押す(読み)オス

デジタル大辞泉 「押す」の意味・読み・例文・類語

お・す【押す】

[動サ五(四)]
動かそうとして上や横から力を加える。
向こうへ動かそうとして力を加える。「荷車を―・す」「―・しても引いても動かない」
を使って舟を進める。「櫓を―・す」
圧力を加える。
㋐(「圧す」とも書く)上から重みを加える。「重石おもしで―・す」
㋑(「捺す」とも書く)印判などを押しつけて形を写す。「判を―・す」
㋒はりつける。「はくを―・す」
状態・事柄をある基点から先へ進めようとする。
㋐強力に迫る。「いま一押し―・せば要求を通せる」
威力で押さえつける。優勢になる。圧倒する。「大資本に―・される」
㋒そのままで物事を進める。「この方針で―・していく」
無理にする。強行する。「病を―・して出席する」
確かめる。「念を―・す」「駄目を―・す」
テレビ・演劇などで、予定した時間よりも遅れる。「開始時間が10分―・す」⇔巻く
一面に行き渡らせる。
「春日山―・して照らせるこの月はいもが庭にもさやけかりけり」〈・一〇七四〉
軍勢を進める。攻める。
そば伝ひに―・す」〈甲陽軍鑑三五
[可能]おせる
[下接句]しりを押す太鼓のような判をす・太鼓判を捺す駄目だめを押す念を押す判で押したよう横に車を押す横車を押す烙印らくいんを押される
[類語]押しのける押しやる押しまくる突きのける押し付ける押っつける押し倒す押し破る

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精選版 日本国語大辞典 「押す」の意味・読み・例文・類語

お・す【押・圧・推】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] 向こうにむけて力を加える。
    1. 物に力を加えて向こう側へ動かす。
      1. (イ) 力を加えて物を前へ進ませる。
        1. [初出の実例]「味酒三輪の殿の 朝門(あさと)にも 於辞(オシ)開かね 三輪殿門(とのと)を」(出典:日本書紀(720)崇神八年一二月・歌謡)
      2. (ロ) ( 櫓は押して使うところから ) 櫓を使って舟を進ませる。
        1. [初出の実例]「例の舟子ども『唐泊(からとまり)より川尻をすほどは』と謡ふ声の」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
    2. 行動や意志のさまたげとなるものを排除する。
      1. (イ) 相手の勢いを圧倒する。打ち負かす。
        1. [初出の実例]「右の大臣(おとど)の御勢(いきほひ)は、物にもあらずをされ給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
      2. (ロ) 誘惑や困難に打ち勝つ。がまんする。
        1. [初出の実例]「千の誉を抑(オシ)て他に譲り」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))
        2. 「私も病気を推して罷出ませふ」(出典:隣語大方(18C後)一)
      3. (ハ) 道理に従って行動し、推測する。また、道理が通用する。
        1. [初出の実例]「リノ vosu(ヲス) トコロ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      4. (ニ) やり方などを変えず、そのまま物事を進める。
        1. [初出の実例]「住さんの性根で押(オシ)て行なされ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
      5. (ホ) 軍勢を進めて攻撃する。
        1. [初出の実例]「名越(なごや)式部大輔を大将として、東海・東山両道を押(ヲシ)て責め上る」(出典:太平記(14C後)一三)
      6. (ヘ) ( (ホ)から転じて ) 大勢で遊里へ繰り込む。
        1. [初出の実例]「すこしもはやくと駕籠をいそがせ、三枚肩にておさせける」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)鄙)
    3. 安定したものに向けて力を加える。
      1. (イ) 体重をあずけてもたれかかる。
        1. [初出の実例]「勾欄に背中をしつつ、〈略〉遊び給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)花宴)
      2. (ロ) 物にはりつける。
        1. [初出の実例]「きじの皮をはぎて〈略〉松の作り枝につけて、はしにかくつけてをしたり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
      3. (ハ) 確かかどうか確認する。
        1. [初出の実例]「客のくるかこねへかを茶屋に念をおすことまでしょうちしちゃア」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初)
    4. 他に抜き出た位置につくようにする。
      1. (イ) 指導者として仰ぐ。
        1. [初出の実例]「咸(ことごと)くに神武を懼れ大位(みかど)に推(オシ)尊ぶ」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)三)
      2. (ロ) すぐれたものとして推薦する。
        1. [初出の実例]「史遷を高く推さふとてぞ」(出典:史記抄(1477)一八)
    5. 放送や仕事などが立て込み時間的にさしせまっている。遅れぎみである。
      1. [初出の実例]「二分余るはずなのだが、ドンドン押して、余るどころかハミ出しそうである」(出典:マイクとともに(1952)〈藤倉修一〉修業はつらい)
  3. [ 二 ] 上から下へ向けて力を加える。
    1. 上から重みを加えて動かぬようにする。
      1. [初出の実例]「圧、此をば飫蒭(オス)と云ふ」(出典:日本書紀(720)神武即位前)
    2. 色や模様を他の物に移す。
      1. (イ) 模様を写しとるため、布などを載せて摺りつける。
        1. [初出の実例]「高麗(こま)の上れる表疏(ふみ)、烏(からす)の羽(は)に書(か)けり。〈略〉帛(ねりきぬ)を以て羽に印(オシ)て悉くにその字を写す」(出典:日本書紀(720)敏達元年五月(前田本訓))
      2. (ロ) 印に朱や墨などをつけて、その形を紙などに写す。
        1. [初出の実例]「観は印を印(オス)が如し」(出典:聖語蔵本成実論天長五年点(828)二二)
        2. 「身どもに証文(せうもん)書かせおぬしがをした判(はん)が有」(出典:浄瑠璃・曾根崎心中(1703))
      3. (ハ) 印刷する。
        1. [初出の実例]「コノ イチクヮンニワ ニッポンノ ヘイケトユウ Historia ト、〈略〉 Europa ノ Esopo ノ Fabulas ヲ vosu(ヲス) モノ ナリ」(出典:天草本平家(1592))
      4. (ニ) ( 「押韻」を訓読して ) 漢詩の毎句または隔句の末尾に同じ韻の字を使う。韻を踏む。
        1. [初出の実例]「飾が韻ぞ。又服と三句めにふんだぞ。極と押したぞ」(出典:史記抄(1477)五)
    3. 物の活動を制御する。
      1. (イ) 謡や語り物の発声で、低音に下げる。
        1. [初出の実例]「竪(じゅ)の声をばおしてつかふべし」(出典:音曲声出口伝(1419))
      2. (ロ) 相手をしいたげる。
        1. [初出の実例]「此道斗(ばかり)はけん付に、おせどおされぬ茨(いばら)の枝」(出典:浄瑠璃・栬狩剣本地(1714)二)
      3. (ハ) 相場の値が一時下落気味となる。

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とっさの日本語便利帳 「押す」の解説

押す

時間が予定をオーバーすること。「押している」「押し気味」などと使う。

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