後塵を拝する(読み)コウジンヲハイスル

デジタル大辞泉 「後塵を拝する」の意味・読み・例文・類語

後塵こうじんはい・する

地位権勢のある人をうらやましく思う。
すぐれた人物につき従う。
他人に先んじられる。人の下風に立つ。
「小生必ずしも…大人の―・するとは限らず」〈百閒百鬼園随筆
[類語]付和雷同矮人わいじん観場かんじょう同意賛同支持賛成雷同便乗聴従適従追随追従驥尾きびに付す下手に出る人のふんどしで相撲を取る尻馬に乗る

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精選版 日本国語大辞典 「後塵を拝する」の意味・読み・例文・類語

こうじん【後塵】 を 拝(はい)する

① 地位や権力のある人を仰ぎ見て、うらやましく思う。
② 他人に先んじられる。人の下風に立つ。
真理の春(1930)〈細田民樹〉森井コンツェルン「森光や大浦後塵(コウジン)を拝(ハイ)するわけにはゆかなかった」
③ 権力のある人に追従(ついしょう)する。人にこびへつらう。
大菩薩峠(1913‐41)〈中里介山駒井能登守の巻「駒井を頭にいただいて唯々諾々と其の後塵(コウヂン)を拝(ハイ)して納まってゐるか知らん」

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故事成語を知る辞典 「後塵を拝する」の解説

後塵を拝する

他人に先んじられることのたとえ。もともとは、権力のある人にこびへつらうことのたとえ。

[使用例] 高位高官のものほどあとに下るんだから、君はとうてい藤田さんの後塵などは拝せないですよ[芥川龍之介*文章|1924]

[使用例] 今からやると、まるで人の後塵を拝するような具合になる。基一郎先生のやり方は、それとは逆で、万事、人の先へ先へと目をつけられたものだ[北杜夫*楡家の人びと|1962~64]

[由来] 「晋書せきすう伝、はんがく伝」に載っている話から。三世紀の終わり、西晋王朝で、皇后の甥のひつが皇后の権威を笠に着て、権力を握っていたときのこと。大金持ちの石崇と、名文家として知られた潘岳の二人は、賈謐にこびへつらい、彼が外出するたびに、「塵を望みて拝し(その馬車が立てる土ぼこりに向かって、おじぎをし)」ていました。そのあからさまなへつらいようを批判されていた二人は、しばらくしてクーデターによって賈謐が失脚すると、一緒に処刑されることとなりました。

[解説] ❶権力者の乗っている馬車におじぎをするのはよくあることでしょうが、それが通過したあと、土ぼこりに向かってまでおじぎをしているとは! 石崇は大金持ちで潘岳は名文家という名声のある二人だけに、その卑屈さはいっそう強烈です。❷漢文では「塵を望みて拝す」の形が一般的で、意味も「こびへつらう」ことを表します。しかし、現在の日本語では「後塵を拝する」の形で使われ、意味も、「後ろから付いていく」というイメージから「先んじられる」ことを指すのが一般的。先を越されてみじめな立場に置かれる、というニュアンスで、よく用いられます。

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