精選版 日本国語大辞典「徒人」の解説
いたずら‐びと いたづら‥【徒人】
〘名〙
① 元の職務、地位などを離れた人。用のなくなった人。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「いたづらびとにて侍れば、官(つかさ)、位のようも侍らねど」
② おちぶれた人。見るかげもなくなってしまった人。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「親の人なみなみにていたはるにこそ、女は人とも見ゆめれ。かかるいたづら人の子をば何にせん」
③ 身体的・精神的に問題があって、世の中の役に立たない人。
※源氏(1001‐14頃)真木柱「かのさうじみは、とてもかくてもいたづら人と見え給へば」
④ 死んだ人。死人。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「影のごとなり給はむ人は、まいてかけても聞き給なば、いたづら人になり給なんものを」
⑤ 無法な行い、わるさをする人。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)六「うでこぎだてをめさるる人でいたづら人であったぞ」
あだ‐びと【徒人】
〘名〙
① 心に実のない、移り気な人。浮気者。
※古今(905‐914)恋五・八二四「秋といへばよそにぞ聞きしあだ人の我をふるせる名にこそありけれ〈よみ人しらず〉」
② 風流を解する、粋な人。また、恋人。
※俳諧・冬の日(1685)「襟(えり)に高尾が片袖(そで)をとく〈芭蕉〉 あだ人と樽(たる)を棺(ひつぎ)に呑(のみ)ほさん〈重五〉」
ず‐にん ヅ‥【徒人】
〘名〙 徒罪(ずざい)に処せられた人。令制で、有期の使役刑に処せられ苦役に服している人。
※延喜式(927)二九「凡徒人年限者、従二入レ役日一始計」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報