巻く(読み)マク

デジタル大辞泉 「巻く」の意味・読み・例文・類語

ま・く【巻く/×捲く】

[動カ五(四)]
物のまわりに、ゆるみのないようにからみつける。「包帯を―・く」「グリップにテープを―・く」
長い物・平らな物を、その一端を軸にするように丸める。「反物を―・く」「紙を筒状に―・く」
渦巻き状にする。また、渦巻き状になる。「蛇がとぐろを―・く」「朝顔のつるが―・く」
ねじ・ぜんまいなどをねじり回して締める。「ぜんまいを―・く」「竜頭を―・く」
物を、それについている綱や鎖を軸にからませて、持ち上げる。「いかりを―・く」
まわりを取り囲む。包み込む。「煙に―・かれる」
連歌俳諧付合つけあいをする。「歌仙を―・く」
登山で、ルートの途中にある難所を避け、迂回して登る。また、そのように道がついている。「大滝を―・いて沢筋をつめる」「頂上を―・く道」
テレビ演劇などで、予定した時間よりも早まる。「撮影が1時間―・いて終わる」⇔押す
10 (「舌をまく」の形で)言葉も出ないほど驚いたり、感心したりする。「子供ながらも巧みな演奏に舌を―・く」
11 (「くだをまく」の形で)酒に酔って、とりとめのないこと、不平などを繰り返し言う。「飲んではくだを―・いてばかりいる」
12 (「証文をまく」の形で)借りをなしにする。
「丁度いいから証文位はきれいに―・いてやろうかと思っているんだ」〈荷風腕くらべ
13 呼吸が荒くなる。
「息ガ―・ク」〈日葡
[可能]まける
[下接句]くだを巻くけむに巻く舌を巻く尻尾しっぽを巻くつらに似せてへそを巻く蜷局とぐろを巻く長い物には巻かれよ螺子ねじを巻く旗を巻く
[類語]絡める巻き付ける

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「巻く」の意味・読み・例文・類語

ま・く【巻・捲】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 カ行五(四) 〙
    1. 物のまわりにぐるぐるとからませる。まといつかせる。巻きつける。
      1. [初出の実例]「やつめさす 出雲建(いづもたける)が 佩ける太刀 黒葛(つづら)(さは)麻岐(マキ) さ身なしにあはれ」(出典古事記(712)中・歌謡)
    2. 布、また紙などを、一端を軸として、くるくると丸くする。また、丸くたたみこむようにする。
      1. [初出の実例]「旌(はた)を巻(まき)(ほこ)を戢めで、儛ひ詠ひて都邑(みやこ)に停りき」(出典:古事記(712)序)
    3. 物や場所のまわりをぐるりと取り囲む。
      1. [初出の実例]「縁を巻(マイ)たる沙糖の」(出典:大日経義釈延久承保点(1074)五)
    4. しまう。収納する。納めておく。
      1. [初出の実例]「あまたの人の中をひ出て能道を示すといへ共、用いずはまひて懐にす」(出典:仮名草子・伊曾保物語(1639頃)中)
    5. 連歌・俳諧で、連歌や連句を行なうのをいう。
      1. [初出の実例]「『夏の月』の歌仙が巻かれたのは元祿三年の夏」(出典:芭蕉の一句(1963)〈唐木順三〉)
    6. 物を、それにつけた綱などを軸にまといつかせて、上に上げる。巻き上げる。
      1. [初出の実例]「此寺の方丈に座して簾を捲ば」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)象潟)
    7. (うず)状を示す。巻いた結果渦状になる。「渦を巻く」「とぐろを巻く」など。
    8. ねじやぜんまいなどを、ねじり回してしめる。
      1. [初出の実例]「けふは色々と事にまぎれて、ツイ巻(マキ)忘れて」(出典:内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉九)
    9. ( 「舌を巻く」の形で用いて ) 驚き、恐れ、あるいは感嘆などでことばも出ないさまをいう。
    10. ( 「くだを巻く」の形で用いて ) 酒に酔って、とりとめのないこと、不平などをくどくどと言う。
    11. ( 「証文を巻く」の形で用いて ) 書かれた事柄、権利などを無にする。放棄する。
      1. [初出の実例]「証文位はきれいに巻いてやらうかと思ってゐるんだ」(出典:腕くらべ(1916‐17)〈永井荷風〉二二)
    12. 登山で、急な登りや難所を避けて山腹を迂回する。
      1. [初出の実例]「どうしても登れない場合は、藪くぐりを覚悟で高く捲かなければならない」(出典:登山技術(1939)〈高須茂〉山稜と渓谷)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
    1. 渦巻状になる。うずまく。
      1. [初出の実例]「眉間の毫相は常に右に旋(マケ)り」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇)
    2. たちこめた霧などがおさまる。
      1. [初出の実例]「潮生孤嶼没。霧巻巨帆懸」(出典:文華秀麗集(818)上・奉和春日江亭閑望〈巨勢識人〉)
    3. ( 「息がまく」の形で用いる。「息がはげしくて渦巻状になる」意から ) 息がはずむ。はげしい呼吸をする。〔日葡辞書(1603‐04)〕

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とっさの日本語便利帳 「巻く」の解説

巻く

時間をオーバーしないよう、早く進行すること。声で指示できないテレビの収録現場などでは、フロアディレクターが手で“巻く”合図をする。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

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