二本松(市)(読み)にほんまつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「二本松(市)」の意味・わかりやすい解説

二本松(市)
にほんまつ

福島県中北部、中通り北部にある市。安達太良山(あだたらやま)の東麓(とうろく)から阿武隈高地(あぶくまこうち)の西部にかけてを占め、市域の中央部を阿武隈(あぶくま)川が北流する。1889年(明治22)町制施行。1955年(昭和30)塩沢、岳下(だけした)、杉田、石井、大平(おおだいら)の5村と合併、1958年市制施行。2005年(平成17)安達(あだち)、岩代(いわしろ)、東和(とうわ)の3町を合併。JR東北本線、国道4号、349号、459号、東北自動車道が通じ、二本松インターチェンジがある。

 中心地区の二本松は、1414年(応永21)奥州探題の畠山氏(はたけやまうじ)が白幡ヶ峯(しらはたがみね)に築城したと伝える地。1586年(天正14)には伊達政宗(だてまさむね)に攻略され、その後、蒲生(がもう)氏、上杉氏を経て、1627年(寛永4)松下氏による二本松藩成立。翌年加藤氏にかわり、1643年以降、明治維新まで丹羽氏二本松藩の城下となった。城は大修築され、霞ヶ城(かすみがじょう)と名づけられた。根崎、竹田、亀谷(かめがい)、本町(もとまち)、松岡などの町割も行われた。二本松はまた奥州道中の宿駅でもあった。福島市、郡山(こおりやま)市の中間に位置するが、両市の発展に押され、商勢は振るわない。伝統的な家具製造、酒造、繊維工業のほか、自動車関連工場も誘致された。阿武隈川沿いに大規模な工業団地が造成されている。安達地区は和紙を特産。農業は稲作、野菜栽培、酪農などが行われる。

 霞ヶ城跡は霞ヶ城公園となり、付近に国指定史跡の「旧二本松藩戒石銘碑(きゅうにほんまつはんかいせきめいひ)」がある。安達太良山は磐梯(ばんだい)朝日国立公園域で高山植物が豊富。あだたら高原スキー場があり、山麓には岳(だけ)温泉がある。杉沢の大スギと木幡の大スギ(こはたのおおすぎ)はともに国指定天然記念物。10月の第1土曜日から月曜日まで行われる二本松神社の祭礼提灯祭(ちょうちんまつり)は日本三大提灯祭の一つである。「石井の七福神田植踊」は初春の予祝芸能で、国の選択無形民俗文化財。「木幡の幡祭り(こはたのはたまつり)」は国の重要無形民俗文化財。また、二本松の菊人形は全国でも最大規模のものといわれる。面積344.42平方キロメートル、人口5万3557(2020)。

[安田初雄]

『『二本松市史』全9巻(1979~1999・二本松市)』


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