品川宿(読み)しながわしゆく

日本歴史地名大系 「品川宿」の解説

品川宿
しながわしゆく

江戸時代の東海道の第一宿。次宿は川崎宿(元和九年以前は神奈川宿)。品川宿は当初、北品川宿南品川宿の二宿で機能を分担していたが、享保七年(一七二二)歩行かち新宿が宿場として認められ、以後三宿で構成された。

現品川区域には古代の官道の駅、大井おおい駅が置かれていたと推定され、中世にも鎌倉街道の品川宿があった(→品川。天正一四年(一五八六)と推定される一二月一八日の品川百姓中宛北条氏照朱印状写(武州文書)は、品川百姓らの訴えに対する裁許として、「改而百姓ニ御用捨之条々」七ヵ条をあげているが、第一条では印判なしでの「伝馬立」を拒否し、申懸ける者があれば直ちに目安をもって報告するよう求めている。北条氏時代の伝馬制下でも品川は宿の機能を担っていた。同一八年八月関東へ入部した徳川家康は、領国経営のために江戸を基点に据えた街道と伝馬制度の整備に着手し、慶長元年(一五九六)一〇月江戸―小田原間の石切伝馬手形(駅逓志料)を下した。その宛先は「ゑと 品川 かの川 ほとかや 藤沢 平塚 大磯 小田原まて 右之宿中」となっており、のちの東海道の宿駅の原形をみることができる。関ヶ原の戦に勝利した徳川家康は、その翌年の慶長六年全国的な交通施設整備に着手し、東海道の各宿に家康の伝馬朱印状を与え、奉行の伊奈備前守忠次・彦坂小刑部元成・大久保十兵衛長安の伝馬定書を下付した。「風土記稿」によるとこのとき前記の奉行らが巡見し、品川郷を宿駅に指定し、駅馬一日三六疋を置かせ、代償として五千坪の地子(年貢)を免除したという。同一六年七月の定(諸法度)によると、江戸―品川間の駄賃は荷物一駄四〇貫目につき鐚銭二六文、人足賃は一人につき馬の半分と決められた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

百科事典マイペディア 「品川宿」の意味・わかりやすい解説

品川宿【しながわしゅく】

近世東海道の第1宿で,江戸四宿の一つ。現在の東京都品川区北東部,目黒川の河口付近に発達。同地は中世すでに品川湊として発展していたが,徳川家康による伝馬・宿駅制度の整備に伴い,1601年頃に正式に東海道の第1宿となる。江戸日本橋からは2里,次宿の川崎宿まで2里半。宿建人馬は100人・100匹。当初は目黒川北岸の北品川宿と南岸の南品川宿の2宿で伝馬役を勤めていた。その後北品川宿の北に続く一帯にも水茶屋などが立ち並ぶようになり,品川新町とよばれて遊里化。宿役負担と引換えに食売(めしうり)女(飯盛女)を置くことを許されていた南北両宿はこれを非法と訴える。1722年毎年歩行(かち)人足1万2000人を負担することで品川新町が品川宿に加えられ,歩行新宿(かちしんじゅく)とよばれるようになった。その後はこの3宿で宿役を負担。江戸の庶民が宿近辺の牛頭(ごず)天王社・東海寺・品川寺・海晏寺や少し離れた川崎大師目黒不動などへの参詣の折に立ち寄る行楽地,また準公認の遊所としても賑わい,北の吉原,南の品川と称された。明和年間(1764年−1772年)以降食売女は公許500人,旅籠屋は最盛期180軒を数えた。1843年には旅籠屋93軒・家数1561・人数6890。本陣は北品川宿にあり,南品川宿と歩行新宿に脇本陣があった(《宿村大概帳》)。→千住宿板橋宿内藤新宿

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「品川宿」の解説

品川宿
しながわしゅく

東海道の宿駅(現,東京都品川区)。中世以来品川湊を中心に繁栄。1601年(慶長6)東海道初宿に指定。そのため諸大名をはじめとする公用通行も多く,負担も多大であった。宿場は北品川宿・北品川歩行(かち)新宿,南品川宿・南品川猟師町に分かれる。1843年(天保14)の町並19町40間余,人口6890人,家数1561軒,うち本陣1・脇本陣2・旅籠屋93,定人馬100人100疋,うち定囲5人5疋・臨時御用囲25人15疋。遊所としても有名で,1764年(明和元)飯盛女(めしもりおんな)が500人まで認められたが,規定は守られなかったようで,旅籠屋の主人らが検挙されたこともある。

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世界大百科事典(旧版)内の品川宿の言及

【品川】より

…沢庵の開いた東海寺,海晏(かいあん)寺,品川神社など寺社も多い。【正井 泰夫】
[品川宿]
 武蔵国荏原郡の東海道の宿駅。古くは品川郷,品川町,品川浦などとも呼ばれた。…

※「品川宿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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