大蔵虎明(読み)おおくら・とらあきら

朝日日本歴史人物事典「大蔵虎明」の解説

大蔵虎明

年:寛文2.1.13(1662.3.3)
生年:慶長2(1597)
江戸初期の狂言師大蔵流宗家13代目。父は弥右衛門虎清。母は小方幸正能(月軒)の娘。山城国(京都府)平尾に生まれ,奈良に住む。前名は弥太郎。6歳のとき南都春日若宮御祭の後日能で,狂言大夫号を授けられたという。慶長18(1613)年ごろ,徳川家康の命で駿府滞在中の父のもとに下り,初めて御能御役を仰せつけられる。以後は父の教えを受ける一方で,シテ方の金春大夫安照(禅曲)に私淑するとともに新興の北(喜多)流の名人北七大夫とも親交を結び,彼らの影響をも受けながら稽古に励む。寛永5(1628)年,32歳にして父に代わって金春座の頭取となり,同11年には家督相続。将軍家光の上意により東叡山に3年間起居して天海僧正から翁,三番叟,狂言の大事についての相伝を受け,それ以外にも生涯を通じて19種の印可を得るなど,狂言のみならず文武諸般に精通しており,これらはその著作活動に反映されている。寛永12年から数年を費やして間狂言,本狂言,風流の詞章を執筆,同流最初の台本大蔵虎明本』がここに完成した。さらに慶安4(1651)年には当時一世を風靡した鷺流に対抗し,伝統保持を主張した『昔語』全1巻を執筆(1658年に補訂)。万治3(1660)年にその注釈書『わらんべ草』全5巻を完成させた。鷺流の台頭,弟八右衛門家の分家樹立という厳しい状況下,大蔵流宗家の位を確立し,芸統の保持に努めた意義は大きい。<参考文献>米倉利昭『わらんべ(狂言昔語抄)研究』

(石井倫子)

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日本大百科全書(ニッポニカ)「大蔵虎明」の解説

大蔵虎明
おおくらとらあきら
(1597―1662)

狂言師。大蔵流宗家13世。12世大蔵弥右衛門虎清(やえもんとらきよ)の長男。前名弥太郎、虎時。通称弥右衛門。金春(こんぱる)座付き狂言方として江戸幕府に召し抱えられ、徳川封建体制の整備期に家系と芸統を確立した。1642年(寛永19)大蔵流最初の台本『大蔵虎明本』を書写。また当時、観世座付き狂言方として台頭してきた鷺(さぎ)流の近世的芸風に対抗して伝統保持を主張し、60年(万治3)伝書『わらんべ草(ぐさ)』を執筆した。なお、その著作は大蔵弥太郎編『古本能狂言』6冊(1976・臨川書店)に収められている。

[小林 責]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus「大蔵虎明」の解説

大蔵虎明 おおくら-とらあきら

1597-1662 江戸時代前期の能役者狂言方。
慶長2年生まれ。大蔵虎清の長男。大蔵流宗家13代。6歳で狂言大夫の号をうける。金春座付きとして,江戸で活躍。万治(まんじ)3年狂言論「わらんへ草」をあらわした。寛文2年1月13日死去。66歳。山城(京都府)出身。初名は虎時。通称は弥太郎,弥右衛門。著作はほかに「狂言昔語鈔(むかしがたりしょう)」など。
格言など】万人に褒められんより,道知れる者一人に褒められん事思うべし(「わらんへ草」)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「大蔵虎明」の解説

大蔵虎明
おおくらとらあきら

[生]慶長2(1597).山城
[没]寛文2(1662).1.13. 奈良
江戸時代前期の狂言師。大蔵流。 12世宗家虎清の長男として生れ,5歳で初舞台,6歳で狂言太夫の号を受ける。のち 13世宗家弥右衛門虎明となる。大蔵流中興のといわれ,寛永 12 (1635) 年に大蔵流の最初の台本である『虎明本』の書留を完成,当時新興の鷺流に対して『昔語』 (51) ,『わらんべ草』 (60) の伝書を著わし,大蔵流の古格を主張した。

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精選版 日本国語大辞典「大蔵虎明」の解説

おおくら‐とらあきら【大蔵虎明】

能狂言師。大蔵流大蔵家第一三世。一二世虎清の子。山城の人。大蔵流最初の台本「大蔵虎明本」を書写。近世的芸風に対抗して伝統保持を主張、「わらんべ草」を執筆した。慶長二~寛文二年(一五九七‐一六六二

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デジタル大辞泉「大蔵虎明」の解説

おおくら‐とらあきら〔おほくら‐〕【大蔵虎明】

[1597~1662]江戸初期の狂言師。山城の人。大蔵流宗家13世。大蔵流最古の台本「狂言之本」(通称「虎明本」)を書き留め、狂言論「わらんべ草」を著した。

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世界大百科事典 第2版「大蔵虎明」の解説

おおくらとらあきら【大蔵虎明】

1597‐1662(慶長2‐寛文2)
江戸初期の大蔵流の狂言役者。事実上の大蔵流流祖大蔵虎政の後嗣虎清と,鼓の名人幸正能の女との間に嫡男として生まれた。幼名蔵(熊)。通名弥太郎,後に弥右衛門。諱(いみな)は初め虎時。法名心叟道徹居士。5歳のころより父に師事。6歳で奈良の春日若宮御祭(おんまつり)の後日能で初舞台を踏み,興福寺衆徒中より,名人や幼少の役者に与えられる名誉号である大夫号を贈られたという。以後の幼年期の活動記録は少なく,1605年(慶長10)高台院(豊臣秀吉正室ねね)大坂御成り能での父との共演が知られる程度である。

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世界大百科事典内の大蔵虎明の言及

【わらんべ草】より

…全5巻。江戸時代初期の狂言師大蔵虎明(おおくらとらあきら)(1597‐1662)の著。初め父虎清(とらきよ)の教訓を主に89段から成る《昔語(むかしがたり)》を1651年(慶安4)に著したが,次いで,それに抄,すなわち注釈を加えた《狂言昔語抄(きようげんむかしがたりしよう)》を編集し,さらに,これを改稿して60年(万治3)に完成したのが《わらんべ草》である。…

※「大蔵虎明」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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