saxlなど),第2次大戦後の学界に決定的影響を与えたのはパノフスキーである。…

【ワイマール文化】より

…こうした人間の原質を求める動きは,精神分析家にとどまらず,ワイマール文化を担った人々にみられる。ワールブルク研究所をつくったA.ワールブルクは,美術史から古代人のシンボル研究に向かったし,法制史家のバハオーフェンは考古学からシンボルの解読を通して母権制を発掘した。 かくてワイマールの思想は,人類学の視点を変えた。…

【ワールブルク研究所】より

…ロンドン大学に所属する研究所で,とりわけルネサンス研究の面で名高い。ドイツの富裕な美術史家A.ワールブルクは,古代美術の伝統についてとくに関心を深め,これについての豊富な蔵書を備えた文庫を1905年ハンブルクにつくった。やがて友人ザクスルF.Saxlを管理責任者として研究所へと発展し(1921),パノフスキーやカッシーラーなどが同研究所に関係するようになって,ルネサンス研究の一大中心とみなされるようになった。…

【FAD】より

…生体内においては,ピリジンヌクレオチドと並んで,多くの電子伝達系酵素反応に重要な役割を演じているが,中でもD‐アミノ酸酸化酵素,グルコースオキシダーゼ,各種酸素添加酵素の反応がよく知られている。もともと,ワールブルクO.Warburgらが酵母から分離した黄色酵素(1932)の補酵素としてFMNを発見したのにひき続き,1938年にD‐アミノ酸酸化酵素の補酵素としてFADが発見された。【徳重 正信】。…

【FAD】より

…生体内においては,ピリジンヌクレオチドと並んで,多くの電子伝達系酵素反応に重要な役割を演じているが,中でもD‐アミノ酸酸化酵素,グルコースオキシダーゼ,各種酸素添加酵素の反応がよく知られている。もともと,ワールブルクO.Warburgらが酵母から分離した黄色酵素(1932)の補酵素としてFMNを発見したのにひき続き,1938年にD‐アミノ酸酸化酵素の補酵素としてFADが発見された。【徳重 正信】。…

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