日本大百科全書(ニッポニカ) 「土佐山田」の意味・わかりやすい解説
土佐山田
とさやまだ
高知県中部、香美郡(かみぐん)にあった旧町名(土佐山田町(ちょう))。現在は香美市(かみし)の西部を占める地域。旧土佐山田町は、1954年(昭和29)香美郡山田町と大楠植(おおくすうえ)、明治、片地、佐岡(さおか)の4村と長岡郡新改(しんがい)村が合併して成立。2006年(平成18)香北(かほく)町、物部(ものべ)村と合併して市制施行、香美市となった。JR土讃(どさん)線、国道32号、195号が通じる。南には物部(ものべ)川、国分(こくぶ)川が形成する香長(かちょう)平野が開け、北部は吉野川の支流穴内(あなない)川流域に属する。香長平野は、1639年(寛永16)土佐藩執政野中兼山(けんざん)が物部川左岸の神母ノ木(いげのき)に山田堰(せき)(県の史跡)を設け、上井(うわい)、中井、舟入(ふないれ)の灌漑(かんがい)水路を整備してから開発が進んだ。かつては米の二期作が盛んであったが、現在は米のほか野菜、苗木の栽培が多い。中心地区の山田も山田堰と同時期に開発された谷口集落で、当時の深井戸を残す。特産品として打刃物(うちはもの)、竹細工、瓦(かわら)があったが、瓦は衰退。打刃物は土佐打刃物として国の伝統的工芸品に指定されている。鉈(なた)、包丁、鎌(かま)などを産し、主として阪神方面へ出荷する。1997年には高知工科大学が開学した。隣接して工業団地「高知テクノパーク」がつくられている。南東部の三宝山にある石灰洞窟(せっかいどうくつ)龍河洞(りゅうがどう)は国指定天然記念物・史跡で高知平野の観光中心地の一つ。ほかに、小鍾乳洞(しょうにゅうどう)もある若宮温泉、甫喜ヶ峰(ほきがみね)森林公園、土佐南学を再興した谷重遠(しげとお)(秦山(しんざん))墓(国史跡)などがある。
[正木久仁]
『『土佐山田町史』(1979・土佐山田町)』