宗論(狂言)(読み)しゅうろん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「宗論(狂言)」の意味・わかりやすい解説

宗論(狂言)
しゅうろん

狂言曲名出家狂言法華(ほっけ)僧と浄土僧(シテ)が出会い、出家どうし話を交わすうち、犬猿宗派とわかり、宗論を展開。宿での徹夜覚悟の宗論は、法華僧の説く「五十展転随喜(ずいき)の功徳(くどく)」がずいき芋汁の話になり、浄土僧の「一念弥陀(みだ)仏即滅無量罪(ざい)」が献立の菜(さい)の話に変貌(へんぼう)する。互いの法話のあまりのあほらしさに、2人は寝入ってしまう。夜が明けると朝の勤めを始め、大声で向きになって経を読むうちに興にのり、浄土僧は踊り念仏、法華僧は踊り題目で浮きに浮く。そのうち2人は忘我境地に至り、浄土僧が「蓮華経(れんげきょう)」、法華僧が「南無阿弥陀(なむあみだ)」と互いの宗派を取り違えてしまう。結局、仏の前では宗派争いなどはささいな問題と悟り、めでたく舞い納める。当時の新興宗教どうしが争う時代に、経文の解釈といってもしょせんは食べ物論議程度のことであり、法悦の境地に違いはないという、作者の醒(さ)めた眼(め)が光る。

[油谷光雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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