デジタル大辞泉
「刺す」の意味・読み・例文・類語
さ・す【刺す】
[動サ五(四)]《「差す」と同語源》
1
㋐先の鋭くとがったものを中に突き入れる。突き立てる。突き通す。「指にとげを―・す」「短刀で胸を―・す」「魚をくしに―・す」
㋑(「螫す」とも書く)毒虫などが針を皮膚に突き入れる。「ハチに―・される」
2 厚いものに針を突き入れて縫う。また、針で結びつづる。「ぞうきんを―・す」「網を―・す」
3 もちざおで小鳥や虫を捕らえる。「鳥を―・す」
4 (「差す」とも書く)舟を進めるためにさおを水底に突き立てる。「さおを―・す」
5 野球で、走者にボールをタッチしてアウトにする。「本塁で―・される」
6
㋐目・鼻・舌などの感覚器官を鋭く刺激する。「異臭が鼻を―・す」「舌を―・す味」
㋑心に強い痛みを感じさせる。ショックを与える。「その一言が私の胸を―・した」
[可能]させる
[用法]さす・つく――「針で肌を刺す(突く)」のように、先の鋭い物を押し付ける意では、相通じて用いられる。◇「刺す」はその動作の結果として、対象の内部に入り、あるいはつらぬく意が中心となる。「肉をくしに刺す」「とげを刺す」◇「突く」は物の先端を一つ所に強く当てる動作に意味の中心がある。「相手の胸を突いて倒す」「釣鐘をつく」◇「銛で魚を突く」「槍で突く」など、「突く」は刺し通すことにも言うが、この場合も、物の先を勢いよく目標に当てるという動作が主になる。◇「鼻を刺す(突く)臭気」「胸を刺す(突く)言葉」などでも両語とも使われるが、「刺す」は刺激や痛みの鋭さに、「突く」は衝撃の強さにそれぞれ重点がある。
[下接句]釘を刺す・鹿の角を蜂が刺す・寸鉄人を刺す・止めを刺す・寝鳥を刺す・骨を刺す
[類語]突く・突く・突っつく・小突く・小突き回す・突き倒す・突っかかる・突き飛ばす・突き破る
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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さ・す【刺・螫・挿・注・点・鎖】
- 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
- [ 一 ] ( 刺 ) 細い物で物を貫く。比喩的にも用いる。
- ① 先の鋭くとがった物を突き入れる。突き通す。また、刃物で突いて殺傷する。
- [初出の実例]「水たまる 依網(よさみ)の池の 堰
(ゐぐひ)打ちが 佐斯(サシ)ける知らに」(出典:古事記(712)中・歌謡) - 「つと走りかかりつつ、妖怪をぐさと刺(サス)」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)後)
- ② 針を突き入れて縫う。
- [初出の実例]「韓国の 虎といふ神を 生け取りに 八頭(やつ)取り持ち来 その皮を 畳に刺(さし)」(出典:万葉集(8C後)一六・三八八五)
- 「高麗の青地の錦の、端さしたるしとねに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
- ③ ( 螫 ) 虫などが、皮膚にくいついたり、針を突き入れたりする。
- [初出の実例]「昔一国王有りて、毒蛇に齧(ササ)れたりき」(出典:大智度論天安二年点(858)二)
- 「花咲けば芳野あたりを欠廻(かけまはり)〈曲水〉 虻にささるる春の山中〈珍碩〉」(出典:俳諧・ひさご(1690))
- ④ 糸、ひも、針金、串(くし)などで、貫き通す。
- [初出の実例]「おどろきて御ひもさし給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
- ⑤ 舟を動かすために、棹(さお)を水底に突きたてる。また、棹や櫓(ろ)を使って舟を進める。
- [初出の実例]「堀江より水脈(みを)引きしつつ御船左須(サス)賤男(しづを)のともは川の瀬申せ」(出典:万葉集(8C後)一八・四〇六一)
- 「貞国大に忿(いかっ)て、人の指(サス)櫓を引奪て、逆櫓に立」(出典:太平記(14C後)一七)
- ⑥ もちざおで、鳥やトンボなどを捕える。
- [初出の実例]「トリヲ sasu(サス)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- 「我等蜻蛉(とんぼ)さして遊びし頃より大の仲好し」(出典:いさなとり(1891)〈幸田露伴〉二九)
- ⑦ 針で入れ墨をする。
- [初出の実例]「風俗は婦人生涯眉を刺す」(出典:俳諧・風俗文選犬註解(1848)二)
- ⑧ 心や鼻、舌などを強く刺激する。
- [初出の実例]「叔母さんが〈略〉云った言葉は、敬二の胸を刺(サ)した」(出典:黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉五)
- 「葉巻の匂ひと大蒜(にんにく)の匂ひとが、むっと鼻を刺すばかりに交ってゐた」(出典:蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉七)
- ⑨ 鋭い皮肉などを意地悪く言う。風刺する。
- [初出の実例]「筆、人を刺す。又人にささるるれども、相共に血を不見(みず)」(出典:読本・春雨物語(1808)海賊)
- ⑩ 野球で、塁に入ろうとする走者をアウトにする。
- [初出の実例]「遊撃手は常に二塁に入りて一塁よりの走者を、此所に刺さんとす」(出典:最近野球術(1905)〈橋戸信〉内野篇)
- [ 二 ] ( 挿 ) ある物を他の物の中にはさみ入れる。
- ① 刀剣などを帯の間に入れる。
- [初出の実例]「衣二ゆひとらせて、縁に投げいだしたるを〈略〉腰にさしてみなまかでぬ」(出典:枕草子(10C終)八七)
- 「白き水干に、鞘巻(さうまき)をささせ」(出典:徒然草(1331頃)二二五)
- ② 花や櫛などを頭髪の間に入れる。
- [初出の実例]「命の 全(また)けむ人は 畳薦(たたみこも) 平郡(へぐり)の山の 熊白檮(くまかし)が葉を 髻華(うず)に佐勢(サセ) その子」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- ③ 木や花を、土や器などに入れこむ。さし木、または、さし花をする。
- [初出の実例]「小山田の池の堤に左須(サス)楊(やなぎ)成りも成らずも汝(な)と二人はも」(出典:万葉集(8C後)一四・三四九二)
- 「おもしろくさきたる桜をながく折りて、おほきなる瓶にさしたるこそをかしけれ」(出典:枕草子(10C終)四)
- ④ 物の中にはめこむ。物の間に入れこむ。
- [初出の実例]「御草子に夾算(けふさん)さしておほとのごもりぬるも」(出典:枕草子(10C終)二三)
- [ 三 ] ( 注・点 ) ある物の中に他の物を加え入れる。
- ① ある物に他の物を入れ混ぜる。また、付け添える。
- [初出の実例]「紫は灰指(さす)ものそ海石榴市(つばきち)の八十のちまたに逢へる児や誰」(出典:万葉集(8C後)一二・三一〇一)
- 「浄衣をきて、手にて炭をさされければ」(出典:徒然草(1331頃)二一三)
- ② ある物に液体をそそぎ入れる。
- [初出の実例]「此貝は目の薬ぢゃと申が、目がしらにさし候か、目じりにさすか」(出典:咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上)
- 「今しがた鉄瓶に水を注(サ)して仕舞ったので」(出典:それから(1909)〈夏目漱石〉二)
- ③ さかずきなどに酒を入れて人に勧める。
- [初出の実例]「歌よみてさかづきはさせ」(出典:伊勢物語(10C前)八二)
- 「竹村は猪口を国野に献(サ)しながら」(出典:雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉下)
- ④ ある物に色を付け加える。いろどる。また、(顔に)赤みや熱を加える。
- [初出の実例]「面には朱を差たるが如く」(出典:太平記(14C後)三四)
- ⑤ しるし、朱点などをつけ加える。
- ⑥ 火をともす。また、火をつける。
- [初出の実例]「婦負川(めひがは)の早き瀬ごとに篝(かがり)佐之(サシ)八十伴の男は鵜川立ちけり」(出典:万葉集(8C後)一七・四〇二三)
- ⑦ 灸(きゅう)をすえる。
- [ 四 ] ( 鎖 ) ( [ 一 ]から ) 門、戸口、錠、栓などをしめる。また、店などを閉める。
- [初出の実例]「乃ち、天の石窟(いはや)に入りまして、磐戸を閉着(サシ)つ」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
- 「走る獣は檻にこめ、くさりをさされ」(出典:徒然草(1331頃)一二一)
- 「隣の見世(みせ)がさしてあるので」(出典:文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉二)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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