(読み)テイ

デジタル大辞泉 「亭」の意味・読み・例文・類語

てい【亭】

[名]
庭に設けた休憩用などの建物。あずまや。ちん
亭主
島屋の―が、そんなひどい事をしおるかえ」〈鏡花歌行灯
やしき。住居
「多田蔵人くらんど行綱、入道相国の西八条の―に参りて」〈平家・二〉
[接尾]
文人芸人などの号に付ける。「二葉四迷」「三遊円朝」
文人・墨客ぼっかくなどの住居、寄席よせ・料理屋などの屋号に付ける。「知雨」「末広

てい【亭】[漢字項目]

常用漢字] [音]テイ(漢) チン(唐)
旅人の宿泊所。宿駅。「亭長/駅亭
屋根だけで壁のない休息所。あずまや。ちん。「池亭
飲食・演芸などで客を集める建物。「亭主旗亭席亭茶亭料亭
樹木が高くそびえるさま。「亭亭
きっかりその点に当たる。「亭午

ちん【亭】

唐音眺望や休憩のために高台庭園に設けた小さな建物。あずまや。

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精選版 日本国語大辞典 「亭」の意味・読み・例文・類語

てい【亭】

  1. 〘 名詞 〙
  2. やしき。住居。
    1. [初出の実例]「左府土御門亭焼亡」(出典:中右記‐嘉保二年(1095)五月一一日)
    2. 「多田蔵人行綱、入道相国の西八条の亭に参て」(出典:平家物語(13C前)二)
  3. 庭園の中にある休憩所。あずまや。中世以後、ふつう唐宋音で「ちん」と読む。→亭(ちん)
    1. [初出の実例]「観夫林下有亭、亭上延客」(出典:本朝文粋(1060頃)八・林亭春已晩詩序〈紀斉名〉)
  4. やど。はたご。旅館や料理屋。〔書言字考節用集(1717)〕
  5. 家のあるじ。亭主。
    1. [初出の実例]「稲荷の法性寺大路の橘倉のてい、あやまちより大事に成てまかるべき時」(出典:申楽談儀(1430)世子と霊夢)
    2. 「客来たるに、亭出て」(出典:咄本・醒睡笑(1628)二)
  6. 中国古代に置かれた宿駅。〔漢書‐百官公家表〕

ちん【亭】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ちん」は「亭」の唐音 ) 眺望・休息のため庭園内に建てた小屋。あずまや。
    1. [初出の実例]「山をつきては、ちんをかまへ、池をほりては、船をうかべ」(出典:曾我物語(南北朝頃)二)

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普及版 字通 「亭」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

[字音] テイ・チン
[字訓] やど・ものみ・あずまや

[説文解字]

[字形] 象形
高と同構の字で、下部がアーチ状の楼門をなしている。〔説文〕五下に「民の安定するなり。亭に樓り」とし、「高の省に從ひ、丁(てい)聲」とするが、下部は京と同じように門の形。楼は候望と宿舎とを兼ねることがあり、駅亭という。〔漢書、百官公表〕に「十里に一亭」とあり、合わせて二万九千六百三十五亭があるという。〔周礼、地官、遺人〕に「五十里に市り。市に候り。候に積り」とあり、賓客・会同・師役の際に用いた。境界に当たって設けるものを寓望という。

[訓義]
1. やど、しゅくば、えきてい。
2. ものみ、たかやぐら、たかい。
3. あずまや、ちん。
4. 停と通じ、とどまる、やしなう。
5. 定と通じ、ととのえる、ただしい。
6. 底と通じ、いたる。

[古辞書の訓]
和名抄〕亭 辨色立に云ふ、客亭、阿波良夜(あばらや)。亭子、息の處の小屋なり 〔名義抄〕亭 タカシ・アカハダカニシテ・ウチナヤム・トドム・カヨフ・ヤタハカリ・アバラヤ/客亭 アバラ/閑亭 ミヤビカナリ/亭 アバラヤ 〔立〕亭 ウテナ・ヤム・アラハ・タカアシタ・トドマル・マラウドヰ・トドム・ハハナツメ 〔字鏡集〕亭 アカハダカニシテ・タカシ・ヤム・カヨフ・アハラ・トドム・アタハカリ・ウテナ・ハカリ

[声系]
停は〔説文新附〕八上に「止まるなり」とあり、渟(てい)は〔説文〕未収の字で、停水の意。ともに亭の声義を承ける字である。

[語系]
亭・停・渟・定dyengは同声。dyenも声義近く、定することをいう。

[熟語]
亭育・亭員・亭院・亭宇・亭景・亭駅・亭閣・亭館・亭観・亭徼・亭午・亭侯・亭候・亭公・亭際・亭子・亭寺・亭次・亭舎・亭・亭主・亭沼・亭障・亭・亭場・亭上・亭隧・亭燧・亭然・亭台・亭池・亭置・亭長・亭亭・亭伝・亭当・亭畔・亭父・亭郵・亭落・亭吏・亭立・亭楼
[下接語]
駅亭・園亭・華亭・街亭・官亭・危亭・旗亭・妓亭・客亭・丘亭・琴亭・古亭・湖亭・郊亭・高亭・山亭・宿亭・小亭・松亭・新亭・水亭・石亭・短亭・池亭・竹亭・築亭・茶亭・長亭・都亭・風亭・辺亭・茅亭・夜亭・野亭・幽亭・郵亭・蘭亭・旅亭・料亭・涼亭・林亭

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【四阿∥東屋】より

…庭園などに設けられた休息用の小建築で,亭(ちん)とも呼ぶ。方形平面で4本柱とするのが普通であるが,多角形や円形のものもあり,屋根は宝形造(ほうぎようづくり)(屋根)でカヤ(茅)や杉皮,板でふいたものが多い。…

【駅伝制】より

…駅の経費は馬口銭という税金によった。また駅より小規模なものとして,亭という施設もあった。三国より南北朝にかけての時代は,各王朝で部分的に制度が維持された形跡はあるものの,交通一般の中で大きな意味をもつ存在ではなかった。…

【漢】より

…このような里を最小単位として構成されている郷は,したがって自治独立の意識がさかんであった。郷には三老(教化をつかさどる)をはじめ,嗇夫(しよくふ)(税務,訴訟をつかさどる)や遊徼(ゆうきよう)(治安をつかさどる)がおかれ,またいくつかの里の警察をつかさどるものとして亭があり,亭には亭長がおかれていた。郷官と総称されるこれらの小吏は,いずれも住民の中から推挙されて郡県から任命されたものである。…

【郷里制】より

…漢代では地方を郡県に分けたが,その県の下には古来からの邑の伝統をもつ多くの自然集落が包含された。集落はいずれも城郭で囲まれ,その一つ一つが亭であり,10亭ちかく集まると,その最大のものが郷=都亭となり,他の亭を従えた。そしていくつかの郷が集まると,その最大のものが県=都郷となり,他の郷を従えた。…

【男子集会所】より

…こうした所にはしばしば大きな立石や石壇があって,巨石文化複合との関連も考えられる。ベトナムのトンキン地方の村落には亭(ディン)という集会所があるが,この建物には村の守護神(土地神)の祭壇があり,そこが村落生活の中心でもある。そこで村集会が開かれるし,裁判も行われる。…

【宿屋】より

…ただしこれらの施設では宿泊のみが可能で,食事の提供などはなく,旅客は自炊しながら旅をした。全国が統一された秦・漢代には,主要な交通路には亭(てい)や伝舎という官設の宿舎が設けられ,ときには一般人の宿泊も許されたが,亭は単なる宿泊施設ではなく,地方行政・治安の中心であり,亭長には地方の有力者が当てられた。漢の高祖劉邦も,元来この亭長の職にあった。…

【渡し】より

…黄河では,周の武王が殷の紂王を討ったときに八百諸侯が会盟したという孟津,太公望呂尚が食物を売ったという棘津(きよくしん),魏や衛が城を築いた延津,白馬津などが名高い。最初は軍事的,警察的な目的で設置されたのであって,戦国から漢代にかけては警察署と宿舎を兼ねた亭が置かれ,亭長がこれを管理した。 渡し場が制度的に明確になるのは関津が整備される隋・唐以降で,刑部司門の管轄下に置かれた。…

※「亭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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