慈恩寺(山形県)(読み)じおんじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「慈恩寺(山形県)」の意味・わかりやすい解説

慈恩寺(山形県)
じおんじ

山形県寒河江(さがえ)市慈恩寺にある慈恩宗本山。山号は瑞宝山(ずいほうざん)。宗派は、法相(ほっそう)宗より真言(しんごん)、天台両宗を経て第二次世界大戦後より慈恩宗となる。本尊弥勒菩薩(みろくぼさつ)。寺伝によれば、724年(神亀1)に行基(ぎょうき)が開山、746年(天平18)聖武(しょうむ)天皇勅願によって婆羅門僧正(ばらもんそうじょう)(菩提僊那(ぼだいせんな))が開基したという。鎌倉時代に入って当寺のある寒河江荘(しょう)は大江広元(ひろもと)の荘園(しょうえん)となり、以後長く大江氏の庇護(ひご)を受けた。戦国時代ころには一山50坊を超える支坊があり、繁栄した。室町末期に最上義光(もがみよしあき)がこれにかわり、1622年(元和8)最上氏改易後は、江戸幕府より2812石の御朱印地を給され、東北第一流の巨刹(きょさつ)を誇った。1618年最上義俊(よしとし)再建の本堂(弥勒堂)は国の重要文化財に指定されている。同じく国の重要文化財の阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)は恵心(えしん)僧都(源信)の作と伝えられ、もと釈迦(しゃか)如来であったが、修理の際に間違えて阿弥陀如来の印相になったといい、以来「とり違えの阿弥陀」としても知られている。本尊の弥勒菩薩像は永仁(えいにん)6年(1298)造の銘のある秘仏である。1980年(昭和55)に平安後期制作の仏像群が多数発見された。慈恩寺の後ろの葉山(はやま)は上代からの山岳宗教の山であり、歴史的にも修験(しゅげん)とのかかわりは深い。当寺の祭礼に奉奏する林家舞楽(谷地(やち)舞楽)は国指定重要無形民俗文化財である。

[中山清田]


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