三方五湖(読み)ミカタゴコ

デジタル大辞泉 「三方五湖」の意味・読み・例文・類語

みかた‐ごこ【三方五湖】

福井県西部、若狭湾岸にある五つの連続する湖。若狭湾国定公園内にあり、三方湖水月すいげつ湖・すが湖・日向ひるが湖・久々子くぐし湖からなる。平成17年(2005)ラムサール条約に登録された。

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精選版 日本国語大辞典 「三方五湖」の意味・読み・例文・類語

みかた‐ごこ【三方五湖・三潟五湖】

  1. 福井県西部、若狭湾岸にある三方・水月・菅・日向(ひるが)久々子(くぐし)の五湖の総称リアス式海岸の背後にある沈降湖で、若狭湾国定公園の一部。国名勝。三方の海。三方湖。

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日本歴史地名大系 「三方五湖」の解説

三方五湖
みかたごこ

三方郡の北西部、三方町と美浜みはま町にまたがる五つの湖、すなわち三方湖・水月すいげつ湖・すが(水月湖の一部)久々子くぐし湖・日向ひるが湖の総称。常神つねかみ半島の付根の部分にあたる。三方郡の海岸線とともに若狭湾国定公園の一部をなし、北方を三方五湖レインボーラインが通る。また東岸にはほぼ南北に国道二七号(かつての丹後街道)が走る。三方湖・水月湖日向湖の三湖は古生層地の陥没湖であり、久々子湖は砂嘴により外海と隔てられたいわゆる潟湖である。なお三方湖・水月湖・久々子湖の三湖を総称して三方湖ともいう。

三方湖 周囲五里二〇丁、面積三六〇町

水月湖(含菅湖) 周囲六里一二丁、面積六一〇町

久々子湖 周囲五里二〇丁、面積一二四町

日向湖 周囲一里五丁、面積九三町三三一歩

「万葉集」巻七の「羇旅作歌」のうちに

<資料は省略されています>

があり、歌学書「五代集歌枕」「八雲御抄」にも「三方海」は若狭の名所として記される。

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改訂新版 世界大百科事典 「三方五湖」の意味・わかりやすい解説

三方五湖 (みかたごこ)

福井県南西部,常神(つねかみ)半島の付け根に位置し,三方上中郡若狭町と三方郡美浜町にまたがる三方湖,水月(すいげつ)湖,菅(すが)湖,日向(ひるが)湖,久々子(くぐし)湖の5湖をいう。古く《万葉集》にも〈若狭なる三方の海の浜清みい往き還らひ見れど飽かぬかも〉と詠われ,〈三方の海〉は歌枕でもあった。若狭湾国定公園の観光の一中心で,国指定名勝。〈三方富士〉ともよばれ,眺望にすぐれた梅丈(ばいじよう)岳(400m)に通じるレインボーラインが走り,久々子湖畔の久々子からは遊覧船がある。湖岸では梅,桃,ブドウを産し,特に梅は〈福井梅〉の名で特産。5湖とも南北に走る三方断層によって落ちた西側の陥没地にあり,水深は三方湖4m,水月湖34m,菅湖39m,日向湖43mと北のものほど深い。三方湖の特に浅いのは,北流して同湖に注ぐ鰣(はす)川の堆積によるもので,潟湖の久々子湖も水深2mにすぎない。三方,水月,菅の上三湖は水面が連続し,特に菅湖は水月湖の湾入にすぎない。久々子湖と日向湖はもと独立していたが,浦見川,嵯峨隧道(さがずいどう)によって,いまは水月湖とつながる。1662年(寛文2)の大地震で元来排水不良であった上三湖が溢水,湖岸周辺の田畑が冠水して大被害となった。同年小浜藩は排水路(浦見川)の開削に着手,郡奉行行方(なめかた)久兵衛は2年の歳月と延べ22万5000余人の人夫,金1600余両,扶持米3000余俵を費やして64年に完成した。これによって上三湖の水は久々子湖に落とされ,三方湖岸には24haの新田と生倉(いくら),成出(なるで)の集落が生まれた。水月湖と日向湖を結ぶ嵯峨隧道は,17世紀初め以来改修を重ねて1934年完成した。

 海水の日向湖ではボラ,スズキ,タコがとれ,ハマチ,ブリ,タイなどの養殖が盛ん。半塩半淡の久々子湖ではウナギ,ボラがとれ,カキを養殖する。面積5.3km2と最大の水月湖(菅湖を含む)はコイ,フナ,ボラ,セイゴなどを産するが,湖底から湧く硫化水素(湧き口は〈クレ〉といい,菅湖口付近に多い)のため,中層以下は不毛である。淡水の三方湖はコイ,ウナギ,モロコ,フナ,ワカサギなどを多産し,叩き網(たたきあみ),柴漬(しばづけ)など古い漁法を伝える。これら湖での漁業権や湖上交通権,菱や藻草の採取をめぐっては,古来周辺諸村の間で争いが繰り返された。なお,鰣川河口近くに縄文時代鳥浜貝塚がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三方五湖」の意味・わかりやすい解説

三方五湖
みかたごこ

福井県西部、三方上中郡若狭町(わかさちょう)と三方郡美浜町(みはまちょう)にまたがる三方湖、水月(すいげつ)湖、菅(すが)湖、日向(ひるが)湖、久々子(くぐし)湖の五湖をいう。国指定名勝。矢筈(やはず)山西麓(ろく)を南北に走る三方断層によって落ちた西側の陥没地にあり、若狭湾国定公園(わかさわんこくていこうえん)の一中心。梅丈(ばいじょう)岳には有料道路レインボーラインが通じ、久々子からは遊覧船が出る。三方、水月、菅の三湖は水面が連続し、水月湖と久々子湖は浦見(うらみ)水道で、日向湖と水月湖は嵯峨隧道(さがずいどう)で通じている。湖水はもと菅湖から東方へ流出したが、1662年(寛文2)の地震で排水が悪くなり、湖岸は洪水に悩まされた。そこで小浜(おばま)藩奉行(ぶぎょう)行方(なめかた)久兵衛(1616~1686)が1662年から1664年にかけて浦見水道(延長144メートル)を開削した。この工事により三方湖岸に24ヘクタールの新田が開発され、生倉(いくら)、成出(なりで)の2集落が生まれた。人夫延べ22万5000余人、金1600余両、扶持米(ふちまい)3000余俵と2年の歳月を要した難工事で、浦見川は恨み川だともいう。嵯峨隧道は寛永(かんえい)(1624~1644)以来改修を重ねて1934年(昭和9)に完成した。日向湖は海水が入り、ブリ、タイを蓄養し、サバ、イワシが釣れる。久々子湖は半淡水でボラがとれ、カキを養殖。最深(34メートル)かつ最大(4.1平方キロメートル)の水月湖は湖底に硫化水素が発生し、菅湖とともに生物はほとんどみられない。三方湖は4メートルと浅いが、ウナギ、フナ、ワカサギなどが多く、漁業権をもつ鳥浜(とりはま)は叩(たた)き網、えり、柴漬(しばづけ)など古い漁法を残す。湖岸はウメ、モモ、ブドウの産地。なお、三方五湖は2005年(平成17)に、ラムサール条約登録湿地となった。

[島田正彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三方五湖」の意味・わかりやすい解説

三方五湖
みかたごこ

福井県南西部,美浜町から若狭町にかけて連なる三方湖水月湖菅湖日向湖久々子湖の 5湖の総称。南部の三方湖,水月湖,菅湖は一連の湖で,かつては氾濫が絶えなかった。小浜藩主酒井忠直の命により寛文年間(1661~73)水月湖と久々子湖の間の丘陵地を開削し,人工排水路の浦見川が完成。これによって三方湖岸約 0.2km2が陸地化し,生倉,成出,田井の新田集落が成立した。水月湖,日向湖間は 1934年嵯峨トンネルで連絡し,さらに排水がよくなった。淡水魚,海水魚に恵まれる。水月湖の西から北岸を久々子湖の笹田にかけて三方五湖レインボーラインが通る。国の名勝に指定され,北岸の梅丈岳とともに若狭湾国定公園に属する。2005年ラムサール条約に登録。

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百科事典マイペディア 「三方五湖」の意味・わかりやすい解説

三方五湖【みかたごこ】

福井県南西部,若狭湾岸の水月,三方,菅(すが),久々子(くぐし),日向(ひるが)5湖の総称(名勝)。前3者は一続きの湖で後2者は丘陵で隔てられる。三方湖のみ淡水湖。《万葉集》に三方の海とみえ,歌学書には歌名所としてあげられる。漁業資源にも恵まれ,江戸時代には鰻などをめぐる出入があった。若狭湾国定公園に属し,特に梅丈岳からのながめは美しい。2005年11月にラムサール条約登録湿地となる。釣・海水浴の適地。早瀬から遊覧船,敦賀駅からバス。
→関連項目気山津三方[町]ラムサール条約

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デジタル大辞泉プラス 「三方五湖」の解説

三方五湖〔景勝地〕

福井県西部、常神半島の基部にある5つの海跡湖の総称。三方上中郡若狭町と三方郡美浜町にまたがって広がる水月湖、菅湖、久々子(くぐし)湖、日向(ひるが)湖、三方湖の5湖で、合計面積は約11平方キロメートル。各湖は水路で結ばれているが、それぞれ塩分濃度や水深が異なり、水の色も微妙に違って見えることから“五色の湖”とも呼ばれる。日本の固有種を含む多様な魚類が生息しており、周辺には水生・湿性植物の群落が見られる。若狭湾国定公園の中核をなし、国の名勝に指定。ラムサール条約登録湿地。

三方五湖〔道の駅〕

福井県三方上中郡若狭町にある道の駅。国指定名勝の三方五湖のひとつ、三方湖の南西に位置する。

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事典・日本の観光資源 「三方五湖」の解説

三方五湖

若狭湾国定公園を代表する景勝地。五湖周辺と常神半島一帯は国の名勝地に指定されている。2005(平成17)年にラムサール条約指定湿地に登録された。
[観光資源] 久々子湖 | 水月湖 | 菅湖 | 日向湖 | 三方湖

三方五湖

(福井県三方郡美浜町・三方上中郡若狭町)
日本の重要湿地500」指定の観光名所。

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事典 日本の地域遺産 「三方五湖」の解説

三方五湖

(福井県三方上中郡若狭町;福井県三方郡美浜町)
ラムサール条約湿地」指定の地域遺産。
固有魚類生息地。若狭湾国定公園特別地域。若狭湾沿いのリアス式海岸にある湖の集まり

三方五湖

(福井県三方上中郡若狭町;福井県三方郡美浜町)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報

世界大百科事典(旧版)内の三方五湖の言及

【汽水湖】より

…底層部になるほど塩分濃度が高いことが多く,下層の比重が大きくなるので上下の水の循環が行われないため,底の方には酸素のない水が存在することがある。そのため還元状態を示し,福井県の三方五湖や北海道釧路市の春採(はるとり)湖などのように硫化水素が発生する。 日本の代表的な汽水湖としてはラグーンの浜名湖,中海(なかうみ),八郎潟,サロマ湖などがある。…

※「三方五湖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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