八代市(読み)ヤツシロシ

デジタル大辞泉 「八代市」の意味・読み・例文・類語

やつしろ‐し【八代市】

八代

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日本歴史地名大系 「八代市」の解説

八代市
やつしろし

面積:一四六・四〇平方キロ

東は竜峰りゆうほう山系・高田こうだ山系、中央を貫流する球磨川の河口一帯に展開する八代平野の中央部に位置する。熊本市に次ぐ県下第二の人口をもつ。市域の北は八代郡千丁せんちよう町・宮原みやはら町、東は同郡東陽とうよう村・坂本さかもと村、南は葦北あしきた田浦たのうら・芦北両町に接し、西は八代海を隔てて天草郡大矢野おおやの町・松島まつしま町・姫戸ひめど町に対する。竜峰山系の麓部を南下する国道三号は、かつて薩摩街道または薩摩往還ともよばれ、旧宮地みやじ地区を西下し、市街中央部から球磨川を渡って再び山麓線を南下し、旧日奈久ひなぐ町を経て葦北郡田浦・芦北・津奈木つなぎ町、水俣みなまた市に至る。また県道八代―鏡―宇土線はかつて「鎗の柄往還」ともよばれ、下益城しもましき松橋まつばせ新四しんよかどから分岐し、八代平野を南下して、八代郡竜北りゆうほくかがみ・千丁の各町を経て当市の中心部で国道三号に交わる。国鉄鹿児島本線は市のやや東部を縦断し、八代駅から肥薩線が分岐する。また球磨川の河口に設置された八代外港は海上交通の要衝で、天草郡各地のみならず外国船の寄港もあり、工場の進出も顕著である。

八代の地は、景行天皇親征の説話のうちに「水島」「不知火」「豊村」などがみえ、「肥前国風土記」に記される健緒組の白髪しらかみ山の霊火などによって古くから知られている。しかし八代郡が古文書・古記録などにあらわれてくるのは八世紀からで、「続日本紀」「三代実録」に「八代郡正倉院」の怪異の記事をみることができる。

〔原始〕

旧石器時代の遺跡は現在のところ未発見であるが、縄文時代の遺跡は日奈久地区の田川内たのこうち貝塚のほか数ヵ所が発見され、いずれも中期の遺跡である。弥生時代の遺跡は日置ひおき白石しらいし遺跡から黒髪式甕棺を伴う人骨三体が検出され、その他数ヵ所に遺跡があるが未調査。古墳時代の遺跡は六世紀頃から急激に増大し、遺跡の数は多い。明治一七年(一八八四)に発掘された竜峰校区の門前もんぜん古墳群は箱式石棺で、その中から内行花文鏡など鏡三面・勾玉・管玉・鉄剣・直刀などが発見された。昭和四二年(一九六七)頃に発掘された上片かみかた町の八代大塚やつしろおおつか古墳からは朝顔形埴輪および県下で最初の人物埴輪の頭部などが出土した。そのほか川田かわた町の大塚門前おおつかもんぜん一号墳・岡塚おかつか二号墳など八基の前方後円墳が確認されている。装飾古墳では、鼠蔵そぞう大鼠蔵おおそぞうの箱式石棺群のなかの一つの石障に線刻の円文・船(または弓)・短甲・靫などの装飾文様がほどこされていた。日奈久町の田川内古墳は、縄文時代の貝塚の中心部に設けられ、羨道をもつ横穴式石室墳で、この側壁部に同心円文・鋸歯文が、近くの敷川内の五反田しきがわちのごたんだ古墳には円文があるなど、十数基の古墳に装飾文様がみられる。


八代市
やつしろし

2005年8月1日:八代市と八代郡鏡町・千丁町・東陽村・泉村・坂本村が合併
【鏡町】熊本県:八代郡
【千丁町】熊本県:八代郡
【東陽村】熊本県:八代郡
【泉村】熊本県:八代郡
【坂本村】熊本県:八代郡
【八代市】熊本県

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「八代市」の意味・わかりやすい解説

八代〔市〕
やつしろ

熊本県中南部,八代平野の中南部と九州山地に広がる市。西部を球磨川が流れ,八代海に注ぐ。東は宮崎県に接する。1940年八代町,太田郷町の 2町と植柳村,松高村の 2村が合体して市制。1954年金剛村,高田村,八千杷村,郡築村の 4村,1955年宮地村,日奈久町,1956年昭和村,1957年二見村,1961年竜峰村をそれぞれ編入。2005年坂本村,千丁町,町,東陽村,村の 5町村と合体。中心市街地は球磨川河口に位置し,江戸時代は熊本藩重臣松井氏の城下町。明治期には木材の集散地として発展。その後,豊富な工業用水と原料により,セメント,製紙,酒造,繊維,金属,建材などの工場が立地し,近代工業都市に成長。1964年には新産業都市に指定された。現在は県南の中心地。八代港は重要港湾に指定,天草航路の発着地。西部は広大な干拓地で米作のほか,イグサ,メロン,野菜の栽培が盛ん。東部の山間部ではチャ (茶) やミカンを栽培し,ショウガの生産量は国内有数。南西部に日奈久温泉がある。八代城跡,松浜軒などの旧跡,国の重要文化財の薬師如来像を所蔵する医王寺,八代神社など古社寺が多い。東部の五家荘は古い習俗や生活様式で知られ,観光地としても注目される。市域の一部は九州中央山地国定公園五木五家荘県立自然公園芦北海岸県立自然公園に属する。九州新幹線,JR鹿児島本線,肥薩線,肥薩おれんじ鉄道線,国道3号線,219号線,445号線などが通り,西部に九州自動車道インターチェンジがある。面積 681.36km2。人口 12万3067(2020)。

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