四字熟語を知る辞典「危機一髪」の解説
危機一髪
[使用例] ちょっと寒月君のご高話を拝聴つかまつろうじゃないか。今大変なところだよ。いよいよ露見するか、しないか危機一髪という安宅の関へかかってるんだ[夏目漱石*吾輩は猫である|1905~06]
[使用例] もう何と言われても、自分の信念は揺るぎはしない。自分は危機一髪の際に喰い止めたのだ。もう大丈夫、もうたしかだ[谷崎潤一郎*二人の稚児|1918]
[使用例] 地獄の女「その、溝に落ちていたんじゃないの?」フーテン女「屋上からおっこちて来たのよ。危機一髪だったわ」[安部公房*棒になった男|1969]
[解説] 書き間違えないようにと、よく注意される四字熟語の代表です。そう、「危機一発」と書かれやすいのです。
危機が髪の毛一本の幅ほどの近さに来る、と覚えておけば、迷うことはありません。もっとも、「銃弾が一発通過するように危機が通り過ぎた」と考えれば、「危機一発」と書きたくもなります。
一九六〇年代に公開された映画「007危機一発」は、この表記を広めるのに大きな役割を果たしました。その後、映画「ドラゴン危機一発」や、おもちゃの「黒ひげ危機一発」などが続きました。
現在ならば、慣用と異なる表記はすぐに問題視されたでしょう。でも、昔はそのあたりはおおらかでした。
そもそも、「危機一髪」の例は二〇世紀以降にしかなく、このことば自体、さほど伝統的なものではありません。中国語の簡体字では「髪」も「発」も「发」と書き、問題は発生しません。
「一髪」は「間一髪」「機一髪」の形でも使われます。これらも同じ意味です。
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