突く(読み)ツク

デジタル大辞泉 「突く」の意味・読み・例文・類語

つ・く【突く/衝く/×撞く】

[動カ五(四)]
とがった物で一つ所を勢いよく刺したり、強く当てたりする。「槍で―・く」
棒状のもので強く押す。「判を―・く」「ところてんを―・く」
棒などの先を打ち当てて鳴らす。「鐘を―・く」
細長い物の先を押し立てて、支えにする。また、つっかえ棒をする。地面や床などに強く当てる。「つえを―・く」「ひざを―・く」
打ち当ててはずませる。「まりを―・く」
弱い所、予想しない所、急所などを選んで鋭く指摘したり攻めたりする。「不意を―・く」「核心を―・く」
嗅覚などの感覚や心を強く刺激する。「鼻を―・く臭気」「胸を―・く哀話」
障害や悪条件を問題にしないで何かをする。「風雨を―・いて進む」
強い勢いで何かに当たる。また、限界に達する。「雲を―・くような大男」「食糧が底を―・く」
10 将棋で、盤上にあるを前に一つ進める。
用法
[可能]つける
[下接句]家につえつく意気天を痛い所を衝く意表をつくの毛で突いたほど木戸を突く虚を衝く雲を衝く言言肺腑はいふを衝くしのを突く角水すみずを突く底を突く盾を突くつえに突く手を突く天を衝く・時をく・怒髪天を衝くと胸を衝くぬかを突く鼻を突く胸を突く
[類語]刺すつつ突っつく小突く小突き回す突き倒す突っかかる突き飛ばす突き破る

つつ・く【突く】

[動カ五(四)]
何度も軽く突く。こつこつと小刻みに突く。また、そのようにして合図や注意をする。「棒で草むらを―・く」「アカゲラが幹を―・く」「ひじで―・いて注意する」

㋐なべ料理などを、繰り返しはしで挟んでは取って食べる。「寄せなべを―・く」
㋑鳥などが、くちばしで何度も突くようにして食べる。「モズがカキを―・く」
欠点などを、ことさら取り上げて問題にする。とがめる。ほじくる。「―・かれないように言葉に気をつける」
そそのかす。けしかける。「誰かが陰で―・いているにちがいない」
調べる。検討する。「いろいろの角度から問題を―・いてみる」
[可能]つつける
[類語](1刺す突く突っつく小突く小突き回す突き倒す突っかかる突き飛ばす突き破る/(2食べる食らう食う頂く召し上がる食する味わう啄む

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「突く」の意味・読み・例文・類語

つ・く【突・衝・撞・搗・舂・築・吐】

  1. 〘 他動詞 カ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] ( 突・衝・撞 )
    1. 先の鋭い物で、勢いよく刺し通す。
      1. [初出の実例]「大魚(おふを)よし(しび)都久(ツク)海人(あま)よ 其(し)が離(あ)れば うらこほしけむ 鮪都久(ツク)志毘(しび)」(出典古事記(712)下・歌謡)
      2. 「人つく牛をば角を切り、人くふ馬をば耳を切りて、そのしるしとす」(出典:徒然草(1331頃)一八三)
    2. 腕や棒状の物などで強く押す。
      1. [初出の実例]「吾が行く道の おきそ山 美濃の山 靡けと 人は踏めども かく寄れと 人は衝(つけ)ども」(出典:万葉集(8C後)一三・三二四二)
      2. 「叔父の三吉にも身元保証の判を捺(ツ)かせ」(出典:家(1910‐11)〈島崎藤村〉下)
    3. ( 撞 ) 棒などの先端をうち当てて鳴らす。
      1. [初出の実例]「かねつきてとぢめむことはさすがにてこたへま憂きぞかつはあやなき」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
      2. 「鐘を搥(ツイ)て四方に告ぐらく」(出典:龍光院本妙法蓮華経平安後期点(1050頃))
    4. 細長い物を押し立ててささえとする。
      1. [初出の実例]「杖つきも 衝(つか)ずも行きて 夕占(ゆふけ)問ひ」(出典:万葉集(8C後)三・四二〇)
      2. 「ちはやぶる神やきりけんつくからに千年の坂も越えぬべら也〈遍昭〉」(出典:古今和歌集(905‐914)賀・三四八)
    5. 頭、額、膝、手などを、地面や床に着ける。特に、ぬかずく。うやうやしく拝む。
      1. [初出の実例]「かしらついて『これくはぬ人は、思ことならざるか』といふ」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
      2. 「手をついて哥申あぐる蛙かな〈宗鑑〉」(出典:俳諧・曠野(1689)二)
    6. 羽子板羽根やまりをつよく打つ。
      1. [初出の実例]「しな玉をとり、手鞠をつく、みなこれ煉なり」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)二)
    7. ( などの比喩的用法 )
      1. (イ) 障害や悪条件を物ともせず進む。また、ものごとの本質などに達する。
        1. [初出の実例]「朝倉より雨を衝(ツ)いての迎に、お客はと尋ぬれば」(出典:そめちがへ(1897)〈森鴎外〉)
        2. 「もし、これらの解釈のいずれかが真実を衝いているとしたら」(出典:朝の悲しみ(1969)〈清岡卓行〉一)
      2. (ロ) 心や感覚を強く刺激する。
        1. [初出の実例]「怒とも悲とも恥とも将(は)た喜ともいひわけ難き情(こころ)胸を衝(ツ)きつ」(出典:源おぢ(1897)〈国木田独歩〉下)
        2. 「一種厭ふべき空気の匂ひも容赦なく自分の鼻を衝(ツ)いた」(出典:行人(1912‐13)〈夏目漱石〉帰ってから)
    8. 将棋で、盤上にある歩を前に一つ進める。
      1. [初出の実例]「先飛車先の歩をつきませう」(出典:浄瑠璃・山崎与次兵衛寿の門松(1718)中)
    9. 突銭(つきぜに)をする。
      1. [初出の実例]「餠くふた盆に則ち銭をつく」(出典:雑俳・寄太鼓(1701))
    10. ( 男子の性器を槍にたとえていう ) 交接する。
      1. [初出の実例]「それ、いわん事かの。つねに若(わかい)しうにつかしゃんなとゆうに、つかしてとまった」(出典:咄本・軽口あられ酒(1705)三)
    11. 富突(とみつき)で当たりくじの番号を決める。
      1. [初出の実例]「コリャ座摩の宮の札じゃ。しかもけふつく日じゃわいな」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)八)
  3. [ 二 ] ( 搗・舂 ) きねなどの先で強く打っておしつぶしたり、穀物のからなどを除いたり、精白したりする。
    1. [初出の実例]「山県に 蒔きし 藍蓼(あたて)都岐(ツキ) 染木が 汁に 染衣を」(出典:古事記(712)上・歌謡)
    2. 「稲都気(ツケ)ばかかる我が手を今夜(こよひ)もか殿の若子(わくこ)が取りて歎かむ」(出典:万葉集(8C後)一四・三四五九)
  4. [ 三 ] ( 築 ) 土や石を積み重ね、固めてつくる。きずく。
    1. [初出の実例]「御諸に 都久(ツク)玉垣(つ)き余し 誰にかも寄らむ 神の宮人」(出典:古事記(712)下・歌謡)
    2. 「やまをつき、いけをほりて」(出典:古本説話集(1130頃か)六〇)
  5. [ 四 ] ( 吐 )
    1. 細い所から急に強く出す。息をはく。嘔吐する。また、排泄する。
      1. [初出の実例]「かくたのもしげなく申ぞとあをへどをつきての給ふ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「大息をつきて歎息す」(出典:古活字本荘子抄(1620頃)六)
    2. 好ましくないことを口にする。言う。
      1. [初出の実例]「ウソヲ tçuqu(ツク)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. 「『ばか』顔に似合はぬ悪体を吐(ツ)きながら」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)

つつ・く【突】

  1. 〘 他動詞 カ行五(四) 〙
  2. 何回もつく。何度もこきざみにつく。つっつく。
    1. [初出の実例]「小螺(しただみ)を い拾(ひり)ひ持ち来て 石もち 都追伎(ツツキ)破り」(出典:万葉集(8C後)一六・三八八〇)
    2. 「しばしばかりありて猿の足をつつきけり」(出典:古今著聞集(1254)二〇)
  3. 肘でついたりして注意する。軽くつく。つっつく。
    1. [初出の実例]「清水は側よりソット背をツツキ、岡部何を云ふのだ。と気を付くれば」(出典:花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉中)
  4. 箸で食べ物などをとって食べる。つっつく。
    1. [初出の実例]「所が毎日毎晩一つ鍋のものを突(ツ)ついて進行してゐるうちに」(出典:満韓ところどころ(1909)〈夏目漱石〉四一)
  5. 欠点をことさらに取りあげたりしてとがめる。あらだてる。ほじくり出す。つっつく。
  6. あれこれ言ってある行動をとるようにしむける。けしかける。そそのかす。つっつく。
    1. [初出の実例]「めん鳥につつかれて時をうたふ」(出典:俳諧・毛吹草(1638)二)
  7. 検討する。調べる。
    1. [初出の実例]「唯空で考へるだけでは題目(テーマ)は中々出て来ないが、何か一つつつき始めると其の途中に無数の目当てが出来過ぎて」(出典:写生紀行(1922)〈寺田寅彦〉)
  8. 歯などが痛む。〔日葡辞書(1603‐04)〕

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